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試合レポート

ものに出来ず、粘りきれず、それでも執念のドロー。可能性はまだ残されている

 

数多く迎えた決定機をものに出来ず、粘っていた守備が一瞬の綻びを見せた。88分に失点し、90分に追いつく劇的展開で勝ち点1を手にしたが、勝つべきだった試合を引き分けたことで、プレーオフ進出への道は険しくなった。

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悔やまれる、逃し続けたビッグチャンス

 
試合後、攻撃陣は「守備陣が粘ってくれていた中で失点した。決定機を逃したのがもったいなかった」と悔やみ、守備陣は「最後の最後に得点できたことを思えば無失点のまましのぎたかった」と肩を落とした。戦術は遂行し、対山形の狙いも練習どおり出せた中で、両ゴール前のいくつかの、そのひとつひとつのプレー精度が足りず、勝ち点3に届かなかった。
 
大分も山形も、メンバーとフォーメーションは前節と同じ。ただ、大分は左右WBをいつもとは入れ替え、松本怜が右に、岸田翔平が左に陣取った。山形の右SHの瀬沼優司が逆サイドからのクロスに飛び込み、左SHの汰木康也がカットインすることを考慮しての配置だった。
 
立ち上がりから激しくハイプレスをかけてくる山形に対し、最初はやや硬さも見えたが、15分過ぎる頃からはその勢いをいなしながらボールを動かせるようになった。アンカーシステムの相手への守備も徐々にハマるようになり、主導権を握って立て続けに得点機を迎える。
 
18分、伊佐耕平の落としを拾った川西翔太が自ら持ち込んで放ったシュートは松岡亮輔にクリアされるが、そのこぼれ球を左足で拾った後藤がすかさず右に持ち替えてシュート。だがこれはGK富居大樹に防がれた。25分、福森直也のアーリー気味のクロスに合わせた伊佐のヘディングシュートはわずかに枠の右。40分、伊佐のポストプレーからの後藤のシュートは惜しくもクロスバー。度重なるビッグチャンスをものに出来ず、試合はスコアレスで折り返した。
 

一瞬のほころびが汰木と阪野に仕事を許す

 
大分が山形のアンカーシステムに対応してきたことで、山形は前半の終わりから中盤の立ち位置を変え、松岡を一列下げて茂木力也とのダブルボランチにし、佐藤優平がトップ下を動き回る4-2-3-1の形を取った。
 
試合後の木山隆之監督によると、ハーフタイムにさらにそれを修正する指示を出したという。スライドを徹底して、特に松本とのマッチアップで押し下げられていた汰木を前へと押し出すとともに、大分のプレスに対しポジション取りを早くして縦にボールをつけることで、サイド攻撃を活性化させる、というのがその内容だった。
 
その修正が成功し、後半は山形の時間帯が増える。大分の守備陣も集中して体を張り、シュートにまでは至らせなかったが、そのぶん大分の攻撃機会は少なくなった。それでもチャンスはあったのだが、52分には鈴木惇の直接FKがわずかに枠を外れ、66分には伊佐が富居の足元を狙ったがこれも枠外に転がった。
 
73分、山形が佐藤を下げてトップ下に永藤歩を入れると、大分は81分、岸田をシキーニョへ、松本を岩田智輝へとスイッチして、互いに要所をリフレッシュ。岩田と後藤とで右サイドが活性化したが、ネットを揺らしたのは山形のほうだった。
 
警戒していた汰木のカットインからのクロスをエリア内で阪野豊史に収められ、反転シュートを打たれる。88分の失点。指揮官はすぐに動いた。
 

またも劇的な、終了間際の大津のゴール

 
90分に片野坂知宏監督がピッチに送り込んだのは、直前までスタンバイさせていた吉平翼ではなく、大津耀誠だった。竹内彬を下げてシステムを4-4-2へと変更。伊佐と大津の2トップにカウンター攻撃を託し、相手の背後へとボールを送った。
 
それが早速、同点弾を呼び込む。最後尾から送られたシキーニョのフィードをセンターサークル付近で大津が胸トラップ。誰よりも早くセカンドボールを拾った伊佐がすかさず右から駆け上がる後藤に展開。ゴール前に走り込む相手4人が完全に後藤を見ているのを見て、大津はファーへと呼び込んだ。後藤のクロスはニアで茂木のスライディングにカットされたが、これがこぼれる。富居もキャッチしようと飛び出していたゴールへと、ぎりぎりで大津が押し込んだ。
 
すぐにセンターサークルへとボールを持ち戻り、またも伊佐と大津のカウンター。大津の反転シュートは富居にキャッチされた。シキーニョが左サイド深くで相手をぶち抜いて送ったクロスは相手にクリアされ、こぼれ球に詰めた川西のシュートもブロックされたところで長いホイッスル。
 

激しいタックルにも自分たちを見失わず

 
前節に続き、両ゴール前の精度のわずかな不足で、勝てる可能性の高かった試合を落とした。指揮官は試合後にこう悔やんだ。
 
「何もかかっていないゲームであれば、今日のような展開でよく追いついたとなっていたのかもしれないが、われわれが目標としているJ1昇格プレーオフ圏内を狙うのであれば、今日の勝ち点1は負けに等しい」
 
大津の渾身の同点弾は見事だったが、素早く戻ってゴール前を固める山形の守備陣を前に、一瞬の判断が遅れ、絶好のシュートチャンスを逃した場面も何度かあった。ボールを動かして相手を崩すチームが陥りがちな罠でもあるが、片野坂監督は「そういうところも選手の判断を尊重してはいるのだが、やりきるように言っていきたい」と、判断とクオリティーの向上を誓う。
 
1試合平均22.2本とタックル数リーグ1位の山形が激しく寄せたり潰したりしてくるのに対し、その勢いにみすみす付き合わされることなく、落ち着いて徐々にペースをつかみながら、相手の動きにより生まれたスペースを使ってボールを運びチャンスを作った様子からは、地力の養成が見て取れた。
 
敵味方ともに足を取られる場面が散見され、ピッチコンディションもあまり良くなかったことがうかがえるが、次節はアウェイ戦。勝ち点3差で6位の徳島との直接対決が待っている。10位へと転落して道は険しくなったが、プレーオフへの可能性はわずかに残されている。残り2試合を連勝すれば、何かが起きないともかぎらない。