TORITENトリテン

今節の見どころ

昨季もファイナルまでの道のりは長かった。今年の天皇杯はFC神楽しまね戦から

 

J2第19節・群馬戦でリーグ戦6試合ぶりの白星を挙げたチーム。敵地からの移動も含め中2日で天皇杯2回戦を迎える。戦力のやりくりと短時間での戦術の共有がカギになる一戦だ。

 

おそらく急造布陣となることは避け難い

今年も全国各地で天皇杯がはじまっている。大分の初戦は2回戦。相手は1回戦で長崎県代表・MD長崎を2-1で下した島根県代表・FC神楽しまねだ。
 
今大会では前年の準優勝チームという肩書きを背負っているが、昨季もリーグ戦の合間に戦力をやりくりしながら、苦しい試合を勝ち上がってファイナルに辿り着いたのだった。
 
J2で戦う今季はリーグ戦の試合数もJ1にいた昨季より多く、さらにルヴァンカップにも参戦して、スタートから前代未聞の過密日程。チームはいま連戦の疲労が蓄積し、負傷者も多く、満身創痍状態と言っても過言ではない状態にある。
 
その状態で迎える天皇杯初戦は、7連戦の6戦目だ。直近の公式戦であるJ2第19節・群馬戦(1○0)を終えて敵地からの移動も含め中2日。戦力が限られた中、U-18からも5人をメンバー登録しており、どのようなメンバーを組んでも急造布陣となることは避け難い。下平隆宏監督以下首脳陣がどのような戦術をいかにして短時間で落とし込むか、出場メンバーがどれだけそれを理解して個々のタスクを全う出来るか。
 
そのような状態でもジャイアント・キリングを許すわけにはいかない。むしろここまで来れば転んでもただでは起きないしたたかさを発揮して、戦術オプションの収穫さえ掴みたいところだ。
 

敵将は元“ミスター・ガイナーレ”

FC神楽しまねは、昨季まで「松江シティFC」を名乗っていたクラブ。直近のJFL第9節・ヴィアティン三重戦(0●1)から中3日で昭和電工ドーム大分へと乗り込んでくる。5月15日にはJFL第8節・ヴェルスパ大分戦でジェイリーススタジアムにやってきたばかりで、今年2度目の“アウェイ大分”だ。今季JFLではいまのところ15位と低迷しているが、昨季は過去最高の5位でシーズンを終えている。
 
今季はJFL昇格4シーズン目。2020年シーズンから指揮を執っているのは、Jリーグファンならよく知っているはずの、元“ミスター・ガイナーレ”実信憲明監督だ。背番号10で副キャプテンも務め、2011年と2012年にJ2で3度、大分戦に出場し、2011年J2第18節にはPKで得点も決めた。2012年J2第39節は大分が0-1で敗れ6位でのJ1昇格プレーオフ参戦が決まった、忘れ難い一戦でもある。
 
大分の節目の試合に絡んでいた人物は、プレーヤーにもいる。2016年J3優勝・J2昇格を決めたJ3最終節・鳥取戦(4○2)の、鳥取の2点目を決めたのが、MFの山本蓮だ。51分から途中出場して73分にミドルシュートを放ち、鈴木義宜に当たってコースが変わり決まったゴール。ちなみに山本のJリーグ初出場はその年の第3節・大分戦@大分銀行ドーム(当時)で、なにかと大分に縁が深い。
 
FWの遊馬将也とは秋田でプロデビューした2016年J3にホームとアウェイで対戦。第14節、第27節にいずれも途中出場している。アウェイでの第27節、伊佐耕平が退場した後に、当時の間瀬秀一監督が遊馬らを投入して前線にパワーをかけてきたことを忘れない。同じくMFの垣根拓也も2016年に岩手戦で対戦している。
 
中津東高時代に選手権出場経験を持つMF畝本諭は、卒業後にFC中津で4年、ヴェルスパで3年プレーして2020年から在籍。ヴェルスパ戦には帯同していなかったが、今回のメンバー入りはあるか否か。
 
他にも川崎Fで高木駿とチームメイトだったFW谷尾昂也、滝川二高で香川勇気の2年後輩の高畑智也、伊佐耕平の大阪体育大の1年先輩のDF馬場将大ら、ゆかりのあるプレーヤーが多数いる。ちなみにDF宮内真輝は藤本一輝と鹿屋体育大の同期だが、藤本が存在感を示した2019年天皇杯3回戦の大分戦では残念ながらメンバー外だった。
 
カテゴリーの差を超えて同じピッチで戦えるのも、天皇杯ならでは。その醍醐味も満喫しつつ、“格上”の意地を見せたい一戦だ。