決定機逸で流れを引き寄せられず、ミスを突かれて敗戦。相手への警戒も裏目に
3日に行われた明治安田J2第17節。チームはアウェイで水戸と対戦し、相手に研究され狙われる中でも決定機を築いたが、それをことごとくものに出来ず。逆にこちらのミスを突かれて2失点を喫し、敗れた。
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大分を研究していた水戸と、警戒が裏目に出た大分
ケーズデンキスタジアムでの試合は毎回、ピッチコンディションに悩まされていたが、今回は美しい芝を見ることが出来た。改修して水はけシステムを装備することで、芝の生育状態が大幅に改善されたとのことだ。
水戸は、こちらのことを非常によく研究していた。ここまで苦手としてきた3バックシステムで来るのではないかと予想していたが、西ヶ谷隆之監督が選んだのは4-4-2。大分としては、これまでどちらかというと得意にしてきた、相性の良いフォーメーションだ。
ただ、それをさせないだけの準備も、水戸は施していた。プレスをかける場面とブロックを作る場面という守備のメリハリはよく統制されており、狙いどころと、そこへ襲いかかるタイミングも見事に徹底されていた。
大分のビルドアップ時に福森直也や鈴木義宜の足元に入った瞬間、2人がかりでパスコースを切りながらサイドへと追い詰めたり、ボールキープ力の高い川西翔太が出しどころを探してターンする瞬間に足元を狙ったりといったアグレッシブな守備は、大分のチーム戦術のみならず、個々の細かい特徴までスカウティングして選手たちが把握できているという印象だった。
対する大分も、スピードに長けた相手FW・前田大然への対策をして臨んだが、残念なことにこれはやや裏目に出た。背後に抜けるのが得意な前田を警戒してラインを低めに設定したが、それが守備の積極性を欠くことにつながり、ボールホルダーへと圧をかけないまま、パスの出し手である橋本晃司に自由を与えた。そこから岸田翔平が攻め上がった背後にパスを通され、攻撃の形を作られることになる。佐藤和宏と外山凌の両SHにも、前向きに仕掛けるスペースを許してしまった。
決定機を逃し、疲労してミスから2失点
ラインを低く設定した以上、ある程度はそれも想定内だったはずだが、警戒していた前田のスピードは想定以上だったかもしれない。データでは松本怜と並ぶ50m5.8秒で初速が速いのも同じだが、19歳がすごいスピードで勢いよく球際に突っ込んでくる守備は、時空の歪みを生じさせるほど感覚を狂わせる。死角からの飛び出し方やコースの切り方も上手かった。
それでも粘り強く守れていた時間帯に迎えたいくつかの決定機のうち、ひとつでも決めていれば、また違う展開になっていた可能性もある。いずれも吉平翼のキープを起点に、後藤優介と岸田が放ったシュート。途中出場の三平和司が相手トラップの隙を突いてボールを奪い、伊佐耕平に預けてその折り返しを自ら打ちポストに弾かれた76分。そのゴール正面へのこぼれ球に詰めていた後藤も、押し込めずに枠外。
失点は直後の80分だった。前田のプレスをかわして福森の前方へと出した上福元直人のパスは、佐藤和にカットされ前田に送られて押し込まれる。数々の得点機を大分に作られながらも先制点を奪って勢いづいた水戸は、守備のアグレッシブさをさらに増し、大分のボールホルダーへと襲いかかった。
82分に伊佐に代わってピッチに入っていた林容平が、86分、GK笠原昂史との接触プレーにより負傷退場。すでに3枚のカードを使い切っていたため、片野坂知宏監督は岸田を一列下げ、中盤には右から國分伸太郎、鈴木惇、川西翔太を並べて、後藤と三平をトップに配置した4-3-2のシステムで、守備を固めながら追撃を図る。
だが、88分、福森から竹内彬へのパスが短くなったところを白井永地にかっさらわれ、佐藤和とのワンツーで白井がシュート。枠を外れそうなところに林陵平が足を出して押し込み、水戸が試合を決定づける2点目を挙げた。水戸は10戦負けなしとなり、今季初の連勝。大分は4試合勝ちなしとなった。
負のスパイラルを断ち切りアグレッシブさを奪還せよ
試合後の片野坂監督は開口一番、「今日の結果は自分の責任」と言った。後方からビルドアップするスタイルを目指す中で、覚悟していたミスからの失点。「失点したら僕が責任を取るからトライし続けてほしい。そうしなくては上手くならない」と言い続けてきたが、それがついに現実のものとなった。
2つの失点場面はいずれもパスの出し手と受け手によるイージーなミスで、90分間のほとんどの時間帯を集中して対応できていただけに残念でもあるが、数々の決定機を逸し続けるうちに、チーム全体が疲労し、相手に付け入る隙を与えた感は否めない。
ロッカールームから出てきた後藤は顔面蒼白のまま「チャンスがあるのに決めきれていない。それでチームが苦しくなっている」と自身を責めた。
ただ、チーム全体の問題として、ここ最近は勢いが落ちているようにも見える。後藤が「逆に展開してもそこでスピードが上がらなかった」と振り返ったとおり、攻撃に切り替わった瞬間に醸し出す迫力と思い切りが、以前よりも薄い。最終ラインから攻め上がる回数も少なくなっている。
勝てていないことから、点を取ろうとする焦りとリスクマネジメントの慎重さが負のスパイラルとなってチームを蝕みつつある。この循環を、ここで断ち切らなくてはならない。自信を持ってボールを動かさなくては、このスタイルは成功しない。
復帰したばかりだった林の負傷離脱は痛すぎるが、吉平が出場経験を積めたことは収穫だった。また、相手に対策されたことは、こちらの弱点を教えてもらった良い契機でもある。ピッチに立ったそれぞれが、自分のプレーを妨げられた場面を振り返って直視し、相手の妨げを振り切って上回る技術を追求してほしい。
怖いのは、ミスを恐れて縮こまり、自分たちの目指すものを見失うこと。もう一度あらためてコンセプトを徹底し、本来のアグレッシブさを取り戻させることが、指揮官の最大の務めとなる。
次の戦いに、勇敢に臨むことが出来るか。第18節H横浜FC戦で、チームの底力が問われる。