新国立の前に、立ちはだかる壁。連覇を狙うリーグ王者に総力戦で戦いを
4日にリーグ最終節を終えて中1週間。チームは等々力陸上競技場で天皇杯準決勝・川崎F戦に挑む。負ければこれが今季のラストゲーム。勝てばその先には、新国立競技場での決勝戦が待っている。
不本意な今季もリーグ戦は2連勝フィニッシュ
コロナ禍の影響により4チームが降格と定められた今季、降格圏の18位でリーグ戦は終了した。終盤近くなるまで今季の戦い方を手探り続けた過密日程の中、戦力をターンオーバーしながら勝ち上がってきた天皇杯。不本意な戦績に終わったリーグ戦の最終節から8日後、チームは意地を懸けて準決勝に挑む。
降格が確定したJ1第36節・鹿島戦の後、ホーム最終戦の第37節・横浜FC戦と、アウェイでの最終節・柏戦を2連勝。これまでの凝り固まったような感じから解き放たれたように、のびやかでアグレッシブな戦いぶりを披露し、特に柏戦ではチームが本来目指してきた形でチャンスを多く作り、得点も奪った。
試合後に下田北斗は「降格が決まってしまったことでみんなプレッシャーがなくなって自信を持ってプレーできているのかなと、正直思っている」と複雑な胸の内を吐露。キャプテンの高木駿は「この2試合で、サッカーって難しいなとつくづく思った。プレッシャーがなくなったのは事実だし、これが出来なかったかなーと思うし。みんな思うことは一緒だったのか、自然と全員がそう思うと、ちょっとずつリスクを冒す、きわどい、相手にとって嫌なプレーになっていって、その結果、チームとしていいプレーになっているというか。いろんなものの積み重ねでああいうふうになると思う。モヤモヤしたものが全部なくなって『やるしかない』というすがすがしい気持ちで臨んだ結果、ああいうふうになったのかと思う」とチーム状態を分析した。
準決勝で古巣に挑む二人はもちろん、他の選手たちにも期するところはあるだろう。片野坂知宏監督にとっても、負ければこの試合が大分でのラストゲーム。出来ることなら最後まで勝ち続けて大分での采配を終えたいはずだ。
総力戦で新たな希望を感じさせる戦いを
ただ、天皇杯では選手起用に制限がある。夏に加入した梅崎司、呉屋大翔、増山朝陽、野嶽惇也の4人は前所属チームですでに天皇杯に出場しているため、大分でメンバー入りできない。負傷の梅崎を除く3人はリーグ戦終盤に存在感を発揮していただけに残念だ。さらに刀根亮輔も累積警告で出場停止。選手層が限られればゲームプランの幅も狭まってしまう。
それでも、ここまで勝ち上がってきた試合も総力戦だったことを思えば、リーグ戦で出場機会に恵まれずにいた選手たちの奮起にも期待できる。準々決勝の磐田戦では、経験値は決して高くないが藤本一輝や井上健太も可能性を感じさせた。あれからチームとしての成熟度も高まった中で、彼ら若手を含め出場メンバーが具体的な成果を挙げれば、来季の戦いに向けても明るい材料となる。
今季もリーグ優勝を遂げた川崎Fは、天皇杯も前回大会との連覇を狙っていることだろう。ジェジエウは負傷してすでに帰国したが、それを補って余りある層の厚さで強度は落ちない。優勝決定後は鳥栖戦で3バックを試すなど新たなオプションの可能性も垣間見せたが、王者は王者らしく自分たちのやり方を貫いてくるだろうと、リスペクトを込めて片野坂監督は引き締まった表情を見せた。
不本意だったシーズン、せめてラストは勝って終われるように。次の1試合へとつなげるために、川崎Fという高い壁を粉砕したい。
試合に向けての監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
降格が決まってからの2試合をしっかり勝ち切って、リーグ戦の最後をいい形で締めくくることが出来た。まずはサポーターに勝利をプレゼントできてよかった。選手が降格が決まって悔しく残念な思いがある中で、しっかり切り替えて次に向け、目の前の試合に対していい準備をしてくれたからこそ、そして今後の自分の成長に向けて矢印を向けてやってくれたからこその結果だと思う。選手全員がファン、サポーターへの今季の感謝をピッチで表現し、結果で示してくれたこともすごくうれしい。タイトルのかかる天皇杯に向け弾みのつく試合が出来た。
その姿勢を、まずは目の前の準決勝に向け、継続して切らさずに準備しようと選手たちに話した。リーグ戦チャンピオン、そして前年チャンピオンの川崎Fさんが相手なので、簡単なゲームにはならないと思うが、われわれらしい戦いが出来るように集中していい成果を出せるよう頑張ろうと話をした。
ベスト4まで勝ち上がったのはクラブとして初めてで、これも選手のおかげ。リーグ戦の合間に準備して、メンバーが替わった中でも結果を出してくれて、みんなで勝ち取ったベスト4だと思う。ここまでのチャレンジをまたさらに、タイトルが取れるところまで行けるように。われわれはチャレンジャーとして、全員で、最後に最高の結果でファン、サポーターに喜んでもらえるよう、そして胸にもうひとつ星がつくような形で終われることは最高だと思うので、そういう結果になるように、まずは川崎Fさんに勝ち上がれるようチャレンジしていきたい。
■GK 1 高木駿
リーグ戦は降格が決まってからしっかり気持ちを切り替え、プレッシャーがなくなったところで自分たちのプレーをして2試合で結果を出せた。最後はプレッシャーがなくなり、自分たちでチャレンジしていい試合が出来たかもしれないが、それまでの試合でプレッシャーに打ち勝てずになかなかチャレンジできず、得点も取れなかったりしていたので、1年を通して難しいシーズンだった。
残留争いに巻き込まれていなくても、今季は難しかったかもしれないと思う。それが1年通しての課題だった。積み上げの部分でなかなか上手くいかず、選手が替わったことでやり方を変えたりと、いろんなアプローチがあり、みんなで合わせてやろうとはしていたのだが、なかなかそれが結果につながらなかった。
天皇杯には、失うものはもう何もなく100%チャレンジャーという気持ちで臨める。いい流れでぶつかっていきたい。僕たちが川崎Fに勝てるとしたら、そういう勢いだとか、何も失うものがないというメンタルだと思うので、川崎Fがやりにくいと思うような流れに持っていきたい。割り切って勝負を挑んでいく。
古巣の川崎Fと対戦するのはいつもすごく楽しいし、ましてや等々力で試合をするときには本当に試合中もずっと楽しくてワクワクしながらプレーできている。対戦できる機会を勝ち取れたので、本当に楽しみにしている。
川崎Fは毎年強い。本当にブレない強さがある。技術や経験の自信もそうだし、勝ち続けていたり優勝を何度も経験していたりという目に見えない自信が、チーム全体にあると思う。そういうところでブレないし崩れない。勝ち方を知っている、ものすごく強いチーム。若くフレッシュな選手も次々に出てきて、選手層も厚い。ベテランもしっかりしているし、穴がない、完成されたチームだと思う。そこにぶち当たっていきたい。