後半は盛り返すも、勝ち点は奪えず。判断、精度、質で相手に後手を踏む課題噴出
チームは5日、味の素スタジアムで東京Vと第2節を戦い、0-1で敗戦。片野坂知宏監督は「すべてにおいて未熟さが出た。勝ち点1を取れたかもしれない試合。まだまだトレーニングしていかなくてはならない」と、決意を新たにした。
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球際で後手に回り、完全に封じられた前半
同じ3-4-2-1システムでコンセプトも似通ったチーム同士のマッチアップ。球際の攻防が優劣を左右することは試合前から予想されたが、特に前半はあらゆる局面で完全に相手のほうが上回っており、もどかしい展開となった。
立ち上がりはホームチームである東京Vのほうが、むしろ構えていた印象。絶妙な位置で5-2のブロックを作り、特にダブルボランチが大分のシャドーをしっかりマークして、まずはこちらの長所を消したうえで、前線にボールを通してチャンスを狙った。
開幕戦の劇的勝利の勢いを継続しようとした大分は、相手シャドーの動いたスペースを突いて最終ラインからも攻撃を仕掛けるが、プレー精度が著しく足りない。縦パスを入れたところで、そのズレたところを先回りした相手にカットされ、前線3枚になかなかボールが渡らない。
逆に東京Vの前線は、ドウグラス・ヴィエイラとアラン・ピニェイロの2人がしっかりと縦パスを収めた。大分も球際に寄せてはいるのだが、激しく当たりはしてもマイボールにすることが出来ず、結局相手がボールを奪って攻撃を続ける繰り返し。空中戦では竹内彬が果敢に競り続けたが、今節は前節と違い、セカンドボールもことごとく相手に拾われた。
次第に後手に回り、相手に支配される流れを耐えてはいたのだが、41分に失点。マイボールにし損ねたところを髙木善朗に拾われ、相手左サイドからダイレクトでクロスを入れさせる。ファーサイドのドウグラス・ヴィエイラからのシュートは高木駿が一度は止めたのだが、そのこぼれ球をクリアしきれないうちにアラン・ピニェイロに押し込まれてしまった。
あまりのミスの多さや足を滑らせる場面の多さについて試合後に選手たちに確認すると、アップ後にピッチに大量に撒水されたことにより、アップ時と試合とで感触がまるで異なっていたことも影響していたようだった。後半からスパイクを替えた選手も多く、そういった部分でも相手のしたたかさにしてやられたと言える。
コンセプトを徹底して後半は形勢挽回に成功
ベースの部分で相手に競り負けていた前半から、修正の選択肢はいくつかあったはずだ。システムを変更してミスマッチを生じさせることもひとつだし、早めに選手を入れ替える策も考えられた。特に、個やグループで分断され攻撃の形を作れずにいたチームをひとつにまとめるためには、中盤がしっかりボールを収め、そこから展開することが必要になる。
だが、後半もそのままのスタート。試合後、それについて意図を尋ねると、片野坂監督はこう答えた。
「ハーフタイムに話したことを後半がはじまってから出来るかどうか、一度見たかった。もちろん、調子の良い選手に代えることによって流れが変わることもあると思うが、僕の中で、まだ第2節ということもあり、チャレンジしたいと思っていた。このメンバーで開幕戦は良い形で入れたので、それを考えながら、勝負どころでメンバーを代える予定にしていた。システムの変更についてはまったく考えていなかった」
戦いのなかで戦術の浸透を進めるためには、我慢して貫くことも必要だ。安易な変更がコンセプトのブレにつながってしまっては、シーズンを通しての戦いが難しくなる。指揮官は選手たちにコンセプトの徹底をあらためて求め、勝負どころでカードを切る準備をして戦況を見守った。
実際、後半からは大分がペースを握る時間帯が増えた。相手WBやボランチに疲労が見え、間延びしてきたこともあるが、姫野宥弥の前向きなプレーが増え、岩田智輝も高い位置を取りはじめた。小手川宏基も前に絡み、ゴールを狙うようになる。
東京Vは64分、井上潮音に代えて経験豊富な橋本英郎をボランチに投入。大分は66分に林容平を伊佐耕平、小手川を川西翔太と同時に2枚のカードを切った。
実はトレーニングでは、鈴木惇を投入するプランを準備していた。前半の内容を見ても、互いにコンパクトな中で封じられていたため、鈴木惇の持つ展開力があればと感じられたことはあった。ただ、前節も両WBが高い位置を取ったときに姫野のカバーリングする力が必要だったことを考慮し、「ボールを持って引き出せ、そこから変化や奥行きを見ながら前線3枚に配球できるし、絡んでいけたりもする」(片野坂監督)という特長に期待して、この場面では川西をセレクトした。
川西もその期待に応え、低い位置でボールを収めて献身的に前線へとボールを送る。ボランチを経由する動きが出てきたことで、三平和司の背後を狙う動きから立て続けにチャンスも生まれた。
型にこだわりすぎた嫌いも。それならそれで質の向上を
修正に成功し、終盤にはシンプルにクロスを多用して何度もゴールに迫ったが、得点には至らなかった。クロスやパスの精度が悪く、成功率が著しく低いことが最大の原因だった。84分に三平と交代した清本拓己が松本怜のクロスに頭で合わせた場面は最大のチャンスだったが、惜しくも枠を捉えきれず、勝ち点を得ることは出来なかった。
ただ、個々の調子が悪かったかというとそうでもない。特に後藤優介は体にキレもあり、動きもよく、可能性を感じさせた。それでも前線のコンビネーションが前節のように機能しなかったのは、互いにコンパクトなフィールドの中で、変化をもたらせなかったからだ。後藤はその反省点をこう分析する。
「うまく行かないときは違うことをしないと、ずっと同じ回し方をしていたら奪われることも増えてくる。動きやテンポを変えることも必要。簡単にはたくだけでなく、ちょっとボールを持ってから出すことも織り交ぜれば相手も食いついて、そのウラが取れてくるのかなと思う。前節、3枚で崩すのがうまく行ったので、その形を崩さないことにこだわりすぎて、1本のパスで崩すという選択が出来なかった」
個の局面での力不足は大きな課題として露呈したが、それも、言葉は悪いが「もともとそのレベル」だったもの。J3からJ2へとカテゴリーを上げたことで、それがより浮き彫りになっただけだと言える。引き続きトレーニングしていくのみだ。
次節ホームで対戦する山口も、その次の徳島も、今節と同様に前線からプレスをかけてくるであろうことを考えると、課題克服は急務。ハーフタイムの修正で形勢を挽回し、戦力の選択肢もまだまだあることを考えれば、このチームのポテンシャルはさらに引き出せる。選手個々の成長と指揮官の手腕に期待したい。