一丸となって今季4度目の連勝へ。7戦無敗の千葉をホームに迎え撃つ
1200人に上るトリサポに後押しされて、泥臭くとも制した九州ダービーから1週間。今季4度目の連勝を目指してホームに迎える相手は、7戦無敗と好調の千葉だ。
殻を破りつつあるチームがさらなる向上を目指す
「一体感」を前面に打ち出しはじめて数試合。前々節・栃木戦の悔しいドローをきっかけに選手たちの思いが噴き出すように、チームの雰囲気が変わった。栃木戦後のロッカールームで厳しい言葉を投げかけたのは最年長の梅崎司。呼応するように野村直輝らがそれに続いた。その3日後の天皇杯3回戦・G大阪戦で真っ先に仲間を鼓舞したのは中川寛斗。今季加入当初は率先して声を出していたが、チームも自身も結果がともなわないうちにトーンダウンしていた。柏アカデミー時代からの恩師・下平隆宏監督の選手たちへの要求に、もう一度パワーを出してそれに応えたかたちだ。
ここ数年、「おとなしい選手が多い」と選手たち自身が評してきたチーム。J1残留争い中は特に、勝利後のゴール裏で高木駿がどれだけ盛り上げてもなかなか追随するメンバーが出てこなかった。コロナ禍の影響もなかったとは言えないし、勝てない中で戦術的工夫に依存する比重が大きくなっていったこともあったかもしれない。一部の選手は「このチームでは声を出せば浮く」とまで感じていたという。そして多くの選手がその重苦しさを感じていたにもかかわらず、誰もそれを打開する術を持たなかった。いつしか「真面目」という個々の美徳が、積極性や仲間をフォローする意識の不足、責任回避へと反転した部分があったようだった。
スタートからの過密日程で連戦をこなしながら、今季就任した指揮官が「どうして勝負できる局面で勝負しないんだろう」「どうして声を出さないんだろう」と感じていた違和感の正体を突き止めるまでに3ヶ月が過ぎた。負傷離脱者続出の中、戦力をかき集めるようにして戦術を工夫しながら戦ってきたシーズン前半戦を振り返り、「最初から戦術のことばかり言い過ぎた」と率直に反省を口にした。
強度の高い選手が強度の高いサッカーをする千葉
だが、遅きに失したと言われるわけにはいかない。選手も監督もスタッフも、前節の熊本戦では見違えるような泥臭い戦いぶりを披露した。その後に報道陣に公開されたトレーニングでも、灼熱のグラウンドに選手たちの声が響いていた。声が出はじめたところで「ここからはコミュニケーションの質を高めていく」と下平監督。もとより戦術的素養はある程度培われているので、ベース部分の強化が進めばこのチームは強くなる可能性がある。
中川は「大分は去年までカタノサッカーでめちゃくちゃ上手くて、いいものがあるなと思っていた。今季から監督がシモさんに代わって、その上に積み上げるというところだったのだが、技術とベースの順序がたまたま逆だった。いまは誰かが盛り上げたことに対して他がついていく、そのいい刺激の連鎖が練習から出来ている」と力を込めた。ここからさらにテンションを上げつつ、勝点という現実の結果を求めていく。
そんなチームが今節ホームに迎えるのは、現在7戦無敗と好調の千葉だ。前回対戦の第13節には巧みな立ち位置を取り続ける大分が戦術的に上回って3-0で圧勝したが、その後に千葉も大分も戦い方を変えており、おそらく今回はまったく違った試合になる。前回対戦時は3-4-2-1だった千葉が第21節以降は4-4-2、逆に4-4-2だった大分が3-4-2-1と基本のフォーメーションも逆になった。もともと個々の強度の高いプレーヤーが揃っている千葉だが、その強度がより引き出されるようになっている。ベース部分の強化を目指す大分が、その千葉に対してどれだけインテンシティー高く戦えるか。
千葉は前節の東京V戦に3-1で勝利したものの、89分に守護神・新井章太が一発退場となったほか、熊谷アンドリューも累積警告で出場停止。ボランチには柏アカデミーでの下平監督の教え子で中川と同期の小林祐介が入る可能性もある。かつて大分でプレーした風間宏矢、ヴェルスパから羽ばたいた福満隆貴との再会も楽しみだが、なによりもいま変わろうとしているチームが気持ちを前面に出して戦い、昭和電工ドーム大分で勝利するところを見たい一戦だ。