TORITENトリテン

試合レポート

勝ちたい欲でバランスを崩す。灼熱のミラーゲームで苦戦しながら勝ち点1獲得

 

28日に開催された明治安田J2第16節H岡山戦は、強い陽差しの照りつける14時キックオフ。3試合ぶりのホームで勝利を目指して戦ったチームは、思いの強さゆえにバランスを崩してしまう。

試合情報はこちら

 

クリエイティブな連動なく、それでも攻めた前半

 
公式記録では29.3℃となっているが、実際のピッチ上は35℃近く。それを計算に入れたように、アウェイの岡山は、立ち上がりに見せた激しいハイプレスの鉾をまもなく収め、ブロックを作って大分の攻撃を受ける構えになった。
 
ボールを握った大分は、出しどころを探りながらも積極的に攻める。がっぷり四つに組んだミラーゲームの激しいぶつかり合いの中、後藤優介や山岸智、岸田翔平らが個の局面で勝り、チャンスを演出した。
 
ただ、本来狙いとしていた、相手を引きつけてスペースを空け、そこを突くといった、クリエイティブな連動した動きは少なかった。互いに幅を使ってマッチアップするため、いつものような大きな展開も繰り出せず、ショートパスでの崩しが増える。
 
それでも伊佐耕平の勢いあるポストプレーや國分伸太郎の若さあふれる仕掛けも機能していた。後方からの攻撃参加もあり、前半は7本のシュートを放つ。その1本でも決まっていればとあとで悔やむことになるのだが、守備を固めた岡山は、最後のところではやらせてくれない。35分には岸田のパスを中央で受けた國分が、瞬時の判断で思い切り良くゴールを狙ったが、一森純の好セーブで掻き出された。
 

修正した相手に先制され、追いつくも相手ペース

 
豊川雄太のスピードを生かしたカウンターを狙いながら前半はシュートなしで終えた岡山は、後半頭から、関戸健二と武田将平のポジションをチェンジ。関戸をボランチに配置して中盤に落ち着きをもたらすとともに、「後半が勝負どころ」ととらえていたとおり、前線からの激しいプレスを再開した。
 
その狙いがハマり、美しいコンビネーションを見せて先制したのは岡山。51分、加地亮のアーリークロスを豊川がゴール前で落とし、フリーランで回り込んだ武田が落ち着いてシュート。今季初メンバー入りで初スタメンだったルーキーに、プロ初ゴールを献上した。
 
追う立場となった大分だが、攻め続けた前半の疲労がツケとなって重くのしかかってきた。運動量が落ち、予測や判断のスピードも遅くなって、相手に上回られる場面が増えた。
 
57分には國分に代えて、怪我から復帰した三平和司を投入。前線の経験値を上げようと目論むが、疲労した周囲と連係できず空回り状態。
 
それでも70分、岸田を起点に鈴木惇のパスを受けた伊佐が、ターンして相手を剥がしシュート。伸ばされた一森の手をものともせずネットを揺らし、同点に追いついた。ベンチで林容平が交代準備をしていた矢先のことだった。
 

チームに足りなかった、良い意味での狡猾さ

 
その後も岡山のペースが続く。74分に山岸を下げて黒木恭平、82分にあらためて伊佐を林に交代と、戦力をフレッシュにするが、いずれもさほどの効果が見られない。
 
むしろ同点に追いついたことで追加点を狙いにいくあまり、前線と中盤が前がかりになり、最終ラインとの間が間延びしてしまった。そこを武田と交代で入っていた三村真や石毛秀樹に使われ、流れは完全に岡山に。
 
82分には三村のクロスを関戸に頭で合わせられたが、枠の左に外れて命拾い。相手の決定力不足に助けられた感もありつつ、1-1のまま長いホイッスルを聞いた。
 
試合後に鈴木惇は「こういう暑い日の試合は、90分の中での試合運びを計算することも大事。そういうメリハリが、まだまだ足りない」と猛省した。
 
「押し込んでシュートも打ったのは良かったが、もう少しボールを動かして相手を走らせるという考えを持ちながら試合を進めれば、後半はもっと相手の足が止まったと思う。押し込めはしたが、攻め急いだ場面も何度かあった」
 
岸田も「自分たちの狙いどおりの動かし方が出来なかった。ずっと同じことをするのではなく、どうして上手く行かないのかを考えて、その中で違う方法を取る選択肢もある」と話す。
 
今節のチームには、良い意味での狡猾さが足りなかった。片野坂知宏監督は「もうちょっとゲームをコントロールできるようにしないと」と難しい表情を見せた。アウェイ水戸という厳しい次節に向け、修正は急務だ。