まずは九州ダービーで決戦スタート。ピッチでもスタンドでも勝つのは青いチームだ
5位・大分が4位・熊本に挑む、最初の決戦。下位のディスアドバンテージを吹き飛ばす勢いで、サポーターが大分から隣県の敵地へと押し寄せる。それに後押しされて、チームはシンプルに勝利を目指すのみだ。
勝利には得点が必要。強い気持ちでゴールを目指せ
タフだったリーグ戦を5位でフィニッシュして、J1参入プレーオフ進出を決めたチーム。プレーオフの難しさを表すように、3位・岡山、4位・熊本、5位・大分の3チームが揃ってリーグ戦を2連敗フィニッシュした。一方で、山形は最終節で徳島との直接対決を制し土壇場で6位へと滑り込み。自動昇格を逃したこの4チームが最後の望みを懸けて“J2代表”の1枠を争う、そんなトーナメント方式の3試合がはじまる。目指すはその先にある、J1の16位チームとの入れ替え戦だ。
大分はその1回戦を、4位・熊本と戦う。リーグ最終節をともに敗れ、順位の入れ替わりがなかったため、会場はえがお健康スタジアム。上位の熊本が引き分けで勝ち抜けというアドバンテージを得ている。
勝たなくてはならない大分としては、リーグ戦ラスト2試合連続無得点が気になるところ。第40節に長沢駿、第41節に町田也真人と相次いで攻撃陣が試合中に負傷交代。第42節では途中出場で藤本一輝と渡邉新太が戦線復帰したが、悪天候で試合の流れもよくなかった中、どれだけ試合勘を高められたかは不明だ。上夷克典と松本怜のひさびさの出場も、布陣全体が低調なパフォーマンスに終始した。
そこから切り替えて、別の大会として挑むプレーオフ。不甲斐なさを噛み締めたリーグ戦を引きずらず、新たな気持ちで戦いたい。長沢や町田だけでなく、ここ最近は試合に絡む機会のなかったメンバーも含め、とにかく全員が最大値を出せるコンディションでいなくては、この昇格争いを最後まで戦い抜くことは難しい。
大木サッカーのパスワークに翻弄されるなかれ
同じくリーグ戦2連敗フィニッシュの熊本だが、ホームでの最終節・横浜FC戦は中村俊輔のラストゲームでもあり、2万1508人の観客が見守る中、激しい撃ち合いを演じて3-4での黒星。互いにスタイルを出し合って激突した試合で杉山直宏が2得点、高橋利樹が1得点と攻撃陣が仕事をしており、高橋は今季14得点、杉山は9得点でリーグ戦を終えた。
完成度を高めている大木武監督のスタイルを貫いて戦ったリーグ戦では戦力も固定気味で、おそらくプレーオフでもその戦い方は一貫したものになると予想されるが、気になるのは第41節から復帰したターレスらの動向だ。ゲームプランの重みの増す一発勝負となれば、あの大木監督もメンバーをイジってこないとは言い切れないのではないか。
激しいプレスと流動的なパスワークを武器に相手の立ち位置を見て隙を突く熊本に対し、こちらも積み上げてきたものを表現してぶつかりたい。とはいえ巧みなパスワークに翻弄されれば相手の思うツボで、下平隆宏監督は選手たちに、ボールを回されても動じないくらいの落ち着きを求める。下田北斗も「いい立ち位置を取ろうとしすぎればロストしたときにカウンターを受ける危険性があるのでバランスを考えて戦いたい」と話した。
ボールを握りたい攻撃的スタイル同士のマッチアップ。下平監督が「撃ち合い上等」と言ったことを受けて下田は「撃ち合いになるかもしれないし、ならないかもしれない。試合の流れによって、もう、なんでも上等」と腹を括っている様子を見せた。2012年J1昇格プレーオフ時には当時の青野浩志社長の「修羅場上等」という言葉が印象深かったが、今回のプレーオフではキャプテンの「なんでも上等」が象徴的だ。
サポーターも地元メディアも一丸で
決戦を4日後に控えた10月26日。オフ明けのグラウンドには早朝からサポーターが張り巡らしてくれた横断幕がトレーニングにいい緊張感をもたらしていた。
加えてNHK大分による中継でゲスト解説を務める片野坂知宏前監督が、取材のため約10ヶ月ぶりにグラウンドへ。その姿を目ざとく見つけていちばんに駆け寄ってきたのは高木駿だった。伊佐耕平や梅崎司ら選手たちが、そしてスタッフたちも挨拶に。下平監督は盟友の来訪に大喜びで、トレーニング開始前の円陣に前指揮官を招き入れ、選手たちへのスピーチを依頼していた。練習後にも2人の話し込む姿が見られ、おそらく心強いエールを送ってもらったと思われる。
勝たなくては目標を達成できない、負ければ何も残らない決戦。すでに大分からサポーターの大移動がはじまっている模様だ。九州ダービーにアウェイは存在しないと言わんばかりのトリサポたちに後押しされて、ただひたすらに勝ち上がることを目指すのみだ。