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今節の見どころ

しんどかった今季のラストゲームは九州ダービー。寒波を忘れさせる熱い勝利を

 

新型コロナウイルス禍に苛まれ、心身ともにタフさを求められた今季も、ついに最終節。12月も下旬に入ろうとする極寒の週末、チームはサポーターの応援を背負って、鳥栖と九州ダービーの火花を散らす。

 

悔いなく全力をぶつけたい最終節

開幕直後の突然の中断、真夏の再開。リーグを成立させるための、前代未聞の過密日程。PCR検査が定期的に行われ、対戦相手に陽性反応が出ればその都度、日程が変更されて、わずかなオフに自由に出かけてリフレッシュすることも許されない。心身のコンディションやモチベーションや集中力の維持が、チームにとっては本当に難しい1年だったと思う。
 
やはりコロナ禍の影響でシーズンラストが急遽、怒涛の5連戦となったのも衝撃だった。通常は12月初旬に最終節を終えるところを、そろそろ年の瀬と呼ぶべきこんな時期にまで、ナイトゲームを戦わなくてはならないという現実。コロナ禍はクラブ経営にも影を落とし、今季はあちこちのチームで、驚くような選手の契約満了の発表が相次いだ。大分もそうだ。多くのサポーターに愛される4人の選手たちとの別れを惜しんだホーム最終戦のあとに、アウェイ2連戦を戦うという日程も、例年にはなかなかないものだ。
 
そんなしんどいシーズンが、今節で終了する。前節のアウェイ湘南戦に6試合ぶりに勝利して、中3日での鳥栖戦。九州ダービーということもあり、コロナ禍の中、スタジアムに駆けつけるサポーターも多いはずだ。歯を食いしばって頑張った日々のラストに、その間に感じたもどかしさや悔しさやつらさをすべてぶつけるように、ピッチでもスタンドでも全力を出したい。
 

前節は鳥栖も劇的勝利を遂げている

第28節の川崎F戦に1-0で勝利したあと3戦無得点。その後に延期開催された第27節の柏戦では岩田智輝が終了間際に起死回生の同点弾を挙げたが、奮闘はしていても得点という結果を出せていない前線の選手たちに、重い課題が突きつけられていた。そこから、前々節は知念慶を起点に町田也真人が絡んで野村直輝が先制弾で札幌とドロー。前節は伊佐耕平が1ゴール1アシスト、髙澤優也も第20節以来の得点を挙げるなど攻撃陣が奮起して逆転勝利した。自身の得点はないが知念の貢献度も高い。片野坂知宏監督も試合後に「前線の選手が得点するのはやはりいいこと」と評価した。
 
試合自体は、立ち上がりから狙いが上手く機能せず苦しい展開となったが、7試合ぶりの複数得点での逆転勝利。この勢いを最終節につなげたいところ。
 
ただ、一方の鳥栖も前節のC大阪戦で、後半アディショナルタイムに劇的勝利を遂げている。12分に本田風智が負傷するアクシデントもあったが、樋口雄太の素晴らしいFKで先制。今度は高橋秀人も負傷する中、相手ペースになり一度は追いつかれたが、後半は金森健志に代えてレンゾ・ロペスを投入し戦い方をシフトすると、苦しい時間帯をしのぎ90+1分にカウンターからチアゴ・アウベスがワンチャンスを仕留めて勝利した。
 
若いプレーヤーが躍動しベテランが締めるチームで、10月下旬には横浜FMから守護神・朴一圭を獲得したことも大きな要素。金明輝監督も戦術を凝らす指揮官で、勝ち切れていなくても内容のいい試合が多い。
 
また、先月末には岩下敬輔が今季かぎりでの引退を表明。今月3日には小林祐三もプロ選手を引退して来季からはクリアソン新宿でプレーすることを発表した。今節は広くJリーグファンに愛された彼らのラストゲームでもある。
 
さまざまなトピックが絡み合う最終節だが、これが今季のチームでの最後の戦い。チームの成熟度を高めるにも苦心した異例のシーズンではあったが、出しうるかぎりの最高のパフォーマンスで勝利をつかみたい。
 

試合に向けての監督コメント

■片野坂知宏監督
 
最終節はアウェイ鳥栖で九州ダービーだが、鳥栖さんも生きのいい若い選手がたくさんいる。ハングリーでサッカーに飢えている、プロの世界で勝ちたいという思いを持っている選手たち。しかも相手にとってはホーム最終戦で、なかなか難しい試合。金明輝監督も非常に戦術家だし、いろんなことを準備してくると思うので、簡単には行かないだろうと思う。また中2日だが、最後まで頭を悩ませながら、いるメンバーをなんとか組み合わせて戦いたい。