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試合レポート

明暗を分けたのは攻守ひとつひとつのプレー精度。残り3戦、戦いはまだ続く

 

序盤の決定機を逃し、ミスから先制点を献上。さらに追加点を奪われ、2点のビハインドを取り返そうと追撃して1点は返したが、届かず。明治安田J2第39節H千葉戦は、大分が昨季送り出した生え抜きの活躍に沈められる結果となった。

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前半、2度のビッグチャンスを逃す

 
コンディション不良の戦力が数名出たことで、今節のベンチメンバーからは、ややプランを限定されている印象を受けた。なんとしても先制したかったのだが、残念ながら先にネットを揺らしたのは相手だった。
 
千葉は直近の3試合で結果の出ている4-2-3-1システムでスタート。インサイドでプレーするイメージの強い町田也真人が右SHに配置されたのは、船山貴之がトップ下でハマっているのを優先したということらしい。左SHには清武功暉が、大分アカデミーOB同期の岸田翔平とマッチアップする形で陣取った。
 
1トップのラリベイとその近くにいる船山を軸に、千葉は立ち上がりから力強いサイド攻撃を仕掛けてきた。だが、大分も負けてはいない。球際で激しく戦い、奪ったボールを動かしながら相手の背後を狙った。
 
最初のビッグチャンスは6分。近藤直也と溝渕雄志の連係ミスからこぼれたボールを拾って、後藤優介が抜け出した。飛び出していたGK佐藤優也の頭上を越えて狙ったループシュートは、無念にもクロスバーに弾かれる。わずかな精度不足だった。
 
10分には千葉に攻め込まれ、守備が後手に回ったところでラリベイに打たれるが、枠を外れて命拾い。16分のカウンターからの清武のシュートも枠上に逸れた。
 
18分にはやはり球際で抜群の上手さを見せた後藤が右サイド深くに抜け出しマイナスのクロス。小手川宏基がこれに詰めたが、シュートは至近距離で佐藤優に阻まれた。
 
6分か18分、どちらかのビッグチャンスが決まっていれば、展開は違ったものになっていたかもしれなかった。
 

生え抜きの“恩返し”に2失点を喫す

 
千葉は後半頭から、清武に代えて為田大貴を投入。大分アカデミーOBの先輩からバトンタッチされた後輩は、自身の最も得意とする左SHでいきなり躍動した。前節・福岡戦はレンタル移籍元との契約の都合で出場できなかったのだが、実はコンディションも良くなく、別メニューで調整していた。大分戦に照準を合わせてきたという。
 
53分、為田の送ったクロスは上福元直人が正面でがっちりとキャッチしたかに思われた。だが、この朝、ドームの屋根が閉められる前にたっぷり雨を含んでいたスリッピーな芝は、事故を呼び込む。上福元の手をこぼれたボールをラリベイに蹴り込まれ、与えたくなかった先制点を与えた。
 
68分に奪われた追加点の起点も為田だった。左からのクロスをゴール前で船山に合わされ、あえなく2点目を献上する。
 
片野坂知宏監督はすぐに手を打ち、73分に2枚替えを敢行。ラリベイとの競り合いで疲労した竹内彬を下げ、鈴木義宜を中央にスライドさせて、最終ライン右には岩田智輝を配置した。さらに岸田を下げて松本怜を右WBに回し、岩田とともに為田のケアに当たらせると、左WBにはシキーニョを入れてサイド攻撃の活性化を図る。
 
大分に勢いを取り戻させまいと、エスナイデル監督も81分、足をつらせた船山に代えて熊谷アンドリューを入れ、矢田旭を一列上げて対応するが、85分、セカンドボールを拾った岩田からパスを受けた後藤が、自ら仕掛けて角度のない位置から右足一閃。ゴール天井に突き刺さる、目の覚めるような一撃で1点を返した。
 
追う勢いを増す大分から逃げ切りたい千葉は、90分、町田に代えて大久保裕樹を入れ守備を固める。同時に大分は疲労した小手川をフレッシュな吉平翼にスイッチして勢いを保った。
 

手応えも得たが終盤の猛攻は実らず

 
アディショナルタイムは5分。相手が時間を使おうとする中、あきらめずに猛攻は続いた。ほぼ一方的に攻めたが、わずかな精度を欠いて、ついにゴールは割れなかった。
 
61分、相手の間から放った伊佐の鋭い反転シュート。72分、オフサイド判定となった川西翔太のシュート。アディショナルタイム、こぼれ球に反応した吉平のシュート。川西の豪快なミドル。後半も何度も迎えたチャンスを、大分はものにすることが出来なかった。
 
内容的に歯が立たなかったわけではない。むしろ勝てたかもしれない試合だった。相手のハイプレスに何もさせてもらえず、修正のためのオプションも上手く使いこなせずに4失点して敗れた第21節の前回対戦とはまったく違う。チームは、積み上げてきたものを糧に、最後まで落ち着きを失うことなく、バランスを崩さずに自分たちの戦い方を貫いた。
 
その中で、「本当に少しの差がこういう結果につながった」と片野坂監督は悔しがり、「決めるべきところで決めきれず、守るべきところで守れなかったのがすべて」と、鈴木義も肩を落とす。順位は8位のままだが、J1昇格プレーオフ進出の道は険しくなった。
 
残り3試合、この手応えと課題を、チームがどのように成長へとつなげていくか。伊佐は言う。「下を見る必要はない。次の試合に向けて勝ちに行く」。「昇格圏内に値するチームになれるように」と、指揮官も前を向いた。今季の戦いは、まだ終わっていない。