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試合レポート

スタイル浸透の手応えは感じられるも、力量差は越えられず

 

12日に行われた天皇杯3回戦・柏戦。直前まで起用メンバーについて逡巡していた指揮官は、「2回戦を勝ち上がって自らこのチャンスを作った」戦力を多く起用する布陣でJ1チームに挑んだ。

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メンバーは主力だが4-3-3でスタートした柏

 
これから明治安田J1昇格を目指すために、また、昇格後にしっかり戦うために、いま自分たちのサッカーがどれくらい通用し、何が必要なのかを見極めたい、と片野坂知宏監督は、リーグ戦に近いメンバーで戦いたい気持ちものぞかせていた。
 
だが、消耗戦となった明治安田J2第22節H湘南戦と、次の第23節A愛媛戦とは中3日。コンディション面を考慮したことと、2回戦・町田戦で好ゲームを展開して勝ち上がり、J1チームとの対戦機会を作った面々の経験値を高めたい意図もあっての、この試合へのメンバー選考となった。
 
対する柏は8日にキンチョウスタジアムで行われた明治安田J1第18節C大阪戦から直接、大分入り。この試合後に中断期間に入ることもあり、大分市営陸上競技場などでトレーニングしながら、リーグ戦の主力メンバーで乗り込んできた。
 
ただ、システムはリーグ戦とは異なり、細貝萌をアンカーに置いた4-3-3でスタート。大分の3-4-2-1に枚数を合わせ、ハイプレスの勢いを吸収する意図だったと見られる。
 

コレクティブな守備から前半は大分ペース

 
経験値や力量の差は歴然としているかに思われたが、立ち上がりはコレクティブな守備から攻撃へとつなげる大分がペースを握る。前線の選手たちの激しいアプローチが柏のビルドアップを阻み、それならと柏が大分の最終ライン脇スペースに待つディエゴ・オリヴェイラらにボールを集めようとすると、山口貴弘を軸に統制の取れたスライドで細やかに対応した。
 
大谷秀和は「大分は丁寧に組織的で一所懸命に守備をしていた」と振り返る。3対3でのビルドアップがプランどおりに行かなかった下平隆宏監督は、まもなく中川寛斗をトップ下に配置しクリスティアーノを右に出して、システムを4-2-3-1へと変更した。
 
それでも前半は大分が良い形を作る。インターセプトからのショートコーナー、中央からサイドへ展開してのクロス、スルーパスからの反転シュート。ただ、スペースを使ってボールを動かしながら攻めはするのだが、プレー精度や判断ミスで結実させることが出来ない。
 
33分には左CKからの姫野宥弥のミドルシュートが、41分には姫野からのクサビを受けた坂井大将の反転シュートが鋭く枠をとらえたが、いずれも日本代表GK中村航輔に掻き出された。
 

後半は柏に貫禄を見せつけられる展開に

 
後半に入ると柏はアグレッシブさを増し、立ち上がりから立て続けにシュートやクロス、CKと大分に襲いかかる。56分、大谷のウラへのフィードに反応したクリスティアーノが修行智仁をかわして先制点を奪った。
 
大分もミスマッチを突いて攻め返すが、前がかりになって攻める場面でフィニッシュまで行きそこなったところを奪われ、ディエゴ・オリヴェイラがカウンターで独走。追いすがった山口も振り切られ、難なく追加点を挙げられた。
 
61分に柏がディエゴ・オリヴェイラに代えて伊東純也を入れると、大分も同時に2枚替え。坂井大を後藤優介に、坂井達弥を福森直也に代えて、攻撃の色合いを強めようと試みた。
 
だが、2点ビハインドの難しさか、チーム全体に焦りや疲労が生じたのか。途中投入された2人は周囲との呼吸がなかなか合わず、前半に見せたコレクティブさは影を潜め、攻撃も雑な印象に。
 
70分には疲労した山岸智を下げて國分を右WBに回し、シャドーに吉平翼を送り込む。吉平は攻守に期待されての起用を受け、持ち前のハードワークを炸裂させたが、72分に中山雄太に代えて鎌田次郎を投入した柏は、悠然と大分の攻撃を潰し続けた。
 

敗退はしたが、この経験を収穫へと昇華させたい

 
終盤は体力を温存するかのように大分の勢いを受けながらロングフィードでチャンスを作る柏。単調ながら個を生かした試合運びはさすがの貫禄としか言いようがなかった。90分には中川を大津祐樹に代えて時間を使う。
 
大分はそれでもあきらめずに攻め続けたが、アディショナルタイム3分が表示された直後、アクシデントが発生。ボールを浮かせる個人技で相手を抜こうとした後藤が小池龍太と接触したのを危険なプレーと判定され、一発退場に。納得行かないジャッジにスタジアムは騒然となったが、判定は覆らず。
 
10人になってからも3-4-2の布陣で最後まで戦ったが、ついに“格上”の柏に一矢報いることは出来なかった。柏にとってはアウェイ大分戦初勝利。リーグ戦2連敗の流れを断ち切って中断期間に入ることが出来た。
 
だが、敗退した大分も、収穫は得たはずだ。これまで公式戦出場機会の少なかったメンバーにも戦術が浸透していることが感じられたし、自身の長所をアピールできた戦力もいた。上手く行かなかったことも今後に生かす経験として財産に変えていきたい。
 
61分にベンチに下がった坂井達は「クリスティアーノが僕と(黒木)恭平くんの間の嫌な位置に立っていて厄介だった。やはりああいうところに力の差を感じる」と話したが、「でも、この試合で吹っ切れた」とすっきりした表情も見せた。「いままで出しても可能性が薄いと感じて縦に入れなかったことが多かったけど、もっとどんどん入れてもいいのかなと思った」と言う。
 
ここまで出場する顔ぶれが固定されがちだったが、それ以外のメンバーがリーグ後半戦にどれだけポジション争いに絡んでくるかでチームの成長が左右される。中断期間のないシーズン、個々の調子の上げ方が問われそうだ。J2第23節A愛媛戦で後藤が出場停止となったのは大きな痛手だが、代わりに出る選手が躍動することにも期待したい。