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今節の見どころ

迎えるは強力な戦力が並ぶ長崎。前節をターニングポイントに出来るか

 

不甲斐なかった前節を噛み締め、もう一度仕切り直して当初のチームコンセプトに立ち返る今節。中3日でホームに迎えるのは外国籍選手をはじめハイポテンシャルな戦力が居並ぶ長崎だ。

 

原点に立ち返ってもう一度戦えるチームに

前節・山形戦での大敗を受け、チームはオフ明けの練習前、通常より長時間のミーティングを行った。前節は追撃態勢の背後を突かれて失点を重ねたが、まずはその失点の仕方の軽さを修正したいというのが下平隆宏監督の定めた優先順位だったようだ。
 
「そもそも今季スタート時、“共創”でチームコンセプトを設定するときにみんながいちばん口にしたのは『パッション』だった。それを忘れているんじゃないか。システムとか戦術とかの話をする以前に、そもそも情熱を出して戦って、試合を観に来た人に『すごい、戦っている、面白い』と感動してもらうということが、チームで描いた好循環サイクルのスタートだったはず。もう一回それを思い出そう」
 
まずは立ち返る場所として、全員で決めたチームコンセプトを再確認。それに沿ってプレシーズンには両ゴール前のトレーニングに重点を置き、一体感を持って戦うベースを作った。それが次第に相手に対策されるようになったこともあり、さらにクオリティーを高めるために攻撃面を再構築。GKを、シンプルに前への勢いを醸し出せる西川幸之介から相手と駆け引きしながらゲームを組み立てるのが得意な高木駿にチェンジし、高木を組み込んだビルドアップで課題修正した矢先に高木が負傷離脱。同時に相手もGKに食いつかずマンツーマンディフェンスで大分の戦術を封じるようになり、連戦中、そこをもう一段階高めようとしていた矢先の、前節の大敗だった。開幕当初に比べて戦術面に意識が引っ張られ、がむしゃらさにやや翳りが見えてもいたようだ。
 

突破口を見出したい同士の激突

同時に、ここまでメンバー固定気味で戦ってきたが故に、主力たちに蓄積疲労の色が見えていたことも確か。ポジションによっては徐々に選手層が厚みを増しそうな感触もあるが、期待されながら現状ではこれまでの主力たちに取って代われないメンバーも数多くいる。19日のミーティングは、そこにハッパをかける意味もあった。
 
相手に距離感を広げられ、連係を阻まれて、ここ3試合ほどは似た状況の試合が続いている。まずは心身ともにファイティングポーズを取れる状態に整えた上で、戦術的にこれをどう乗り越えていくか。その内容は試合前日の非公開練習で落とし込まれたはずだ。また、これまでは全体練習終了後は選手個々のペースで居残りの自主練習を行なってきたが、今節に向けての練習からはそれを個々の能力を伸ばす「IDP(Individual Development Plan)」としてオフィシャル化した。ポジションごとにコーチが担当し、個々にフォーカスを当てた指導を行うようになっている。
 
今季の長崎は一試合あたりの起用枠を超える外国籍選手を擁し、試合ごとに異なる顔ぶれが配置されている。日本人選手にも能力の高いメンバーが多く、その一人が昨季まで大分でプレーしていた増山朝陽だ。
 
開幕から2敗後に2分とスタートは不調だったが、そこから3連勝。その後1敗を挟んで5連勝し、うち3試合で4得点を挙げ、同じく3試合で無失点と、一気に順位を上げてきた。ただ、第14節・東京V戦と第15節・金沢戦で連敗し、前節の岡山戦はスコアレスドローと、ここ3試合は未勝利で、得点も東京V戦の都倉賢による1ゴールのみ。大分と同様、突破口を開きたい状況になっている。
 
相手の個々が強力なだけに、より負けないメンタリティーを出すことがクローズアップされる戦いになりそうだ。「前節の敗戦をいい転機としたい」と指揮官。シーズン中に何度かやってくる、踏ん張りどころのひとつとなる。
 

試合に向けての監督・選手コメント

■下平隆宏監督
 
前節の山形戦は、見にきてくれた人、DAZNで観戦した人たちにとって何も得られなかったであろうゲームになってしまった。「チームを応援してくれる人の心を動かせるようなゲームをする」という今季の目標があった中で、今節の長崎戦はまた、観にきてくれた方々が心を揺さぶられるようなゲームをしなくてはならないと思っている。
 
長崎には外国籍選手が多く、4つの枠のどこに誰が入ってくるかによって日本人選手の起用が決まっているという印象。守備のところをもう一回締め直してハードワークしなくてはならない。
 
■MF 16 茂平
 
今節はめちゃくちゃ大事。前節の内容と結果を受けて長いミーティングを行い、自分たちの当初のコンセプトを再確認した。それもあって、練習を見ていてもだいぶ選手全員の意識が変わっていると思う。前節の大敗から中3日で、正直、心身のダメージはないとは言えないが、あとは戦う気持ち。みんなで前を向いて、絶対に勝つつもりで臨む。
 
ここを乗り越えてこそJ1昇格が見えてくると思うので、しっかりとリバウンドメンタリティーをもって、相手を圧倒して勝ちたい。
 
■FW 13 伊佐耕平
 
前節は前半のうちに苦しい展開にしてしまったので、どうにか追いついてほしいなという思いで全力で応援していた。やられたシーンも止めれなさそうな場面ではなく、紙一重のところをスルッと抜けられたというイメージだった。それ以外でも、その前のプレーだったりと原因はいろいろある。失点シーンはどうしても個人のところがクローズアップされてしまうのだが、僕は全然そういう考えではなく、そこに至るまでの一連のプレーの流れがピンチを招いていると思っている。チーム全体として、相手の戦術にやられたのもそうだし、完全に詰めが甘かった試合だった。
 
気持ちはすでに入っている。あとは体を動かさないとはじまらない。戦術的なところ以前の問題。前節、とんでもない試合をしてしまったので、取り返さなくてはならない。ただ、深刻に考えればいくらでも考えられるのだが、決して、いままで積み上げてきたものが全部崩れたわけではない。