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試合レポート

百点満点とは言えないが、6試合ぶりの勝利。ここからさらなる細部の詰めへ

 

相手の猛追に遭い、最後はゴール前で弾き返すばかりになったが、ついに1点のリードを守り切った。明治安田J2第19節H讃岐戦。チームは苦しみながら長いトンネルを抜け、6試合ぶりの勝利をつかんだ。

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同じ苦しみを抱えた同士の対戦

 
アディショナルタイムが5分と告げられたとき、大銀ドームがどよめいた。1点のビハインドを追って、相手は攻勢を強めている。試合の大詰め、追いつきたい讃岐と逃げ切りたい大分の構図は明白だ。長崎戦、横浜FC戦と、アディショナルタイムにPKを与えて勝ち点を取りこぼした試合の記憶が蘇る。
 
高木和正のFKを上福元直人ががっちりキャッチし、大きくピッチに蹴り出して、長いホイッスルを聞いたとき、選手たちの表情に安堵の色が広がった。第13節H名古屋戦以来の白星。内容が悪くないだけに勝ちきれないもどかしさはひとしおだった。
 
「勝てていない状況の中で勝つというのはしんどいことだなと感じた」と、片野坂知宏監督は振り返った。一方で、敗れた讃岐の北野誠監督は「前節、そういう呪いは解けたと思ったのだが」と肩を落とした。讃岐も悪くない試合を重ねながらなかなか勝ち切れず、前節ようやく今季2勝目を挙げたところ。順位こそ違えど、同じ勝てない苦しみを抱えた同士の対戦は、明暗分かれる結果となった。
 
課題はまだあるが、まずは勝てない流れを断ち切れたことが収穫だ。「この試合をきっかけに、またどんどん上を目指せるようなチーム状態にしていきたい」と、キャプテン・山岸智は語った。
 

狙いどおりの形で挙げた先制点

 
立ち上がりから大分が主導権を握り、ボールを動かしてチャンスを構築する展開。讃岐はそのボールを奪っては鋭いカウンターで反撃を仕掛けた。
 
早くもスコアが動いたのは13分。川西翔太の大きな展開を受けて相手SBの背後を突いた岸田翔平が、マイナス方向へグラウンダーのクロスを送ると、まずニアで後藤優介が相手DFを遮るようにこれをスルー。三平和司は相手を引き連れてゴール前へとなだれ込んでいた。クロスの軌道のスペースに走りこんだのは小手川宏基。1トップ2シャドーの見事な連係で挙げた先制点だった。
 
ただ、チームはそこから少し受けに回ってしまう。追いつこうとギアを上げた讃岐がボールを握る時間が増え、ラインを押し下げられた。流動的な相手の攻撃に集中して対応しながら、水際で食い止め、1-0のまま折り返す。
 
後半の頭には讃岐がガッチリとブロックを敷いた。追加点を狙う大分の縦パスを網にかけ、一気にカウンターでゴールを目指す狙いだ。その空気を読むように、大分は竹内彬を軸に、ブロックの外で延々とボールを回す。焦れた相手が出てくるのを待ちながら、仕掛けるチャンスを狙った。
 

追いつかれた直後にふたたび突き放す

 
讃岐は56分、馬場賢治に代えて市村篤司を入れ、西弘則を一列前へ。さらに64分にはアンカーの山本翔平を下げて木島徹也を前線に入れ、4-3-3からダブルボランチに変更した。勢いを増す讃岐に対抗するように、大分も65分、三平に代えて伊佐耕平、山岸に代えて松本怜と2枚替え。
 
だが、その交代策が落ち着くより先に、69分、高木の左からのクロスをペナルティーアークで受けた木島が、体勢を立て直してシュート。ゴール左隅に決め、試合を振り出しに戻した。
 
その2分後、大分はふたたび讃岐を突き放す。小手川のスルーパスに抜け出した松本のクロスにピンで合わせた後藤のヘディングシュートは、瀬口拓弥に掻き出された。が、それが正面にいた中島大貴に当たってゴールマウスに吸い込まれてしまう。勝ちたい気持ちが呼び込んだオウンゴールだった。
 
讃岐は81分、渡邉大剛を岡村和哉に代えてさらなる追撃を図る。ここまでの讃岐の得点の7割を占めるセットプレーのチャンスも再三迎えるが、全員でゴール前を固める大分は割れない。小手川を下げ姫野宥弥を入れて5-3-2のブロックで1点のリードを守り抜き、飢えていた勝利に、ついにたどり着いた。
 

勝利への希求が闇を抜ける力となった

 
狙いどおりの形から挙げた先制点はともかく、その後の展開は、決してスマートではなかった。むしろ無様な勝ち方だったと言ってもいい。だが、長い闇を抜けるときには、えてしてこういうパワーが必要になる。
 
今週、チーム状況は決して良くはなかった。前節の試合中に福森直也が負傷したため、これまで控えやメンバー外に甘んじていた坂井達弥が初先発。その上、週の半ばでは竹内もコンディションを崩し、別メニューで調整を行った。幸い、竹内は事なきを得て出場できたが、一時は急造布陣で臨まなくてはならないのかと、周囲をやきもきさせた。
 
その竹内が、失点直後に仲間を鼓舞するように最終ラインから持ち上がった流れから、チームは追加点を奪う勢いを得ている。先制点の起点となったのは前節、不運なPK献上に泣いた岸田で、2点目につながるクロスを上げたのは負傷から復帰したばかりの松本だった。直接得点には絡まなかったが、三平は立ち上がりからエブソンをつり出すために献身的に走り続けた。
 
勝てていないという現実は、ともすればプレーの積極性を損なわせる。先制後、受けに回った時間帯は、大事に行きたい、失点したくないという気持ちから生まれたものだった。
 
だが、片野坂監督の目指す境地はもっと高みにあり、選手たちもそれを理解している。「1-0から2-0にして、そこからボールを回し、相手が来たところをひっくり返して3点目という横綱相撲と言える戦いが出来るようになれば」と竹内。その力を養うまでは、こういう泥臭い勝ち方で、勝ち点を積み重ねることになる。
 
試合の空気感を読みながら、打って出るところと引いて守るところのメリハリをつけていきたい。その呼吸を共有しながら、プレーの選択肢を増やし、チームはより細やかな試合運びをものにしていく。