甲府のカウンターをケアしつつ一体となって戦う。ピンチをチャンスへと転じる力を
厳しい台所事情を抱えつつ、新加入・吉田の初出場や天候の影響などさまざまな要素が絡み合う今節。勝点で並ぶ甲府とは状況が似通っており、J2サバイバルの大事な一戦となる。
前回対戦・第13節以来の勝利を期す
負傷者が多い上に3人の主力を出場停止で欠いての今節。横浜FMから育成型期限付き移籍で獲得した吉田真那斗を戦列に加え、チームは甲府に挑む。甲府には前回対戦の第13節に勝利しているが、その後は勝利から遠ざかっており、ここでダブルを狙いたいところだ。
勝利に飢える思いと苦しいチーム状況が良好な緊張感に繋がっているかのように、試合前々日のトレーニングは引き締まった雰囲気の中にも時折笑いが弾け、選手たちの表情は充実していた。非公開で行われた戦術練習は、通常よりも実戦に近いやり方で落とし込まれたようだ。全体練習終了後にはポジションの近い選手同士のグループが、グラウンドのあちこちで真剣に話し込む様子が見られた。
状況的にはピンチだが、それをチャンスへと転じるまでのパワーが、いまチームには求められている。負傷から復帰して徐々にコンディションを上げているメンバーの姿も認められる中、士気を鈍らせることなく上昇気流に乗る準備を整えておきたい。
負傷していた三平和司、そろそろ復帰か
大分は8戦、甲府は7戦、それぞれ未勝利で、ともに天皇杯2回戦には勝利しているという、現在置かれている状況が非常に似通っている相手。6勝6分9敗の甲府と5勝9分7敗の大分は勝点24で並んでおり、得失点差0の甲府が12位、同-5の大分が13位につけている。ともに中位ながらJ3降格圏まで勝点3差と、大混戦のリーグで厳しい立場に置かれている。
ピーター・ウタカにアダイウトン、ファビアン・ゴンザレスと強力な外国籍の攻撃陣を擁しながら、なかなか勝利できていない甲府だが、そのカウンターは迫力満点。彼らに配球する佐藤和弘らボランチやゲームを組み立てるベテランCB山本英臣もしっかりケアしなくてはならない存在だ。離脱して以降チームが勝利から遠ざかっている三平和司だが、そろそろ復帰してくる時期。いれば確実に相手の嫌らしさが増すので、ここも警戒ポイントとなるだろう。
レゾナックドーム大分の屋根がワイヤーロープの調査のため開きっぱなしとなる影響も気になるところだ。雨天となれば2019年8月、天皇杯3回戦・鹿屋体育大戦以来の“雨のドーム”となる。いろいろと注目ポイントの多い一戦だが、求めるべきはシンプルに勝利のみ。ピッチに立つ選手を一丸となって後押ししていきたい。
試合に向けての監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
甲府はやはりカウンターが脅威。そこの管理と、自分たちの攻撃の得点のところ。やはり得点しないと勝点3は取れないので、選手たちは自分たちの狙いの中でチャレンジしてくれると思う。攻撃が成立することが大事。ボールを取られたり前がかりになったりすると、相手はスペースが大好物なので、そこを管理するのと粘り強く対応するところをやってほしい。
3月20日の鹿児島戦以来勝てていないことで、応援してくださっている方々、支えてくださっている方々の期待に応えられていないという自分自身への悔しさがある。やはりホームで勝って喜ぶことが大事で、ホームで勝点3を取れていないことが僕の中でいちばんの苦しさ。上位チームが相手だろうが、ホームでは勝てるゲームが出来るようにしたい。
今週のトレーニングは、前節のああいう負け方があったり連敗していたりというところで、選手も良い意味での危機感を持っているようだ。こういう苦しい状況でも、トレーニングの大事さをわかりながら取り組んでくれる姿勢は、本当にありがたい。そういうものは選手としても大事なところ。全員がそういう意識、姿勢でやってくれればよりチーム力も上がっていくし、戦術や個人の成長にも繋がっていく。
■DF 34 藤原優大
メンバーが代わってもチームとしてやることはあまり変わらないのだが、個人としては攻守両面で運動量が増えることになりそう。後ろでボールを動かすことも大事だが割り切って前に蹴る判断も有効で、リスクを負っても動かすのか負わずに蹴るのかが中途半端になるのがいちばんよくない。
後ろがボールを持ったときに動かすのか蹴るのかで全体のポジショニングも変わってくる。まずしっかりポジションを取って、その中で相手の状況を見てからプレーを判断したい。相手が食いついたときにその背後を取るからこそ有効なのであって、ただ相手のプレスから逃げるために蹴るだけではセカンドボールも拾えなくなる。相手が背後をケアすれば足元が空くし、そこでの個人の判断が重要。ギリギリまで勇気を持って見ることが大事。
■MF 5 中川寛斗
カタさんのサッカーは相手のストロングを潰しながら僕らの長所を出していくというものだと思うので、僕もそういったところでパワーを出せると思う。途中から出場したとしてもチームに欠けている部分で良い“隙間産業”を出せればいいし、もっと言えば先発の11人で良い攻撃をしたい。いまなかなか勝てていない中ですんなり行く試合にはならないと思うが、粘り強く戦いたい。
現代フットボールにおいてはボールをしっかり握るということはあまり重宝されていなくて、どれだけ早く前進できるかというところにカタさんはトライしている。その緩急のところで、緩くボールを持つ場面も必要だし、緩く持つことで速さが倍増して感じられたりすると思う。ピッチに立つ選手のキャラクターによっても変わってくるので、スタメンで出る11人でしっかり話し合って擦り合わせることが大事。
甲府は特長ある選手がいて、わかりやすい色があるので、そこは警戒するべきポイントでもある。そのひとつひとつを僕らの長所で潰しながら戦いたい。相手にボールを持たれなければその長所も出ないので、ボールを失った瞬間にまた回収できれば、相手は疲労するだけになる。僕らのメリットで相手を潰し、彼らのデメリットを出させていきたい。