負傷者多発。スクランブル状態のチームはこの逆境をバネに出来るか
負傷者多発でメンバーが足りない状況。この難局を乗り切るために、コーチ陣は頭を絞り、選手たちがそれを遂行する。一体感こそがものを言う、これまた大事な一戦となる。
「U-18から借りてこなくては間に合わない」
8日、茂平の左膝前十字靭帯損傷と宇津元伸弥の左膝内側側副靱帯損傷による離脱が発表された。それ以外にも、公式に発表されていないメンバーを含め、負傷者が多発している現在。トレーニングに合流はしたものの試合に出るまでにコンディションが上がり切れていなかったり、再発防止のために無理をさせられなかったりというメンバーも含めると、離脱者はかなりの数に上る。
天皇杯2回戦・ヴェルスパ大分戦翌日の公開トレーニングでは天皇杯出場組とそうでない選手たち、そして負傷者、個々のコンディション調整者と細かく分かれてそれぞれのメニューをこなしたが、台所事情の厳しさは一目瞭然。多くが試合中や練習中の接触など物理的事故による避けようのなかったものだが、その後の治療回復を順調かつスピーディーに進めることと、筋肉系など日頃のケアで防げるものは防ぐことが、メディカルスタッフの腕と選手自身の意識に懸かってくる。
今節の群馬戦には「U-18から選手を借りてこなくては間に合わない」(下平隆宏監督)。第10節の町田戦で骨挫傷を負い、痛み止めを施しながら高パフォーマンスを維持してきた茂がようやく本来のコンディションに戻ったところでの離脱で、右サイドに誰を起用するかが気になるところ。他のポジションでも替えの効かない存在感を放っていた選手が出場を回避しなくてはならなくなっている。
戦い方のベースを変えることはない
ここまで主力を固定せざるを得なかったチーム事情も苦しいところだが、そういう選手たちが他の選手に代われば細部のコンビネーションや全体のニュアンスも変わってくる。日頃のトレーニングでどれだけ選手間の相互理解が培われているか、あるいは培われていなければ柔軟に味方と連係できるかが試されそうだ。
今節は戦い方のベースはそのままに、起用選手が変わることで特に対相手戦術の部分には工夫が必要になるだろう。指揮官とコーチングスタッフの腕の見せどころだ。この逆境を利用して新たなオプションを生み出せれば、相手の虚を衝くことも出来るし、次第に相手に対策されてスタイルが表現しづらくなっていた課題の克服にも新たな一歩を踏み出せるかもしれない。
今季の群馬は大槻毅監督の戦術が浸透してバランスよく戦っており、現在8勝5分6敗の勝点29で9位。開幕3戦未勝利というスタートだったが第6節から清水、栃木、長崎、大宮に4連勝して一気に勝点を積んだ。
天皇杯2回戦は東京Vに1-2で敗れたが、全員をターンオーバーして臨んだためリーグ戦メンバーの準備期間は潤沢。さらに4連勝時のうち3試合はアウェイだったが、ここまで8勝のうち5勝はホームと、ホームで強さを発揮している。アウェイでの勝率がよくない大分だが、混戦の上位争いに食い込み続けるためにも、貪欲に勝点を積みたいところだ。「まずは失点せず負けないことが大事」と選手たちは口を揃える。
試合に向けての監督・選手コメント
■下平隆宏監督
怪我人が多く、いるメンバーで戦うしかないという状況だが、甲府戦前からより深い戦術的提示をしてそれを浸透させており、今節もそれを継続する。ただ、戦い方のベースは変えなくても戦力が入れ替わるのでひと工夫が必要になる。
群馬は昨季とは違う戦い方で、現在は9位。「大槻さん仕事してるな」という感じ。今節は相手がどうということではなく、自分たちが自分たちのスタイルを表現できるかどうか。そこにフォーカスしてやっていく。
■DF 19 上夷克典
(茂が怪我したので縦関係を組む選手が変わることになるが)やはり人によってちょっとしたポジショニングが自分の感覚次第で違う。前に入った選手の特長を生かしつつ、上手く連係を取っていきたい。戦術を整理してやることがはっきりしているので、以前よりは迷いなくプレーできると思う。出る選手同士でコミュニケーションを取り、イメージよく群馬戦に臨めるようにしたい。
アウェイでナイトゲームで難しい展開になると思うが、失点しないことから入れば流れはどこかで来るもの。そこで点を取れればいい。