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今節の見どころ

主導権を争う好ゲームになるか。勢いある昇格組を8000人のホームに迎える

 

タフなアウェイ2連戦をいずれも3得点で連勝して、チームは大分へと帰ってきた。今節から入場者数制限が緩和され、昭和電工ドーム大分は上限8000人を迎えることになる。ホームの力を勝点へとつなげたい。

 

上向くチーム状態を示す3得点での2連勝

ACL日程の関係で第24節が前倒しとなり、第17節から中2日でのアウェイ連戦でタフな戦いを強いられたが、チーム状態が上向いてきたことを示すように、連勝という結果を収めた。仙台戦は片野坂知宏監督体制下ではJ1初の3得点を挙げて快勝。続くFC東京戦も2試合連続3得点で相手の追撃を振り切って勝利した。
 
特筆すべきは、仙台戦とFC東京戦で先発メンバーのうち7人が入れ替わっていることだ。過密日程による連戦続きで負傷者が続出し、メンバーを固定できないため連係が育たず、今季バージョンの戦術浸透もはかどらずに苦戦してきたが、ここに来て選手を入れ替えても戦える手応えが、急激に感じられはじめた。
 
選手層の厚みも少しずつ回復しつつある。今季活躍を期待されながら膝の痛みによりリハビリを続けていた野村直輝が、FC東京戦の67分、ようやく戦線復帰。アグレッシブなプレーでいきなり1G1Aという結果を刻んだ。古巣戦となる今節にも期待が懸かる。第6節の名古屋戦で右肘関節を脱臼した前田凌佑も、仙台戦からは先発で出場し、ダイナモとして主導権掌握に貢献した。今季からシャドーでも起用されている田中達也は、当初はそのポジションでのプレーになかなかフィットできずにいたが、ここ最近は「自分なりのシャドー」像が確立してきた様子で、試合展開の中でWBとシャドーを行き来しながら躍動している。高いポテンシャルを持ちながら、「もっと出来るはず感」が拭えずにいた知念慶や渡大生も、徐々にその個性を組織へと還元しはじめた。
 
転機は、片野坂監督が選手たちに自主性を求めたことだったのか。次の試合への準備に追われる連戦の中、試合ごとの戦術を理解し遂行することで精一杯になっていた選手たちに、攻守の狙いは大枠の前提として、実戦では自分たちで判断し修正することを促したという。そしてその時期あたりから、プレーの伸びやかさが増したように見える。
 

元気な若手が台頭している横浜FC

今節は第15節・湘南戦以来のホームゲーム。新型コロナウイルス感染拡大防止のための入場者数制限が緩和され、昭和電工ドーム大分ではこの試合から上限8000人の観客を迎えることが出来るようになった。乗り込んでくる相手は今季J1昇格組の横浜FCだ。毎年、三浦知良の出場に期待して、多くのサッカーファンがスタジアムにやってくるカードでもある。
 
昨季5月から指揮を執る下平隆宏監督は、ボールを握るスタイルを確立させてJ1昇格を果たし、昨季J2優秀監督賞に輝くと、昨季J1優秀監督賞の片野坂監督と壇上で並び表彰された。この2人の初対戦は1990年の第86回高校選手権1回戦にまで遡る。鹿児島実業高の片野坂と五戸高の下平はそれぞれのキャプテンとしてチームを率いて戦い、2-1で鹿実が勝利した。現役時代には柏でチームメイトだった時期もある2人が指揮官として初めて対峙したのは2017年の天皇杯3回戦。このときは下平監督のJ1柏が片野坂監督のJ2大分に2-0で上位カテゴリーの貫禄を見せつけた。その後はカテゴリーがすれ違い、対戦はそれ以来となる。
 
その下平監督が確立させたボールを握って攻めるスタイルでJ1昇格初年度を戦っている横浜FCもまた、負傷者多発で戦力の頻繁な入れ替えを余儀なくされている。ただ、その中から勢いのある若手選手が台頭しつつあり、ピッチで存在感を放つようになってきた。基本システムは中断明けからは3-5-2だったが、結果が出なかったためか現在は4-4-2。試合中にも相手や流れを見ながら選手交代などで変化をつけているようだ。
 
第5節からは5連敗、その後3連勝してまた3連敗と戦績は安定しないが、敗れた試合も決して内容は悪くなく、むしろ相手を上回っていたことも多い。課題はやはり決定力だが、失点も少なくなく、ここまでに挙げた5勝のうち4勝は3得点以上のスコア。前節は堅守の名古屋から3得点を挙げて競り勝ち、上向いた状態で今節を迎える。
 
互いに主導権を争う好ゲームが期待できそうな一戦。1週間の準備期間を経た相手に対し、こちらはアウェイ連戦の後で、コンディション面でのアドバンテージは向こうにあるが、ホームチームの意地を見せたい。
 

試合に向けての監督コメント

■片野坂知宏監督
 
横浜FCは今季昇格したチーム。シモ(下平隆宏監督)も本当にいいサッカーをしているし、ゲーム中にも開始前でも、対われわれというところで変化できる監督なので、厄介だと思う。昇格してきて勢いがあるし、18位からのスタートでJ1でこれでチャレンジしようという、昨季のわれわれのような感じ。思い切りのいいチームで徹底している。またホームでの連戦になるが、いいゲームが出来るようにしっかりと準備して戦っていきたい。