1週間遅れの“開幕”はアウェイ甲府戦。試合を支配して確実にゴールを仕留めよ
予定より1週間遅れて、アウェイの地で大分の今季が開幕する。コロナ禍による第1節延期というアクシデントを乗り越え、チームは逸る気持ちを甲府戦にぶつける構えだ。
地震の次はウイルス。2度のアクシデントも乗り越える
「周りが試合をしている中で自分は家にいることに違和感があった」と坂圭祐は先週末を振り返った。翌日にホームでの開幕・水戸戦を控えた18日、コロナ禍による突然の開催中止決定。陽性判定者は少なかったが複数が濃厚接触者認定を受け、チームは24日まで活動停止となった。これにともない23日に予定されていたルヴァンカップグループステージ第1節の鹿島戦も中止に。
下平隆宏監督の下、新たな刺激を得て1年でのJ1復帰を目指すシーズン。始動から5日後、1月22日のキャンプイン当日の未明には地震に見舞われ、急遽、キャンプ期間を短縮せざるを得なくなった。昨季天皇杯を決勝まで戦ったため通常より1週短い5週間のプレシーズンに5試合予定していたトレーニングマッチが4試合になったが、アクシデントにもめげずにチームは戦術浸透に努め、開幕に向けて万全の準備を整えていた。
それだけに、今回の開幕戦中止は残念だが不運だったとしか言いようがない。活動停止期間が明けた24日午後には陰性判定となったメンバーが集まってグラウンドで体を起こし、25日には対甲府を想定した紅白戦。26日はトレーニングしてから敵地へと移動した。スタッフにも感染者が出ており、グラウンドに来ることの出来る者だけで仕事を回した。「甲府戦に向けての戦術的練習は出来たが動いていなかった期間があるのでコンディション面は100%ではないように見えた」(下平監督)。開幕に向け高めていたテンションが一旦折れたことがメンタルに及ぼす影響も懸念される。
さらに、J2第1節の水戸戦が3月9日、ルヴァンカップ鹿島戦が3月15日にリスケジュールされたことで、もとより過密だった日程がさらにハードスケジュールに。目の前の試合を戦える戦力でといった具合に総力で乗り切るしかないが、「逆に上手く波に乗れればワクワクした11連戦になると思う。勝って弾みをつけ、いいスタートダッシュを切れるよう、まずは今節の甲府戦が大事になる」と指揮官は前向きだ。
互いにボールを握るスタイルをゴールに結びつけるのはどちらか
「開幕できずに一度抑えられた思いを甲府戦に向けて爆発させるようにパワーを出そう」と下平監督は選手たちを焚きつけ、選手たちもそれに応えるように「早く試合がしたい」と意気込みを見せた。
さらに甲府は20日に開幕の岡山戦を戦っており、こちらはすでに相手を1試合見ることが出来たが、甲府にしてみれば今季の大分はいまだヴェールに包まれたままだ。1試合ぶんとはいえスカウティング面ではこちらのほうがやや有利な状況にある。もっとも、出場メンバー予想は双方とも難しい。大分はコロナ感染者2名に加え、プレシーズン終盤に複数の負傷者が発生しており、彼らの回復具合が気になるところ。一方の甲府も選手に5名の感染者が出ており負傷者の状況もわからないため、誰が出てくるかは霧の中だ。ちなみに大分サポーターたちも対戦を楽しみにしている三平和司は、開幕戦ではメンバー入りしていない。
ただ、大分も甲府もチームスタイルは非常に明確。現役時代に下平監督と柏でチームメイトだった時期があり、引退後も柏で指導者やフロントマンとして一緒に仕事をした吉田達磨監督は、下平監督と同じくポジショナルプレーの概念をベースとしたポゼッションスタイルを志向しており、開幕のアウェイ岡山戦は1-4での逆転負けとなったが、チームとしての意図はしっかりと体現していた印象だ。
ポゼッション志向のチーム同士のマッチアップ。おそらくボールの握り合いになるだろう。どちらが試合の流れを支配し、相手を動かしてゴールを陥れるか。吉田監督との対戦を楽しみにしているという下平監督も、譲れない思いをのぞかせる。
