ボール保持率では下回るも、要所を押さえた戦法でホーム開幕戦勝利
12日、チームは大銀ドームで明治安田J2第3節・山口戦に臨み、要所を押さえた戦法で相手の長所を消しながらカウンターにより2得点。ホーム開幕戦を今季初の無失点勝利で飾った。
試合記録はこちら
戦略を優位に進めた賢さと経験値
試合前、片野坂知宏監督はこの試合のポイントについて「サッカーの駆け引きと予測、判断のところで後手にならないように、先手を取れるように」と話した。試合後に、山口の上野展裕監督は「出足などちょっとしたところでのバトルで大分に上回られたのがこの結果につながっていった」と振り返った。
ボール保持率では圧倒的に相手が上回っていた。立ち上がりからスペクタクルなパスサッカーでゴール際まで押し込まれる場面が続く。ただ、その攻撃の勢いにさらされながらも、それほど大きなピンチはなかった。相手が強引にゴールを狙わなかったこともあるが、しっかり山口対策が出来ていたことが大きい。
山口はボランチを起点に、背後を狙う1トップへと配球してくる。まずはその攻撃のスイッチを入れさせないよう、前線3枚がパスコースを限定しながら、ボランチ2枚と最終ラインで先回りしてインターセプトした。「判断を必要とする守備が求められた。予測や読み、駆け引きのところで、経験ある選手を使ったのが良かった」と指揮官。敵将の敗戦の弁は、まさにその裏返しだったと言える。
岸田和人への縦パスを封じられた山口は、後半から岸田を下げて米澤令衣を1トップに据え、右SHに清永丈瑠を配置。より流動性を高めて攻め続けたが、大分の守備陣は慌てない。安易に食いつくことなく要所でカギをかけた。竹内彬、鈴木惇、小手川宏基らの経験値の高さに加え、鈴木義宜と福森直也が昨季J3で盛岡や琉球、富山といった超攻撃的なチームとの対戦経験を積んでいたことも、生きたのかもしれない。
一瞬の相手の緩みを見逃さずに先制
だが、チャンスは決して多くなかった。
山口は4-2-3-1を基本形としながら、攻撃時は佐藤健太郎がアンカーで、三幸秀稔と小塚和季とが流動的に入れ替わる4-3-3の形になったり、守備ではこちらの陣形に合わせて5-4のブロックを作ったりしながら、めまぐるしく変化した。
その変化に後手を踏むのか、こちらが先手を取って相手を動かすのかという激しい攻防のなかで、前半は大分の中盤の意識が守備へと傾いていたこと、そして山口の福元洋平と渡辺広大の2CBが激しい体当たりで大分の起点を潰し続けていたことにより、大分の時間帯がなかなか作れない。
それでも、決定機はこちらのほうが多かった。22分、自らのクロスをクリアされた松本怜が再び中央へ送ったボールを三平和司が折り返し、林容平がシュート。これはGKがキャッチする。25分、これもGKに阻まれたが鈴木惇のFKも見応え十分。33分には後藤優介のスルーした左からのグラウンダーを林が落として三平がシュートするが、やはりGKのファインセーブで掻き出された。
42分には中盤でボールロストし、ショートカウンターから三幸のミドルを浴びるが、今季初出場の上福元直人が触ってクリア。先制はその3分後のことだった。
三平の動きにつられて相手CBの林へのマークが甘くなった瞬間を見逃さず、鈴木惇が林へとロングフィード。これを林が下がりながら頭で落としたところへ後藤が走り込み、抑制のきいた右足シュートでネットを揺らした。「前半は我慢してスコアレスでもいいかと思っていた時間帯の大きな先制だった」と鈴木惇は振り返る。
福森の独走から追加点で突き放す
1点リードのみで後半も息をつけない展開のなか、上福元の飛び出しや福森のショルダーチャージなどで相手の攻撃をしのぐうち、次第に相手の勢いが落ちはじめる。
59分にドリブルで仕掛けた林が倒されPKをゲット。林のPKはポストに阻まれてしまうが、61分にも林を起点に山岸智や後藤が絡んで崩すなど、良い形が見えるようになってきた。
山口が63分に小野瀬康介を下げて加藤大樹を入れ、勢いを保つと、大分は66分、疲労の見える三平を下げて小手川をシャドーに上げ、ボランチに姫野宥弥を入れて中盤の運動量を増やした。
1点を追う山口がさらに前がかりになっていたところで、その背後を勢いよく突く狙いで71分、指揮官は林を伊佐耕平に交代。その2分後、自陣でインターセプトした福森が、自ら持ち出してカウンターで独走する。途中で相手に囲まれたがそれも股抜きで勢いよく突破してゴールに迫り、最後の最後で追走してきた伊佐に優しい横パスを出すと、伊佐がこれを上手く沈めて追加点を奪った。
山口も最後まで攻め続けるが、再三のCKからのチャンスもものに出来ず。スコアは2-0のまま、長いホイッスルが響いた。
「準備したとおりに選手たちが判断良く対応してくれた」と、試合後に指揮官は選手たちをねぎらった。自分たちのペースで試合を進めることこそ出来なかったが、組織の中で献身的に戦術履行して勝ち点3をつかんだチームに、スタンドからも拍手がそそがれた。