勝点1差を追ってのマッチアップ。相手に流れを渡さずボールを握れ
残り10試合となった今季J2。第33節の1日目に暫定4位の東京Vが勝点を56に伸ばし、暫定5位・長崎との勝点差を6に広げた。大分はさらに勝点1差で追う暫定6位。譲れない戦いが続く。
流れを上向ける材料は揃いつつある
上位も下位も混戦をきわめる今季J2。残り10試合でそれぞれの生き残りを懸けて、ワンプレーの重みが増してくるシーズン最終盤だ。
下平隆宏監督は、9月の5試合がほぼ明暗を分けてくると位置づける。今節は勝点1差で上にいる長崎、次節は勝点2差で追ってくる甲府との直接対決アウェイ連戦。その次は、下平監督の盟友・吉田達磨新監督体制へと舵を切り残留争い圏からの浮上を期す徳島をホームに迎える。続いて現在6試合連続ドローで残留へとしぶとく食い下がる水戸とのアウェイ戦。9月ラストは大型補強で最下位脱出へと必死な大宮と、いずれも難しい状況でのマッチアップが続くことになる。
シーズン折り返し後の3連戦で磐田、町田、清水と対戦し1分2敗と叩かれたことが、そこからの急降下につながった感もあった。特に若い選手が多く出場していた守備陣は自信を挫かれていたようにも思える。高木駿が復帰した第30節の藤枝戦ではひさびさに大分らしいポゼッションスタイルがピッチに描かれたが、そのキーマンだった高木が直後に札幌に引き抜かれ、調子を上げていた中川寛斗も負傷離脱するなど、勢いが出そうなところを折られるアクシデントも続いた。
その中で、藤枝戦では鮎川峻が移籍後初ゴール。仙台戦では今季長らくコンディション不良に悩んでいた長沢駿の復活を告げる今季初ゴール、そして保田堅心のプロ初ゴールが生まれた。チームの苦境の中で保田と高畑奎汰が急成長を感じさせ、町田也真人や野嶽惇也も戦線復帰。なによりメンタル面が大きく影響してくるこの時期にキャプテン・梅崎司がピッチに立てる状態になったことは大きく、ここからの巻き返しが期待される。
ポゼッションの質を高めている長崎
イージーな失点が続いたこともあり、今週は守備面の整理に重きを置いたチーム。立ち上げ2日目には1時間に及ぶディスカッション形式のミーティングを行い、4つのシーンを引き合いに守備の課題について話し合った。その上でいま最も不足しているのはコミュニケーションだという結論に達する。
渡邉新太は「映像を見ながら課題を振り返っても同じシチュエーションになることは2度とない。そのときどきで瞬時に判断して、たとえセオリーとは異なることでも有効なプレーを選択するべき。だから互いに声かけが重要になる。ただ、こうして話し合ったことでみんなの守備意識は高まった」と話した。
下平監督も「あらためて選手たちの現状の感覚が把握できてよかった」と振り返り、練習後には下平監督が梅崎と、岩瀬健ヘッドコーチが町田と並んで走りながらヒアリングする様子も。なかなか結果の出ない中で思い切った選手起用も検討したようだったが、「最終的にはトレーニングを見て決める」とのことで、その結論がどうなったかは試合当日のお楽しみとなった。
長崎は直近2試合で採用した4-3-3でポゼッションの質を高めている。下平監督の教え子でもある秋野央樹や中村慶太が高いポジショニング能力を発揮し、今季19得点のフアンマ・デルガドら外国籍選手を含む強力な攻撃陣が仕留めるかたちで、前節は最下位の大宮を相手に4得点無失点の圧勝を演じた。いい形で相手に攻撃させないためにも、ボールを握って自分たちの流れへと持ち込みたい。賢さと強度での駆け引きで、どれだけ相手を上回れるか。昨季までチームメイトだった増山朝陽との再会も楽しみだ。
試合に向けての監督・選手コメント
■下平隆宏監督
もう一度、アイデアを出して攻撃のクオリティーを高めていきたい。ビルドアップの質も高めたい。あとは失点を続けている軽い守備。ミーティングでは守備について全員で分析しながら整理したが、結局は90分の終盤、へろへろな時間帯でもそれが出来るようにしておくことが必要。長崎戦は負荷の高い試合になると思われるので出来るだけボールを握って進めたい。
■MF 17 高畑奎汰
前節の失点場面は枚数が揃っていながらやられた。特に3失点目は全員がふらっと行ってしまって後手に回っていたので、最悪あそこは出ずに中でクロス対応するなど、もっと声をかけあっていれば、どうにか出来ていた場面だった。もっと声を出していきたい。
長崎は勝点1差で上にいるチームなので、絶対に勝って順位を入れ替えたい。後半戦になってから特にもったいない緩い失点が多いので、まずは失点しないこと。前節は2点取れたが、もっと取れる場面はあったので、最後の精度を上げて無失点で勝ちたい。
■MF 28 野嶽惇也
前節の前半は確かに相手コートでボールを持ててはいたのだが、割りに行くというタイミングがあまり明確ではなかった。裏に抜けるとか割りに行くという回数をもっと増やさなくてはならない。前半に多くパワーを使っていたので、立て続けに失点した時間帯は少し止まっていた感もあった。そこの配分も大事なのかと思う。
シーズン最終盤に復帰したので、最後の切り札的な存在になりたい。何か変えられるのではないかと自分に期待している。