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試合レポート

厳しい蒸し暑さの中、互いのスタイルを出しあって痛み分け。でも収穫は大きい

 

福岡・大分県内各地が豪雨災害に見舞われた中、8日に開催された明治安田J2第22節。被災者の方々に少しでも良いニュースを届けたいと試合に臨んだチームは、厳しい蒸し暑さとも戦いながら強豪・湘南との対峙でスタイルを貫き、価値ある勝ち点1を手にした。

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前半はミラーゲームで押し込まれる

 
キックオフ前には、豪雨災害による犠牲者に向けて黙祷が捧げられた。湘南サポーターも横断幕を掲げ「1日も早く九州に平穏な毎日と最高の週末が戻りますように」とエールを送ってくれた。
 
ドームの屋根は試合開始前に開かれたが、ピッチレベルは息苦しいまでの蒸し暑さ。湘南も3-4-2-1システムでスタートしたミラーゲームは、目の前の相手にだけでなく、気候とも戦わなくてはならない消耗戦となった。
 
立ち上がりは持ち前のハイプレスで勢いを見せた湘南も、その暑さを考慮して間もなく矛を収めた。高い位置でブロックを敷きながら、攻撃のスイッチが入った瞬間に、怒涛のように縦への勢いを増す。秋野央樹が攻守のメリハリを統率する中で、出場停止のジネイに代わり1トップを務めた野田隆之介が起点となり、両WBや最終ライン両サイドも絡んでくる“湘南スタイル”を、効率的に繰り出した。
 
最初はハイプレスに押し込まれた大分も、相手が引いたのにともなって徐々にボールを動かせるようになり、回数こそ湘南には及ばないが、相手3バックのサイドが上がったスペースを突いて好機を築く。
 
湘南はCKのトリックプレーや野田の反転ボレー、山根のクロスに合わせた野田のヘディングシュート、山田直輝のFKからアンドレ・バイアと迫力ある攻撃で圧倒するが、フィニッシュではなかなか枠を捉えきれない。
 
大分も立ち上がりの相手のミスを突いた三平和司のファーストシュートにはじまり、福森直也のアーリークロスに後藤優介が飛び込んだり、松本怜、三平とつないだボールを後藤がバイシクルで折り返して岸田翔平がシュートを放つなどチャンスを作ったが、こちらも最後の精度を欠いた。
 

後半はオープンに攻め合う展開に

 
シュート数やCK数では水をあけられたものの、支配率やパス成功率では互角に渡りあいながらスコアレスで折り返した後半。ここから本当の勝負を懸けるように、湘南は奈良輪雄太に代えて齊藤未月を投入し、システムを4-3-3へと変更した。岡本がSBに下がり、秋野を中盤の底にその前に石川俊輝と齊藤が並ぶ形だ。
 
ミラーゲームの枷が外れたことで互いにミスマッチを突く場面が増え、決定機の色も濃くなっていく。70分には端戸仁のグラウンダークロスに野田が飛び込み、さわればゴールという最大の決定機もわずかに合わず。
 
73分、湘南は足がつった野田に代えて藤田祥史を投入し、前線の強度を維持。大分は77分に2枚替え。三平を伊佐耕平にスイッチすると同時に、小手川宏基を下げて前田凌佑をボランチに入れ、川西翔太をシャドーに上げることで、ゴールに向かう勢いとカウンターの鋭さを増した。
 
汗の噴き出る蒸し暑さの中、両軍ともかなりの体力的ダメージを負い、足が止まる場面や寄せ遅れる場面も見えはじめたが、どちらも勝利をあきらめる様子はない。
 
80分、相手を振り切って右サイドを駆け上がった岸田のクロスに川西が飛び込み秋元陽太に抑えられると、83分にはボールをつなぎながらボックス内に侵入した藤田祥史がシュートを放とうとして鈴木義宜にブロックされる。
 
オープンな展開を受けて84分、伊佐をターゲットに攻める大分の攻撃に蓋をしようと、湘南は後半から出場した齊藤を下げて島村毅を左SBに投入して杉岡を一列上げた。
 
87分に川西に代わって坂井大将がシャドーに入ると、こちらも決定機に絡む。前田がテクニックを生かして狭い局面で相手を引き付けながらパスを出すと、それを受けた伊佐は潰されたが、こぼれ球を拾った岸田がクロス。ファーに坂井が飛び込むが、わずかに届かなかった。
 
アディショナルタイム4分も互いに攻め合ったが、互いの守備陣の粘りと紙一重の攻撃精度不足でついにネットは揺れず。勝ち点1を分け合う結果となった。
 

死闘を通じ、あらためて感じた使命と手応え

 
スコアこそ動かなかったものの、終始見せ場の多いゲームはスタジアムを白熱させた。勝利のニュースを届けることは出来なかったが、試合に臨むにあたり胸に刻んだ被災地の方々への思いは、最後まであきらめずに戦った姿勢からも、伝えることが出来たのではないかと思う。
 
それぞれの持ち味を存分に出した両軍の指揮官も、戦い終えてほっとしたような表情を見せるとともに、ともに手応えを口にした。
 
前節・千葉戦での悔しい敗戦からチームを立て直した片野坂知宏監督は、ハードワークが信条の湘南に負けずに戦い、最後まで走り続けて手にした勝ち点1の意味を「大きい」と語った。
 
昨季までとは違い、今季は異なるシステムを織り交ぜてニュアンスを変えた戦法も増やしている湘南のチョウ・キジェ監督は、この試合で選手たちが複数の戦い方をよく理解して仕掛けたと話し、チームの成長を見て取ったようだった。
 
豪雨災害に見舞われ、複雑な思いを抱きながら、プロとして、サッカーを通じて出来ることを考えながらの戦い。加えて湿度83%のピッチでの死闘は、心身両面で極限状態だったと言える。
 
勝ち点1を分け合って、湘南は首位に浮上し、大分は順位を落とした。1ポイントで順位がめまぐるしく変わる混戦は続く。シーズンはまだ折り返したばかりだ。
 

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