2021年はホームで開幕。今季の大分トリニータがいよいよ姿を現す
今週末、いよいよ2021年のJリーグが開幕する。大分は2月27日、ホーム・昭和電工ドーム大分に昇格組・徳島を迎えて14時キックオフ。片野坂監督体制6年目、J1で3年目のシーズンは、例年以上にタフな戦いになりそうだ。
基本は変わらないが新戦力が変化をもたらす
昨季までチームスタイルを体現してきたキーマンが複数移籍し、片野坂知宏監督が指揮を執るようになって初めて、大幅に主力が入れ替わることになった。プレシーズンはほぼ完全非公開で準備を進めていたため、今季のチームの姿はベールに覆われたままだ。新たにチームに加わった12名の新戦力のフィット度合や彼らが入ることによってもたらされた化学変化も、想像するしかなかった。そのチームがついに、今季初の公式戦で姿を披露する。
例年ならば都内で一堂に会して行われるキックオフカンファレンスがコロナ禍のため開催できず、今季は代わりにJリーグ主催の下に、開幕カードごとのオンライン記者会見が実施された。会見を終えた片野坂監督は「毎年、東京の会場に移動して顔を合わせ、いろいろと情報交換したりもするのですが、大分から日帰りでも1日練習を休まなくてはならないので、リモートも悪くないなと思いました」と、寸暇を惜しんで準備したい姿勢もあらわに笑顔を見せたが、記者会見の最中には緊張した面持ち。記者の質問にうっかり気前よく答えてしまったら、情報戦にそなえて漏洩をブロックしてきた努力が水の泡となってしまう。
これまでに監督や選手たちが取材を通じて明かしたところから大まかに読み取れるのは、「戦力は大幅に入れ替わったがチームスタイルのベースは変わらない」「チーム事情や対相手の狙いによってシステムを含めオプションは複数用意しておきたい」といった断片的なこと。要は「ブレていない」ということくらいしかわからない。
ただ、ベースが変わらなくてもプレーヤーが替わればピッチ上で表現されるものは変わってくる。また、実際に新しい要素を取り入れている様子もあるようだ。ルヴァンカップも合わせ開幕から怒涛の連戦となる中、コンディションの良好な戦力を組み合わせつつ、対相手戦術の狙いにそってどのような選手起用がなされていくかも見守りたい。
昨季までの積み上げが強固な難敵・徳島
開幕戦の相手は昨季J2で最後まで福岡と競いながら優勝し、7シーズンぶりのJ1復帰を果たした徳島。17年から指揮を執ったリカルド・ロドリゲス監督が時間をかけて浸透させたスタイルが根付き、年々その根幹を太くしてきた印象だ。
かつて大分にとって徳島は相性のいい相手だったのだが、ロドリゲス監督が率いるようになってからの対戦は、なんと4戦全敗。2017年J2第4節は前半の劣勢を後半の修正で押し戻すも0-1、第41節には好ゲームを演じながら最後に渡大生に決められて0-1で敗れプレーオフ進出を逃した。2018年J2第21節は4連敗中の徳島にこれまでとは一転する守備を固めた戦い方で0-3と押さえ込まれ、第30節は終始ペースを握りながら決めきれず、逆にワンチャンスを決められて0-1で敗れている。決定機やいい形は作れたにもかかわらずそこ止まりで、4戦とも0封されているのがなんとも無念だ。
その徳島を作ったロドリゲス監督は今季から浦和の指揮官に就任。後任は同じくスペイン生まれのダニエル・ポヤトス監督だが、コロナ禍の影響でいまだ来日できていない。現在はリモートでミーティングを行いながら甲本偉嗣ヘッドコーチが現場の指揮を執っている。
通常であれば指揮官不在は大きなディスアドバンテージになりそうなところだが、このチームであればそれほどでもないのではないかと思えてしまうあたりも徳島のタフなところだ。19年に徳島でJ1参入プレーオフファイナルまで戦った野村直輝は証言する。
「徳島は岩尾憲を中心に選手主導でピッチ内に変化をもたらせる選手が集まっている。僕も一緒にやっていたので彼らの考え方はよくわかる。新しい監督のサッカーはわからないが、一体感があるチームなので、どういうサッカーをしてくるかが楽しみ」
昨季までの主力が残留し、チームの骨格はJ2優勝の勢いを保っている。ピッチ上の監督と呼ばれる岩尾、18年第30節に決勝点を奪った小西雄大、厄介なトップ下の渡井理己、積極果敢に仕掛ける西谷和希、昨季J2で17得点の垣田裕暉。そしてゴールマウスを守るのは、大分の生え抜き・上福元直人だ。今季はそこに藤田譲瑠チマや宮代大聖が加わった。
ポヤトス新監督がもたらす新たな要素も浸透させつつ、昨季までのベースを生かせば十分に戦える。しかも指揮を執る甲本ヘッドコーチは11年から計5人の監督の下で仕事をしてきた人だ。難しい相手になることは間違いない。
スタート時の練度でどれだけ表現できるか
後方からしっかりとビルドアップし、相手の動きを見ながら前進していくという共通点を持つ両軍だが、どちらかというと大分のほうが攻守の狙いの形が明確で、徳島のほうがフレキシブルな印象を受ける。
「狙いを明確にしてスピードと精度を上げていきたい。それが相手にわかれば管理される可能性もあるが、スピードで上回れれば、いい展開に持ち込めるのではないか」と片野坂監督。昨季も辛抱強くそれにトライし、シーズン終盤にはいろいろな狙いを表現して好ゲームを繰り広げたが、多くの主力が入れ替わった今季、スタート時期にどれだけその狙いをピッチに描き出せるか。
リーグ開幕戦を終えれば中2日ですぐにルヴァンカップの開幕戦、こちらもホーム。さらに中3日でリーグ第2節、次も中3日でアウェイ連戦と続き、3月21日のJ1第6節広島戦まで息つく間もない7連戦だ。勢いをもって乗り切るためにも初戦は是非勝利したい。