上り調子で迎える決戦。降格圏でしのぎ合う仙台から“勝点6”を奪え
ともに降格圏、勝点1差でしのぎ合う好敵手・仙台とのマッチアップ。J1生き残りを懸けて、絶対に落とせない一戦だ。
戦術浸透の手応えが勝点に結びつきはじめている
リーグ戦残り7試合。4チームがJ2自動降格という厳しいレギュレーションの下、残留争いは熾烈を極める。現在は最下位の横浜FCから13位の柏までが勝点12差の中にひしめきあう状況。我が軍は勝点24で18位につけている。
前節のC大阪戦は先に行われた他会場の試合で、残留争いのライバルたちが軒並み勝点を積んだ中、暫定最下位で最後にキックオフするというシチュエーション。日頃から「順位や状況に関係なく目の前の一戦に最大値を出して臨む」ことを意識してはいても、さすがにプレッシャーがかかる状況だった。だが、チームは先手必勝とばかりに立ち上がりから積極的にゴールを目指し、狙いどおりにサイドから多くの好機を築いて、そのうちのひとつで香川勇気のクロスから町田也真人が今季6ゴール目。終始アグレッシブに攻め、逆に相手の決定機も多い展開となったが、ファインセーブ連発の高木駿を中心に粘り強く集中した守備で無失点に抑えた。
片野坂知宏監督体制で、C大阪とのリーグ戦では初得点初勝利。タフな連戦の中、ここまで苦しい時期を過ごしてきたチームが、苦しみながら積み上げてきたものを、勝点に結びつけることが出来るようになってきた。指揮官は「ある程度選手に判断を任せられるくらいにまで戦術の落とし込みが出来てきたので、選手の自主性に任せるようなアプローチも少しずつ多くなっている」と、チーム成熟の手応えを口にしている。
残留圏の16位・徳島との勝点5差を追って、ここから着実に勝点を積んでいけるか。上手くいかない時期も堅実に積み上げてきたチームが、底力を発揮するときだ。
3戦未勝利の仙台だが練習試合では岩手に圧勝
今節、そんなヒリヒリする状況でホームに迎えるのは19位の仙台。勝点差はわずかに1で、やはり降格圏からの脱出を目指し必死に戦っている相手だ。大分はここまでリーグワーストの21得点、仙台はブービーの24得点。失点数も大分が48、仙台が50で18位と19位に並んでおり、ここまでの戦いの厳しさが数字に表れている。
仙台は現在、3戦未勝利状態だが、この中断期間に公開でJ3岩手と行ったトレーニングマッチには5-0で圧勝。今季は出場機会を得られずにきた佐々木匠が2得点するなど奮起をアピールしている。それを踏まえて今節、メンバーの入れ替えはあるか否か。もとより実力派揃いの攻撃陣が多く、決して油断の許されない相手だ。こちらも安定感を増した守備を継続しなくてはならない。また、前々節の名古屋、前節のC大阪と4バックの相手に対し上手くサイドを起点に攻めることが出来ていたが、仙台は守備の枚数を合わせてきたりもする。今夏には片野坂監督のサッカーをよく知る福森直也も守備陣に加わった。十分に攻略法を共有して崩しにいきたい。
大分は次節がアウェイで徳島。その後、天皇杯準々決勝・磐田戦をはさんで第34節がアウェイ福岡、第35節がホームG大阪。第36節はアウェイで鹿島、ホーム最終戦となる第37節は横浜FC、最終節は柏と、残り7試合のうち実に5試合が、残留争い中のチームとの直接対決となる。この6ポイントマッチで確実に白星を重ねていけば、J1残留の可能性をぐっと引き寄せることが出来る。
直接対決への切実さは相手も同じで、心理戦にもなってくるだろう。それも踏まえて指揮官たちがどういうゲームプランを準備し、どの戦力を起用するか。小出悠太は「プロとしてはやるべきことをやってその状況を楽しむくらいの気持ちを作ることも大事」と強い気持ちを見せる。積み上げてきたものを信じ、上り調子の手応えを今節も勝点へと結実させるのみだ。
試合に向けての監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
いま全体的にも集中して粘り強く戦えている。トレーニングでもそういう部分が見受けられるし、選手も集中して強度と質を上げつつ合わせていく姿勢でチャレンジしてくれている。雰囲気はいい。
仙台さんは前節の柏戦を見ていても、全員が規律正しくハードワークして戦ってくる。隙を狙ってくるところもあるし、得点できる選手、つねにゴールを狙っている選手がいて、一瞬でも後手に回ると失点する可能性がある。われわれは全体の守備の意識が高まっており全員が粘り強く体を張るというところを、ピッチに出ている全員が意識している。攻撃の狙いも共有して戦えているので、そういったゲームを仙台戦でも出来るよう、簡単な相手ではないが、われわれも勝点3を取れるようにしたい。
仙台さんにはアウェイでの前回対戦で逆転負けした悔しい思いが残っている。僕の中でもそのリベンジをホームでしなくてはならないと覚悟をもって戦う。両チームとも降格圏にいて互いに勝点3が欲しいゲームになると思うが、われわれはホームで前回対戦を踏まえての思い、そして上を目指す中で、勝点3を取るゲームが出来るように、そして前節のC大阪戦同様、ホームで喜びあいたい。
■DF 15 小出悠太
前節は残留争いしている他の下位チームも多く勝利していたので負けられない試合だったが、自分たちもひとつ勝利できて次につながった。一試合ごとの大事さは選手みんなが口にしなくてもわかっている。やるしかないという雰囲気が練習から伝わってきている。
ひとつひとつのプレーへの責任感や負けられない気持ちがゴール前での守備の厳しさに表れてきていると思う。そういった中で、攻撃の最後の質の部分についても、練習からお互いに要求しあって追求している。ベースの部分は個人個人で要求しあっている中で、特に自分はゴール前の守備や球際を意識できるよう声をかけあってやっていきたい。
仙台さんも僕たちと同じく気持ちのこもったプレーをしてくると思うので、ベースの部分でこちらも負けないように、またゴール前の気迫を強く持ちたい。相手がどうこうというよりも自分たちがどういうプレーをするか。いつもどおり、いつも以上のプレーをすることが大事になる。
サポーターも声が出せない中で出してくれている横断幕を見ると、勝たなくてはならないという気持ちになる。その後押しは非常に大きい。それに見合うようなプレーを見せて、それを結果につなげていきたい。チームのため、サポーターのみなさんのために絶対に勝たなくてはならないと思っている。それをプレッシャーと呼ぶのかもしれないが、プロとしてはやるべきことをやってその状況を楽しむくらいの気持ちを作ることも大事なので、いい気持ちの作り方をして試合に臨みたい。