ゴラッソ2発もPK2本献上で受け入れがたいドロー。一方で上昇の手応えも
相手を上回る試合内容と目の覚めるようなゴラッソ2発に沸いた大銀ドーム。だが、微妙な判定による受け入れがたい結末に、1万1千人超を集めたスタンドからは審判団への大ブーイングが浴びせられた。10日に行われた明治安田J2第18節H横浜FC戦は、なんとも後味の悪い試合となった。
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ツインタワーに対応しつつ主導権を握る
立ち上がりから細かくファウルを取る主審ではあった。イバと大久保哲哉をスタートから起用し、このツインタワーにボールを集める横浜FCは、高さと迫力で圧倒するとともに、球際の競り合いでも大分守備陣のファウルを誘い、多くチャンスを作ろうとした。
それに粘り強く対応しながら大分も、奪ったボールを早めに前線に送る。1トップに9試合ぶり先発の三平和司、シャドーには後藤優介と、こちらも怪我から5試合ぶりに復帰した小手川宏基の3枚を配置し、川西翔太や鈴木惇も絡む流動的な崩しでゴールを狙った。
相手があまり前からプレッシャーをかけてこなかったことや、相手の最終ラインが食いついてきやすいことを利用して、狙いどおりボールを動かしながら攻めることが出来ていた。前節の課題を踏まえトレーニングで修正したポジショニングなどが確認できる展開でもあった。
相手にもチャンスを作られながら、25分、良い形から先制点を奪った。右サイド高く攻め上がった岸田翔平からのパスを受けた小手川がクロスを送る。これを後藤が潰れながら落としたところへ走りこんだのが鈴木惇。胸でコントロールして左足を振り抜くと、美しい弾道はポスト内側を叩いてネットを揺らした。
機動力を増した相手に苦心も再びリード
追う立場になった横浜FCは、高さを抑えられた大久保と有機的に絡めない寺田紳一に代えて津田知宏と野村直輝を投入。好守に機動力を生かす戦法に切り替えた。
これにより前への勢いを増した横浜FCは、大分に激しくプレッシャーをかけはじめる。川西からのパスを受けた福森直也に圧力をかけた津田がボールを奪うと、取り返そうと追った福森のファウルを誘いPKを獲得。67分、イバのキックは上福元直人の手に触れられながら、それをものともしない勢いでネットに突き刺さった。
追いついたことで勢いを増した横浜FCは、大分を激しく攻め立てチャンスを作る。怪我明けの小手川を下げ、川西をシャドーに上げる代わりにボランチに入った前田凌佑もアグレッシブなプレーで流れを明け渡すまいとするが、攻防は激化の一途。
指揮官も75分、失点に絡み不安定になった福森に代えて、怪我から復帰した松本怜を投入。鈴木義宜を左に回して岸田を最終ライン右に下げると、右WBに松本を入れてピッチを後押しする。さらに三平に代えて伊佐耕平を送り込み勢いを回復しようとしていた矢先の79分に、三平のゴールが生まれた。
後藤から受けたパスを相手の背後に送ろうとした三平のボールが相手に引っかかる。三平はそれを再度、浮き球で相手の背後に送るが、これも相手にクリアされる。だが、三度そのこぼれ球に反応した三平は、体勢を崩しながらボレー。執着心をあらわにしたゴールで、再びリードを奪った。
アディショナルタイム、悪夢のPK判定に泣く
片野坂知宏監督は82分、足をつらせた山岸智に代えて坂井達弥を投入。レフティーの守備力とフィードでの攻撃参加に期待して最終ライン左に配置し、鈴木義を右に戻すと、岸田を右WB、松本を左WBに。これで残り約10分余り、1点のリードを守りきるのがチームの最後のミッションだった。
粘り強く相手の攻撃を跳ね返していたが、そこからカウンターで押し上げることが出来ない。それでもリードしたまま4分のアディショナルタイムを乗り切ろうとしていたときに、大分を悪夢が襲った。
相手左サイドで起点になろうとした田所諒に岸田が対応した際、田所の倒れたのがエリア内であったという判定を受ける。微妙なジャッジながら、この日2度目のPK献上。またもイバに決められ、目前まで迫っていた勝利を取り逃がした。
相手の間隙を突いて小気味よくボールをつなぐサッカーに、2本のゴラッソで盛り上がった1万人超えの観客は、納得の行かない判定に大ブーイング。だが、判定が覆るわけでもない。
怪我人の復帰と修正の奏功に手応えも
試合後には報道陣からもPKの判定に関する質問が多く寄せられたが、「PKでの2失点なので長崎戦と同じ感じに見られているかもしれないが、正直それ以上に、自分たちのサッカーが出来たことのほうが良かった」と三平。
鈴木惇も「あれがエリアの中か外かという議論をするよりも、ファウル判定を受けないよう改善するといったふうに自分たち次第で変えられると思うので、ひとつひとつみんなで改善していきたい」と前を向いた。
ツキがない感もあり5戦白星なしだが、連敗していないのも事実。小手川と松本の復帰もあり、トレーニングで修正したボールの動かし方にも手応えが感じられた。
ひとつの試合で我慢の時間帯を越えればまたチャンスがめぐってくるように、シーズンにも耐えなくてはならない時期がある。シーズン終了時に喜び合えることを目指し、いまはコツコツと積み上げるだけだ。