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今節の見どころ

来季はJ2で対峙する両軍のマッチアップ。ホーム最終戦に大分のプライドを

 

J2降格という結果は不本意だが、単なる消化試合とはしたくない。これまで目指してきたものを最後まで目指し続けて、今季ホーム最終戦を白星で飾りたい。

 

今季最後のホームゲーム。勝点3を

前節の結果をもって、J2降格が確定した。試合前日には、6シーズンにわたりチームを率いJ3からJ1にまで昇格を遂げた片野坂知宏監督の今季かぎりでの退任も発表された。2019年からはじまった、6シーズンぶりの大分のJ1チャレンジは、また仕切り直しとなる。
 
最後まで降格圏を脱出できず不本意な結果となった今季のリーグ戦は、今節を入れてあと2試合。しかも今節の相手は、同じく前節、J2降格が決まった横浜FCだ。一般的にはいわゆる“消化試合”と呼ばれるシチュエーションだが、選手たちはプロチームとしての意地とプライドを損なわず、全力で勝ちにいくと口を揃える。勝ったときも負けたときも、試合後会見ではまず最初に、応援してくれたファンやサポーターへの感謝や謝罪を述べ続けた片野坂監督も、最後のホームゲームで勝点3をプレゼントしたいと、周到に準備しているはずだ。
 
ここでチームがどういう戦い方をするのかは興味深いところ。前節はアウェイで強豪・鹿島との力量差を前提とした慎重な戦法で、90分間の試合の流れやパワーバランスを読みながら攻守のバランスを緻密に取ると、ラスト10分で攻撃にパワーを懸けた。結果的にチャンスの芽は見えたものの、得点を奪うまでの強度を出すことは出来ず、逆に押し込まれて高木駿のビッグセーブなどでしのぎ、試合を0-0で終えている。
 
勝たなくては降格が決まる可能性があるという状況で、好調の鹿島を相手に勝機を見出すために選んだ覚悟の策だった。J1昇格後の片野坂監督は、戦術的に相手に対策されチームの地力の差が見えはじめてからは、勝点を得るために、徐々にバランスを守備に傾ける戦い方を選んできた。が、4人の2桁得点者を出し2018年J2で体現した理想の攻撃的スタイルを封印することに、自身の中でもジレンマは感じていたという。
 
今節はすでに降格が決定している。リスクを負ってでものびのびと攻撃に軸足を近づけたサッカーを見たい気もする。だが、負ければ最下位に転落する可能性もあり、やはりホーム最終節という大事な一戦を勝利で飾りたい。
 

自分たちの選択へのプライドを懸けて

さらに、降格圏脱出のための夏の補強を、大分と横浜FCは真逆の方向性で行った。大分は過去に積み上げてきた組織の要所を強化する狙いで、Jリーグでの経験豊富な4人の即戦力を獲得。横浜FCは5人の外国籍選手の“助っ人パワー”に賭けた。そのうちJリーグ経験を持つのはアルトゥール・シルバのみだった。「あくまでも健全経営を」と今季の予算の範囲内にとどめた大分と、新たに多額の強化費を上乗せした横浜FCの、クラブとしての選択にも大きな相違が見られた。
 
その方針の差について片野坂監督は「うらやましいですね」と本音ものぞかせつつ、「われわれはとにかく予算の範囲を守り、今季獲得した2人の外国籍選手もコロナ禍の影響で合流が遅れた中で、一歩一歩トレーニングから積み上げてやっとチームに安定感が出てきた」と、許された条件下でベストを尽くしてきたことを自負する。
 
結果的にはそれぞれチームに刺激はもたらされながら、両軍ともにJ1残留を果たすことは出来なかった。が、横浜FCの外国籍選手たちはやはり強力で、巻き返しの原動力として目に見える結果を出している。加入後4得点を挙げているサウロ・ミネイロは前節欠場したが、ガブリエウが復帰。神戸から得点を奪うことは出来なかったが、外国籍選手を軸に相手を上回る場面は多く作った。
 
「相手の外国籍選手は強力なので簡単にはいかないだろうが、サッカーは個の力の部分だけで勝負が決まるのではないというところを、われわれが勝って証明しなくてはならない」と片野坂監督。リーグ戦終了後には天皇杯も控えているが、まずは横浜FCに勝利することだけを考えてこれまでどおり準備すると話した。
 
悔しさだけでは終わらせず、なんらかの成果を。選手個々としてもチームとしても、監督以下スタッフも全員、それぞれに何かを得る、そしてチームを支えるすべての人たちに、何かをプレゼントできる一戦としたい。