正真正銘のラストゲームは頂上決戦。満を持して国内最高峰の舞台に立て
狂熱の準決勝から1週間。チームはとうとう新国立競技場へとたどり着いた。最後に激突するのは強豪にして好敵手の浦和だ。それぞれの集大成を、この輝かしい舞台で成し遂げたい。
前日練習で新国立のピッチを確認
夜には冬の嵐が吹き荒れた翌18日の午後は快晴。国立競技場では浦和、大分の順で決勝前日練習が行われた。それぞれ冒頭15分を報道陣に公開。メニューとしてはウォーミングアップのみだったが、18名の登録メンバー、場合によってはプラスアルファの帯同メンバーも明かすことになる。
ピッチに出てきたときにはやや硬い表情に見えた選手たちも、体を動かすにつれ、心まで徐々にほぐれていったようだ。ときに明るい笑い声も聞かれた大分の練習は雰囲気上々。準決勝・川崎F戦で負傷し試合後には松葉杖姿でPK戦を見守っていたペレイラが帯同し、リラックスした様子で体を動かしていたことには少なからず驚いたが、その選択肢が増えればまた多彩な配置が可能となる。
練習後に会見に臨んだ片野坂知宏監督と高木駿によると、雰囲気は非常によくピッチ状態も素晴らしいとのこと。西陽が射し込む時間帯なのは気になるが、そのあたりも確認できていることだろう。
万感の思いはあれど、あくまでも本筋はサッカー
大分にとっては片野坂監督の最後の一戦で、当面J1での最後の試合。一方の浦和にとっても、阿部勇樹が現役を引退し、槙野智章と宇賀神友弥がチームを離れるなど、長年チームを支えてきたプレーヤーのラストゲームとなる。互いに“勝ちたい理由”があり、思いの強さにつながる決戦だ。
だが、片野坂監督はその部分を大事にしつつも、“サッカーという本筋”を貫く構えを崩さない。これまで続けてきたのと同様に、目の前の一戦で浦和に勝つための準備を施し、その上で思いの強さがプレー強度に拍車をかけることになればと考えている。
敵将・リカルド・ロドリゲスとは、彼が徳島を率いていた2017年、2018年のJ2でも対戦し、一度も勝利したことがなかった。今季、浦和の監督に就任してからは、第11節に2-3で逆転負けを喫したが、第22節には1-0で勝利。今季は苦しい戦いを強いられたが、片野坂監督にとって“天敵”ともいうべきロドリゲス監督とロティーナ 監督からともに初白星を挙げることが出来たシーズンでもあった。互いに相手を見て戦い方を変化させていく同士、この決戦でもおそらく緻密な駆け引きが繰り広げられることだろう。
それぞれの思いを抱いて決戦へ
そして、その難しかったシーズンに、浦和との2戦で計3得点を挙げた町田也真人。いの一番に来季へ向けて契約を更新し、強い気持ちを示した男は、決戦の日に32歳の誕生日を迎える。通常であればシーズン終了後の時期であり、これまでは自身の誕生日と公式戦が重なることはなかったのだが、昨季はコロナ禍の影響で日程がずれ込み、31歳の誕生日にJ1最終節が開催された。そのアウェイ鳥栖戦で、町田は自身のJ1初ゴールを挙げている。今年は天皇杯決勝だ。“浦和キラー”の本領発揮に期待したくなる。
大分での9シーズン目を終えようとしている松本怜にとっても、これは格別な一戦だ。2013年に期限付移籍加入後、J2降格、J3降格、J3優勝、J1自動昇格、そしてまたJ2降格と、激動の日々を送ってきた。2015年に完全移籍後も何度か移籍の機会はあったのだが、毎回、大分でプレーすることを選び、プロ人生の大半を大分で過ごしている道産子。ACL出場をサッカー選手としての目標にしてきたことを2年前に明かし、それを大分で叶えたいと公言した。その目標にいま、あと一歩で手が届くところまで来ている。
それぞれの思い、また指揮官への餞としても、勝ちたい。そのモチベーションがプレー強度を少しずつ高めつつ、チームはいつもどおり戦術の狙いを合わせ、組織で一体となって目の前の試合に挑む。