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試合レポート

狙いはハマったが、プレー精度に課題。それでも連戦最後のアウェイで粘り強く+1

 

立て続けだった3連戦の最後。蓄積された疲労を抱え、16時、強烈な陽射しの下ではじまった試合は、終盤には両軍とも足が止まり、力を使い果たして2-2で終了した。

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密集する相手のスペースを突く狙いが奏功

 
4-4-2システムでコンパクトな守備からリズムを作るのが町田のスタイル。そのボールサイドに密集する特徴を逆手に取って、逆サイドや背後に展開することが、今節の狙いだった。
 
3-4-2-1システムの長所をフルに生かして幅と奥行きを使い、竹内彬や鈴木惇から大きくサイドや前線へとフィードを送ると、岸田翔平や黒木恭平、林容平が起点となって次々に決定機を作った。
 
ここまで全試合に出場していたキャプテンでCBの深津康太と左SBの松本怜大を出場停止で欠く町田のウィークポイントを狙い、大分はボールを動かして主導権を握る。だが、良い形は作れるものの、クロスやシュートの精度を欠いて得点には至らない。
 
一方の町田は、長身FWの戸島章が最前線で起点となり、2トップを組むフィジカルの強い中島裕希と両SHの重松健太郎・谷澤達也が2次攻撃に絡む狙いを徹底。11分には戸島の落としを中島がつないで谷澤がクロスを送ると、重松がゴール正面でヘディングシュート。これは上福元直人が落ち着いて正面でキャッチした。
 

黒木の移籍後初得点で先制もセットプレーで逆転を許す

 
先制点は19分。岸田のパスを中央で受けた林が左サイドの広大なスペースにスルーパスを出すと、後藤優介が時間を作りオーバーラップした黒木へと託す。エンドラインぎりぎりから黒木が左足で放ったシュートは、逆を突かれたGK高原寿康の手に当たりながらゴールへと転がり込んだ。
 
直後には李漢宰からのフィードを重松が折り返し、戸島がシュート。竹内と上福元が体を寄せて難を逃れる。だが25分、町田はFKからのサインプレーで同点に追いついた。李漢宰のキックを金聖基が頭で前線へ送り、中島が折り返す。上福元が弾いたこぼれ球が高く上がったところへ、フリーで跳んだ大谷尚輝が頭で押し込んだ。「自分たちが下がったスペースを使われた。研究されていた」と、鈴木義宜は試合後にこの場面を振り返る。
 
1-1となって締め直したい後半立ち上がり、またもセットプレーから町田が得点。森村昂太の右CKを、飛び込んできた戸島に押し込まれ、逆転を許した。
 
こちらも大型CB3枚に加え岸田ら長身選手を揃えているが、町田はその上を行く。戸島、金聖基、増田繁人と190cm超のプレーヤーを並べた町田に、制空権を明け渡した。
 

サイドをケアされれば中を突き、伊佐が同点弾

 
主導権を握りながらセットプレーでビハインドとなると、片野坂知宏監督は、接触プレーで傷んだ林に代えて伊佐耕平を投入。相手CBの間で駆け引きする伊佐にボールを集め、縦への勢いを増した。
 
幅を使ってスペースを突く大分の戦術に町田も徐々に対応し、ポジショニングを修正。だが、町田がサイドを封じようとすると、今度は中が空いてくる。その中のスペースを使おうと、61分、指揮官は黒木を下げて今季初先発で疲労の見える國分伸太郎を左WBに落とすと、川西翔太をシャドーに上げ、前田凌佑を投入して鈴木惇とボランチを組ませた。
 
前半立ち上がりの幅と奥行きを使う狙いに続き、相手の修正に対応したこの狙いもハマった。65分には早速、ウラへのフィードを追う相手CBとの駆けっこに勝った伊佐がシュート。GK高原にブロックされたが、伊佐は続く68分、後藤の右CKをニアから頭できれいに流し込んで同点弾を挙げた。
 
サイドに流れる後藤が相手守備陣を引きつけることで、得点機はなおも伊佐にめぐってくる。70分、國分からのサイドチェンジを受けた岸田のクロスをゴール前で受けると、フリーでシュート。だが、枠を捉えきれない。
 
71分には前田のパスを受けた川西のシュートが高原に正面で阻まれる。そのこぼれ球に反応した鈴木惇もシュートを放つが、こちらはクロスバーに弾かれた。
 
さらに83分、國分に代わって左WBに入っていた山岸智のクロスを伊佐がヘディングシュートするが、これも高原にキャッチされる。
 

精度不足は悔やまれるがアウェイで勝ち点1獲得

 
連戦の疲労と暑さの影響で、終盤には両チームとも足が止まっていた。寄せきれずに攻め合う様子からは、どちらの選手たちも力を振り絞っていることがうかがえた。
 
数々の決定機をものに出来ずにいた後半アディショナルタイム、左サイドで持った戸高弘貴にミドルシュートを打たれる。上福元の好セーブでCKに逃れたが、最後まで相手の高さに脅かされる展開となる。
 
集中してしのいだ結果、スコアは2-2のままタイムアップ。どちらの選手も力を出し尽くした様子で、ピッチに倒れこむ者が続出した。
 
「負けなくて良かった、連敗しなくて良かった、とは、われわれは思っていない。勝ち点3を取り切らないといけない試合だった」と、片野坂監督は試合後、悔しさを全開にした。狙いと采配がドンピシャでハマっていただけに、プレー精度不足でそれが表現しきれなかったことが悔やまれた。
 
その中で途中出場の山岸は、さすがの技術の高さを見せた。駆け引きしながら相手の間を抜け、ほぼ必ず好機につながるパスを供給している。
 
「ひとつのパスやクロスに関して、浮き球なのかグラウンダーなのか、右足なのか左足なのかといった細かいところで、パスやコントロール、フィニッシュの質が変わってくる。そういう細かいところまで積み上げていかないと、J2ではそうそう簡単に得点させてもらえない」
 
片野坂監督は今後の課題をあらためて胸に刻んだ。ハードだった2つの3連戦を五分の戦績で終えて、順位は6位。「J2残留が目標」と油断を見せない指揮官の下、トレーニングは続く。