前節のリベンジチャンス。攻撃力自慢の鹿児島に「シームレス・フットボール」で立ち向かえ
守護神・濵田のビッグセーブに助けられながら、悔いの残るゲームとなった前節・清水戦。中3日で迎える今節も、攻撃力の高い鹿児島が相手だ。3試合ぶりのホームで今季初白星を期し、今度こそ自分たちのフットボールを表現できるか。
静岡アウェイ連戦からのコンディション回復もカギ
相手のタレントの力量やアウェイの雰囲気に気圧されたようにアグレッシブさを欠いてしまった前節・清水戦。試合後には選手たちからも監督からも、自分たちのフットボールを表現できなかったことへの心残りの言葉が漏れた。
「同じ負けるにしても自分たちの目指すところにチャレンジして負けたのであれば、そこから得るものや高めていけるものがある」
ロッカールームで選手たちにそう説いた片野坂知宏監督自身も「もっと選手たちに勇気を持ってプレーさせるような言葉をかけられればよかった」と自らに矢印を向けた。
そんな後悔の念も抱いて日本平から大分へと帰り着いたのは深夜、日付が変わってから。今節の鹿児島戦まで中3日の準備期間で、前々節・藤枝戦と2連続の静岡でのアウェイ移動により蓄積した疲労から回復するために、その2試合の出場組は全力でリカバーに取り組んだ。
今節と次節の栃木戦はU-19代表ヨルダン遠征に招集された保田堅心が不在。その穴を誰がどう埋めるのか、そこでどういう化学反応が起きるのかも気になるところだ。
2016年J3での対戦時から大きく力をつけた鹿児島
鹿児島とのマッチアップは2016年J3以来。片野坂監督が大分で監督キャリアをスタートした最初のシーズンで、第2節はアウェイで松本怜、第24節はホームで後藤優介が得点して2戦とも1-0で勝利している。
あのシーズンのJ3得点王は、鹿児島で15得点を挙げた藤本憲明。1点差で2位につけたのが大分の後藤だった。その2年後に藤本が大分に加入してカタノサッカーの成熟とJ1昇格を支え、さらに翌年のJ1でシンデレラ的存在として脚光を浴びることになるとは、あのときは思ってもみなかった。その藤本が、大分から神戸、清水を経て昨季から再び、古巣・鹿児島でプレーしている。昨季J3では32試合5得点でチームのJ2昇格に貢献。今季もここまで3得点を挙げて現在チーム得点王だ。
藤本がPKも含めて2得点、さらに米澤令衣の1点にも絡んだ前節、鹿児島は千葉を4-2で下した。今季好調の千葉とはリーグ戦の10日前にルヴァンカップでも対戦しており、その試合にも1-0で勝利している。5シーズンぶりのJ2で、ここまで2勝1分1敗と勝ち越してレゾナックドーム大分へと乗り込んでくる。
神戸アカデミーOBで現役時代は徳島や北九州で活躍した大島康明監督は、ヘッドコーチだった昨年8月に大嶽直人前監督からチームを受け継ぎ、指揮2戦目から7戦無敗でJ2昇格を達成。就任以前から培われている鹿児島のスタイルを踏襲しながら自らのエッセンスを加え、今季も攻撃的チームを育てている。
横浜FCのンドカ・ボニフェイスの弟であるンドカ・チャールス、そして藤本や米澤ら決定力のあるFWはもちろん脅威だが、トップ下の田中渉のゲームメイクもそのスタイルを支える。全体に繋ぎが上手く相手のプレスをかいくぐるのも得意なチームなので、大分にとってはまさに前節・清水戦で出来なかったチャレンジを今度こそという図式になる。前節と違って今節はホームだ。今季ホーム初勝利を期して、しっかりと自分たちのフットボールを体現したい。
試合に向けての監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
清水は質も強度もパワーもあるチームだったが、ああいう相手にどれだけ自分たちのフットボールが出来るかと挑戦した中で出来なかったことが多かったので、あらためてもう一度自分たちの目指すものにチャレンジできるようにしていきたい。体力の回復と同時にメンタル的な部分でも前向きにトライできるようなかたちでやれるよう準備する。
ホームで勝てていないので、今度こそ、まずはホームでファン、サポーターに勝利を届け、試合後に一緒に喜び合いたい。僕も16年に鹿児島と対戦したが、当時よりも鹿児島のサッカーが定着しているし、大島監督がコーチ時代から積み上げてきているカラーがあると思うので、前回対戦の頃より手強くなっているという印象がある。J2の試合は簡単に勝てない中で、覚悟をもって臨みたい。
■MF 18 野嶽惇也
前節の清水戦もそうだったが、ボールを受けるのを怖がらずにしっかりひとりひとりがボールを持てるようトライしていかなくてはならない。目先の結果ももちろん大事なのだが、カタさんも言ったとおり、そこをチャレンジした上での結果ということが大事だと思う。
シームレスという部分をただ勢いだけで表現しようとしていると、ボールを持てるところでも蹴ってしまったりしてしまう。そういうところもトライしていかないと、勝てたゲームが引き分けになり、引き分けられたゲームを落としたりしかねない。繋ぎの中で奪われたあとですぐに切り替えるといった激しさは大事だと思うが、ただ縦に速くというだけでなく、もっと相手を見て、どのくらい来ているのか、こう動かしたらここが空くよね、というのを見ながらプレーすることを突き詰めていかなくてはならない。
■DF 4 薩川淳貴
僕が入る前から鹿児島のスタイルは大きくは変わらず、ずっとブレずにやっている強さがある。いまの現代サッカーでは強度やスピード感が大事になってくると思うが、そこへも順応してきているんじゃないかと思いながら見ている。あの攻撃的スタイルが鹿児島の長所。前線に特徴ある選手がいるのがストロングだと思っている。
(藤本憲明について)一緒にやっていても、自分が思っていないタイミングで動き出したりしていた。僕らの中にはない感覚で動き出すので、守備をやっていてもそこの一瞬の隙、ちょっと気を抜いたときやボールウォッチャーになっているときに、気づいたら背後を取られている。そこがノリくんのストロング。前節もそんな動き出しからPKを獲得していた。あの動き出しには背後対応として気をつけなくてはならない。