突然の敵将交代にも動揺なし。積み上げの手応えを信じて今季初の3連勝へ
青天の霹靂だった、対戦直前の敵将交代。スカウティングは難しくなったが、練度を高めた手応えが感じられるいま、自分たちの積み上げてきたものを表現し、今季初の3連勝で波に乗りたい。
4連敗中の仙台が振るった大ナタの影響
6日、仙台の指揮官交代が発表された。4連敗中とはいえ4位につけており、予期しなかったニュースだ。原崎政人前監督に代わって就任したのは、8月14日にJ1残留争い中の磐田で任を解かれたばかりの伊藤彰監督。「いままでの流れや原崎監督のやり方をスカウティングしてきたのに、これで仙台の出方がわからなくなった」と下平隆宏監督は頭を抱えた。
仙台での就任会見で「オファーがあったのは2日前」と明かした伊藤新監督。クラブの決断が急であったことが窺われる。チームに合流したのは7日で、移動も含め3日間の準備期間で初陣の大分戦というスケジュール。「この短期間でこれまでのやり方を大きく変えることはないのではないかと思うが、逆に若手起用などでガラリと変えてくる可能性もある」と下平監督は考えを巡らせる。敵将はトレーニング初日にグラウンドでボードを使って、自らの目指す攻撃的スタイルについて説いたそうだ。これが4連敗中の仙台への新たな刺激となって、いわゆる“監督交代ブースト”がかかるのか否か。フォギーニョと吉野恭平のボランチ2人が累積警告で出場停止ということもあり、予想はますます難しい。
その中で下平監督は「監督も替わられたことだし、相手云々というよりはわれわれが積み上げてきたものにしっかり磨きをかけて、さらに成長していけるよう準備したい」と方向性を整えた。
成長の兆しをさらに確かなものにするために
実際に、ここ数試合で、チームは成熟の手応えを感じさせている。軽い失点が多かった守備に対しても意識が高まり、現在は2戦連続無失点で連勝中だ。特に前節の新潟戦では、高い攻撃力を誇る相手をオーガナイズされた守備で封じている。いい守備からいい攻撃へと切り替える中で、得点はクロスに飛び込んだ中川寛斗の1点のみだったが、他にも複数の決定機を築いた。
過密日程に苦しんだシーズン前半戦の出遅れを取り戻すように、折り返し後は6勝6分1敗。勝ちきれずに分ける試合が続いた時期から、苦しい試合も勝ち切れるチームへと成長の兆しが見える。この兆しをさらに確かなものにするために、今節は今季初の3連勝で勢いに乗りたいところ。予期せぬ相手の指揮官交代はあったが、コロナ感染や負傷での急なメンバー交代も乗り越えてきたチームだ。短いプレシーズンや超過密日程の影響で下位に沈んでいた状況から、暫定とはいえJ1参入プレーオフ圏内まで、スローペースでも粘り強く順位を上げてきた底力がある。それを支えた一体感を信じて、シーズン終盤の心臓破りの坂を駆け上がりたい。
下平監督と伊藤監督とは、かつて柏と大宮でそれぞれU-18の監督を務めていた旧知の仲。アカデミー指導で切磋琢磨してトップチームの監督となったライバル関係だ。対戦時に柏ユースの選手の名を全員覚え、その個人名で大宮の選手たちに指示を出していたという伊藤監督のエピソードを引き合いに出し「非常に研究熱心」と評価する下平監督。今回の仙台への就任についても「この難しい状況で引き受けたエネルギーはリスペクトに値する」と言いつつ、「ただ、そんな個人的なことは抜きにして、今節は大分が上に行くためにシンプルに勝ちに行く」と闘志を燃やした。
仙台が連敗を4で止めるのか、大分が連勝を3に伸ばすのか。巷の注目度も高い一戦となる。自分たちの積み上げたものを信じ、それを存分に表現したい。
試合に向けての監督・選手コメント
■下平隆宏監督
われわれとしては自分たちに目を向けてやっていくことが重要。位置付けとしては相手はわれわれより上位だが、いまは自分たちが積み上げてきたものをいかに次のゲームでも発揮できるかが大事になる。監督も替わられたことだし相手云々というよりは、われわれが積み上げてきたものにしっかり磨きをかけて、さらに成長していけるよう準備したい。
今季スタートしてから、前節の新潟戦は非常に僕自身も手応えがあった。チームの規律とモラルが高かったし、いままで表現したかったものをしっかり選手たちが表現してくれて、結果に残してくれたゲームだった。そういう意味で、自分たちがやってきたことが成果として表れはじめたゲームだったと思う。ここまでも2連勝はあったが、なかなか3連勝して波に乗っていくことが出来なかった。今節の仙台戦で3連勝できるかどうかは大きく今後に関わってくるので、しっかり勝てるよう、チームが勢いづいていけるよう準備したい。
シーズン途中からだが僕もチームの一体感は大事にしていて、誰が出てもいいような準備をすると。こんなシーズンだし、コロナだったり怪我人が出る状況の中で、みんなが同じ戦術理解や戦い方を含め、誰が出てもいい準備をしていこうと言ってきた。逆に言えばメンバーを固定できずにきたところもあるのだが、それがいま誰が出てもいいようなかたちになってきているので、そういった意味ではチームの総合力が上がってきているかなと思う。
新潟戦に向けては1週間でいい準備が出来た手応えが、僕にも選手にもあった。その手応えの中で、選手たちが「これで行けるかも」と思えたことが大きかったと思う。守備といっても前から行く守備もあるし中盤でブロックを作る守備もあるし、最終ラインだけでしっかり守っていくというふうに、いろんな守備のやり方があると思うのだが、ひとつ、前から勇気を持っていくということをテーマにトライして、選手たちが実際に表現した。もちろんゲームなので相手が上回れば外されて押し込まれることもあったと思うのだが、それでも果敢に前から奪いに行き、中川寛斗がトーマス・デンのボールを引っ掛けてシュートまで持っていったシーンがあったり。前線の選手プラスダブルボランチの弓場と保田堅心も、…ケンシンという名前のとおり献身的に(笑)、だいぶ広いスペースを2人で守ってくれた。最終ラインの選手も、いままで課題だったラインコントロール、ラインバックを含めて、いままでやってきたことが形になってきたと思う。
ここから3連戦だが、いまはそれよりも目の前の一戦一戦と思っていて、今節の仙台戦だけに集中する。決勝トーナメントのつもりで戦っているので、ひとつ負けたらもう終わりくらいのつもりでやっている。まずは目の前の一戦に集中していきたい。
■MF 39 増山朝陽
仙台は攻撃力のあるチーム。ここ最近は勝てておらず状況はよくないかもしれないが、もともと持っている力は高いと思う。でも僕たちはいま調子がいいと思っているので、そういう相手をしっかり叩いて順位を上げていきたい。
遠藤さんたちは連係もよく攻撃のキーマンになると思うし、FWの富樫敬真くんもいいストライカー。いい守備で彼を抑えることが出来れば、いい攻撃にもつながる。自分たちはここ2試合は無失点なので、今節もいい守備からいい攻撃につなげられるようにしたい。
大分のサポーターはアウェイの行きにくい地域でもたくさんの人が応援に来てくれて、一緒に戦ってくれていることをすごく感じる。選手のことを尊重してくれている感じも伝わってくるので、僕たちはそれに応えるためにもっと頑張らなくてはならない。勝利を届けてサポーターたちとみんなで分かち合えたらしあわせなこと。今節もホームでしっかり勝ってみんなで喜びたい。