ちなみに下平監督と吉田監督とはリーグ戦で過去4度対戦している。最初は下平監督が柏、吉田監督が新潟を率いていた2016年J1の1stステージ第4節で、結果は2-2のドロー。その年の2ndステージ第1節では下平監督が1-0で勝利している。2017年には吉田監督は甲府で指揮を執り、J1第15節に柏と0-0で引き分け、第28節は0-1で甲府が勝利した。
「いまイーブンの戦績であれば勝ち越したいですね」と下平監督。「(吉田監督は)スタイルも変わりもっとボールを握ってフットボールをしたいという姿勢が見えるようになっているので、前回までのような対戦の図式にはならないだろうと思うが、蓋を開けてみなくてはわからないところもある」と“同志”でもある敵将を警戒しつつ、「対甲府というよりも自分たちのスタイルを発揮し、ボールを持って主導権を握り戦えるかどうかに焦点を絞っている。思い切り戦いたい」と健闘を誓った。
試合に向けての監督・選手コメント
■下平隆宏監督
選手たちのコンディションは極端に落ちたという感じもなかったが、やはり100%ではないように見えた。開幕戦に向けていい準備が出来ていたので中止になって出鼻を挫かれたような感じになったことは残念だったが、こればかりは仕方がない。中止になった開幕戦に向けていいかたちで準備していたものを今節しっかり爆発させようと、選手たちに話した。また新たな気持ちで開幕を迎えたい。個人的には早くゲームをやりたい。
吉田監督とはひさしぶりの対戦なので楽しみ。吉田監督らしいいいチームを作ってくると思う。甲府は開幕戦の結果は残念だったが狙っているものややっていること、ビルドアップから攻撃してハイプレスをかけたいんだろうなということはよく見えた。同じようなスタイルの中で、どちらがそれを貫いて勝ちに持っていけるかという試合になる。
側から見れば難しい状況だろうし、実際難しい状況だと思うが、わたし自身がいろんなことを試されていると思っている。つねに上手く順調にいくわけではなく、準備してきたが出来なかったなど、長いシーズンを考えてもいろいろあると思う。チーム力、クラブ力を一発目から試されていると感じている。試練を乗り越えることで、チームとしてさらに一丸となり、戦える集団になっていければと思う。
■DF 4 坂圭祐
コンディションは正直、未知数な部分が多い。ゲームをやってみないと本当のところはわからないが、練習した感じは悪くなかった。グラウンドではサッカーが出来る喜びを感じながらみんな楽しそうに練習していると感じた。活動停止期間があった割にはみんなも動けているのかなという印象。監督からは「いろんなことが起こりうる中で、もしかしたらまだ感染者が増えるかもしれないが、やれることをしっかりやっていこう」という話があった。開幕戦が中止になった鬱憤を爆発させようと言われた。みんな試合を楽しみにしていて「いよいよはじまるんだ」という気持ちでいる。
甲府は丁寧につなごうとしている印象。コンセプト的なものは大分と似ていると思う。勝機を見出すために大事なのは、しっかり自分たちがボールを握ることで、相手にボールを握らせないこと。相手が握ってきたらショートカウンターでゴールを取れるのが理想。
戦術浸透はしていると思うが、試合でどれだけ出せるかが大事。やるサッカー自体は大きく変わってはいないが、フォメが違うぶん見える風景は違う。個人的には、チームとしてボールを握る時間を長くしたい中で、自分の得意とするフィードなどでチャンスを作りたい。練習中もビルドアップにはこだわりたいとシモさん自身が言っていたし、求められることも多い。チャンスがあればどんどんフィードで狙っていいと言われているので出せるのではないかと思う。昨季はシーズンを通して試合に絡めなかったので、今季は試合に出続けたい。副キャプテンにも選んでもらったので、チームを引っ張る強い気持ちを持ってやり続けたい。