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今節の見どころ

起死回生の11試合へ。まずは新体制の15位・湘南を迎え撃つ

 

新戦力加入や戦術変更で巻き返しを図る大分と、指揮官交代で刺激を入れた湘南。現在20位と15位で勝点差は9。ひりひりする残留争いの一戦だ。

 

90分間のゲームマネジメントを意識させた

代表ウィークによる中断期間が明け、リーグはいよいよ最終盤へと突入する。現時点で残留圏との勝点差は9。起死回生への残り11試合のスタートだ。
 
アウェイ連戦も含め中2日が3回というタフな5連戦のラスト、前節の広島戦から2週間。今後は連戦も少なくなり、チームは週1試合ペースを整えるように、先週末には90分の紅白戦を実施し、ゲーム体力を維持した。
 
この紅白戦には他に、連戦で出た課題の克服という意図も課されていた。東京五輪による中断明けから川崎F、横浜FM、神戸といった攻撃力の高い上位チームとの対戦が続く中で、相手とのパワーバランスも考慮して、チームはこれまでのスタイルとは異なるストーミングを採用。前線から激しくプレッシャーをかけ、素早く切り替える戦法で勢いを醸し出した。
 
その戦法には手応えも感じられたが、連戦中ということもあり、チームとしての意思疎通不足も露呈。特に逆転され追撃のためにバランスを崩さねばならなくなる展開が多く、前がかりになった背後を突かれて大量失点する試合が続いた。片野坂知宏監督はその要因をゲームマネジメントの不備に挙げる。スコア状況や試合の流れ、時間帯や疲労度によって、激しく奪いにいくほうがいいのかボールを落ち着かせたほうがいいのかといったプレー選択を、組織的に行う必要がある。この中断期間にはミーティングやゲーム形式のメニューを通じ、そのあたりの共通認識を深めた。異例の90分の紅白戦では、ゲームマネジメントも特に意識させたという。
 

セットプレーを含め決定機の重みはさらに増す

いずれももっと早い時期に浸透させておくべきテーマだとは思うが、新型コロナウイルス禍による連戦続きの日程の中、主力が大幅に入れ替わった今季のチームの基礎を築くのに手間取った。負傷やコンディション不良による離脱者が出ることはある程度は想定内だったが、夏の新戦力を加えた後の戦術変更もあり、対相手戦術の共有だけで精一杯となる連戦の隙を見て、戦い方を整理しながら苦しい時期を過ごしてきた。
 
その中で、PK失敗を含む決定機逸による勝点の取りこぼしは非常に痛かった。徐々に組織が成熟し好機の数は増えているので、ここからは一層、ワンプレーの質にこだわりたい。課題だったセットプレーからの得点は取れはじめているが、流れからも仕留められるようにならなくては、複数得点は難しいだろう。
 
非公開で行われているトレーニングの雰囲気は「みんな危機感を感じていて、厳しい声が飛び、球際も激しい」と高木駿キャプテン。経験豊富な選手を中心に、それぞれのキャラクターや性格ごとにチームを鼓舞しているというが、中でも小林裕紀や下田北斗の声かけは戦術浸透の上で具体的な貢献が大きそうだ。
 

あの闘将がついに湘南でテクニカルエリアに立つ

こちらが新戦力と戦術変更により巻き返しを図る一方で、今節対戦する湘南は9月1日、浮嶋敏監督から山口智監督への指揮官交代という大きな刺激を加えた。山口新監督は現役時代、G大阪や千葉のディフェンスリーダーとして活躍し、大分との対戦でも何度も存在感を発揮してきた闘将タイプだ。千葉で山口監督とチームメイトだった高木は「サッカーIQが高い」と警戒しつつ、やはり千葉でともにプレーした町田也真人とも、その厳しかった記憶を語り合ったという。
 
大分戦が初対戦となるため、新指揮官が従来の“湘南スタイル”にどのような色付けをしてくるかは蓋を開けてみなくてはわからない。やはり現役時代にチームメイトだったり、コーチと選手としてともに戦ったりした経験のある片野坂監督は「アグレッシブにハードワークするスタイルに、G大阪時代に身につけた攻撃のアイデアなどを加えてくるのではないか」と読む。
 
だからこそなおさら、相手との駆け引きの中で、柔軟な戦い方が出来るようにしておきたい。相手は15位だが、降格4枠からはまだまだ安全圏とは言い難い。逆に言えば転覆の可能性は十分にあるということだ。