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今節の見どころ

指揮官はターンオーバーを明言。チームに新たな刺激をもたらす戦力は現れるか

 

JFLで好調を維持するヴェルスパ大分との、9年ぶり3回目の対戦。洗練されたポゼッションスタイルを浸透させた相手に対し、こちらはリーグ戦とはメンバーを入れ替えて臨むことになりそうだ。

 

2013年、2014年、そして2023年

ヴェルスパ大分との公式戦は、その前身であるHOYO大分時代も含めてこれが3回目になる。1回目は2013年9月8日の第93回天皇杯2回戦・HOYO大分戦。2回目はその翌年、2014年7月13日の第94回天皇杯2回戦・ヴェルスパ大分戦。最初の対戦は森島康仁の2得点で2-0で勝利し、2回目の対戦は高松大樹の先制点と坂井大将のPKによるクラブ最年少記録得点のあと濱中祐輔に1点を返されて2-1で終えている。
 
今回はそれ以来となる9年ぶりの対戦。さすがに9年も経つと互いに選手も入れ替わっており、トリニータは2014年に大卒ルーキーとして途中出場した伊佐耕平が残るのみ。ヴェルスパは守護神・姫野昂志が唯一、いまもゴールマウスを守る。2013年には先発、2014年にはベンチ入りしていた松本怜はいまやトリニータのCRO。2013年にヴェルスパのキャプテンだった生口明宏はヴェルスパの取締役専務兼GMとなり、2014年のキャプテンだった長谷川豊喜は現在、コーチとしてトップチームの指導にあたっている。
 

今季新戦力やU-20代表が出場する楽しみも

5月7日の県予選決勝でジェイリースFCとの熱戦をPK戦にまでもつれ込みながら制し県代表の座を勝ち得たヴェルスパは、5月21日の1回戦で山口県代表・FCバレイン下関と戦い、先制したものの88分に追いつかれると延長後半にクロスから酒井信磨がヘディングで得点を挙げ、2-1で勝ち上がった。
 
山橋貴史監督体制3年目でポゼッションスタイルが浸透しているヴェルスパは、現在第10節までを終えたJFLで9試合を終えて7位。10試合を終えて2位につけるクリアソン新宿との勝点差はわずか2で、混戦の上位争いをタフに戦っている。ここまで4得点の半田航也はリーグ得点ランク3位だ。
 
ヴェルスパの直近の公式戦は5月28日のJFL第9節・鈴鹿ポイントゲッターズ戦(0△0)。天皇杯2回戦後は中3日で第11節のアウェイHonda FC戦が控えているが、トリニータとの戦いに向けての準備期間は潤沢にあり、上のカテゴリーのチームを撃破しようと全力で臨んでくるだろう。
 
対してトリニータのほうはリーグ戦から中2日というタイトなスケジュール。やはり後には中3日でJ2第20節のアウェイ群馬戦が待っていることもあり、下平隆宏監督は大幅なターンオーバーを明言した。これまであまり出場機会に恵まれなかったメンバーが顔を並べる布陣となる。負傷から復帰した新戦力の池田廉やテイシェイラ、大卒ルーキーの松尾勇佑、U-20W杯帰りの屋敷優成らの出場が期待されるほか、負傷者が多発している中、アカデミーからも多く2種登録しており、メンバー入りする可能性も考えられる。
 
おそらくリーグ戦を戦っているメンバーで臨むであろうヴェルスパに比べれば、組織としての練度も戦力個々の経験値も低いが、プロの意地を見せなくてはならない一戦。ここでアピールすればリーグ戦のポジション争いに食い込めるチャンスでもあり、出場メンバーの頑張りでなんとしても3回戦へと駒を進めたい。
 

試合に向けての監督・選手コメント

■下平隆宏監督
 
天皇杯はメンバーをターンオーバーする予定。これまで試合にあまり絡めていない選手たちにとっては格好のアピールの場になるので、練習でもみんな気合が入っているが、自分は非常にプレッシャーを感じている。カテゴリーが上のプロのチームとしてわれわれは負けられない。ヴェルスパさんはトリニータを食ってやろうという気持ちで戦ってくると思うので、そういう難しさもある。
 
ヴェルスパさんとは練習試合も何度かしたが、非常にポジショニングよく攻撃の質が高い。若い選手も多く、激しくプレスをかけてくるので、われわれと似たようなスタイルではあるのだが、向こうは積み上げもあり、上手いなという印象。
 
おそらく苦戦すると思う。こちらは若手主体でゲーム慣れしていないメンバーが出ることになるので、ヴェルスパさんとはチームの仕上がり具合に差があるだろうが、こちらにとっては負けられない試合になる。お互い攻撃的なサッカーでスリリングなゲームになることを期待している。その上でわれわれがしっかりと勝って次に駒を進めたい。
 
■MF 35 佐藤丈晟
 
本当にどちらが勝つかわからない試合になると思う。ヴェルスパと練習試合したときも、相手は上手かった。自由にやらせてくれないチームだが、そういうところをかいくぐって、得点を狙っていきたい。こちらも目標としているアグレッシブさなどで気持ちの盛り上がりでは負けないと思うので、そういうところを見てもらいたい。
 
天皇杯は延長戦やPK戦まである。本来ならば90分で勝ち切りたいが、延長戦やPK戦にまでもつれることも考えなくてはならない。自分は高2と高3のときに2種登録で天皇杯に出場し、高3だった昨年は得点も出来た。個人的にもチャンスを掴むための大会だと思っている。アグレッシブさではチームの誰にも負けないと思っているので、自分の持ち味である持ち運びや左足の精度などを発揮して、どんどん得点に絡んでいきたい。