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試合レポート

鈴木惇の技ありFKの1点を守り切りホームで2ヶ月半ぶりの勝利。J2ホーム通算100勝達成

 

相手の意表を突くFKから、鈴木惇が先制点。後半は修正した相手に主導権を明け渡しながら、粘り強く逃げ切った。内容には物足りなさを隠しきれなかった指揮官だが、ホームで2ヶ月ぶりの勝利にほっとした表情も。最下位で足掻く群馬をホームに迎えた明治安田J2第31節は、とにもかくにも勝利という結果がすべてだった。

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立ち上がりはサイドを起点に好機を築く

 
「前半は立ち位置で惑わしてくる大分に対して守備に少し迷いがあり、ブロックが低くなった。後半はその守備を修正できたことが良い攻撃につながった」と、群馬の森下仁志監督。「前からプレスをかけたいのだが、相手がそれを欲しがっているのかなという感じもあったので、わざと相手を来させてからコンパクトに守れればと考えていた。後半は落ち着いてそれが出来た」と振り返ったのが、中盤の底で戦いの舵を取っていた松下裕樹。
 
前回対戦で闇雲にプレスをかけて背後を使われた経験を踏まえ、今節の群馬は大分に対して慎重に試合に入ったようだ。そんな相手の入り方もあり、立ち上がりは大分がボールを握った。
 
3-4-2-1の大分と4-4-2の群馬。スペースを使ってボールを運ぶ大分は、両サイドを起点に狙いどおりの攻撃を繰り出す。5分には三平和司のクロスに後藤優介が頭で合わせたが、GK清水慶記の好セーブに遭いクロスバーに弾かれた。
 
一方の群馬は、良い連係を見せるカン・スイルと山岸祐也の2トップにボールを集め、セットプレーでチャンスを作るものの、得点には至らず。先制したい思いの強さゆえか、やや大味な攻撃が目立った。
 

鈴木惇の作戦勝ちFKで奪った先制点

 
スコアが動いたのは28分だった。後藤のパスを受けた伊佐耕平がペナルティーアークの位置で倒され、FKを獲得。直接狙うにはゴールに近すぎる位置だが、この好機はものにしたい。後藤と小手川宏基もキッカーに名乗りを挙げそうな雰囲気だったが、蹴ったのは鈴木惇だった。
 
「大きい選手が壁に入っている位置を見ると、左足で壁の上を越す軌道を警戒している感じだったし、あの距離だと壁を越えて落とすのはすごく難しそうだったので」
 
そうして自慢の左足から放たれたのは、意表を突くグラウンダーだった。助走や顔の向きにもこだわって相手を欺いたキッカーは、地を這う速い弾道でジャンプした壁の下を通し、頭脳勝負で先制点を挙げた。これまでにも左足から何度も良いFKでゴールを脅かしてきた過去があってこその作戦勝ち。3戦連続弾と好調な男の、してやったりのゴールだった。
 

後半は“つなぐ群馬”に主導権を明け渡す

 
1点リードして折り返すと、後半は守備を修正し距離感を保って連動しはじめた群馬が主導権を握った。大分と同様に今季スタートから積み上げてきた、後方から丁寧にボールをつなぐ戦術が表現されはじめ、流れは群馬へと傾く。
 
大分の鈴木惇と群馬の松下、それぞれのゲームメーカーが振り返るとおり、その攻防の機微はプレスのかかり具合にあったようだ。大分は1点のみのリードでリスクを負うことを恐れたか、ブロックの位置が下がり、相手のボールの出どころに圧がかけられなくなる。カン・スイルと縦関係になって自由に動く山岸祐也に対応するため、後藤を1列下げて5-3-2にしたことで、中は閉めることが出来たが、サイドの主導権を群馬に譲ることになる。
 
それを利用するように群馬はサイドから崩しにかかったが、クロスの精度を欠いてシュートにまで至らない。間もなく大分も、システムを元の3-4-2-1に戻した。
 

決定機をものに出来ず守り切っての勝利

 
流れが群馬へと傾いていた72分、大分の右CKのチャンスに、エリア内で竹内彬がパク・ゴンに倒されてPKを獲得。試合開始当初からセットプレー時には激しく競り合っていた両軍だったが、体を張ってチャンスを演出した経験豊富なCBは思わずガッツポーズを見せた。
 
だが、後藤のPKはGK清水に弾かれた。大きく跳ね返ったボールを拾って仕掛けられた群馬のカウンターをなんとかしのいで事なきを得るが、このPKを含め、後半にもいくつか迎えた決定機をことごとくものに出来なかったことは、終了までの試合展開を困難にした。
 
「なかなか決定機を作れず、4-4-2の相手に対してわれわれが上回れる攻撃の形がいまいち出せなかった。判断と質、シュート数のところでももう少しやりたかった」と、片野坂知宏監督は試合後に悔しがった。守備に関しても、「クリーンシートでは終えたが、まだまだ課題がある」と渋い表情。
 
だが、戦術に磨きをかけようと試行錯誤している最中のチームにとって、ホームでの2ヶ月ぶりの勝利も、クリーンシートも連勝も、この混戦を戦っていく中では大事な収穫だ。そして、2ヶ月の負傷離脱から復帰した林容平が78分からピッチに立ったことも、チームにとって大きな好材料だった。
 
大きな流れの中では、明治安田J2ホーム通算100勝というクラブの節目も迎えた。ここで上位グループに離されることなく、少しでも上の順位を目指しながら、チームの完成度を高めていきたい。
 

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