攻守両面で強烈な相手。高難易度のミッションにも果敢に立ち向かえ
ふたつの台風の谷間のタイミングで開催されることになった今週のJリーグ。明治安田J1第14節、昭和電工ドーム大分には強豪・FC東京がやってくる。
台風10号接近中も開催には問題なさそう
台風10号の動向次第ではFC東京の帰路のことまで気がかりになる。明治安田J3では熊本と鹿児島のホームゲームが開催延期となったが、現在のところ大分での開催には問題はなさそうな状況だ。昭和電工ドーム大分は、一定風速を超えると、破損を防ぐために屋根を開けておかなくてはならない。風雨の中、ずぶ濡れで戦った昨年の天皇杯3回戦・鹿屋体育大戦が記憶に新しい。
天候の影響も多少受けながら、チームは先週に続き、試合までに1週間の準備期間を経て今節のFC東京戦に臨む。片野坂知宏監督はオンライン取材で前節・浦和戦での町田也真人の復帰を喜ぶ一方で、新たなコンディション不良メンバーが出たことも明かした。選手の心身にも大きな負荷を及ぼすイレギュラーな過密日程。試合ごとにメンバーが入れ替わるにも関わらず、連戦のため連係を十分に高めることが出来ない難しさを、香川勇気も口にした。
それでもチームは一時期の混迷からは完全に脱出できたように見える。白星が取れなかった試合でも、得意とする攻撃の形はその試合に向けた狙いどおりに作れており、決定機の数も増えた。浦和戦の得点シーンなどは「まさにこれ」といった見事な形で、その後も複数の得点機を築いている。ただ、紙一重のものも含めそれを決めきれなかったことが課題として残った。
「失点につながった守備陣のミスと同じ重さで、決定機逸というミスもとらえてほしい」と、片野坂監督は主に前線の選手たちに伝えたと話す。フィニッシュ精度へのこだわりを得点へと結実させなくてはならない。
3日前に堅守・名古屋を3-0で下したFC東京
新型コロナウイルス禍の影響で、ACLやルヴァンカップにも参戦中のFC東京は、目下15連戦という過酷なスケジュールの中にある。今節の大分戦はその7戦目だ。2日にルヴァンカップ準々決勝・名古屋戦を戦っており、この日も試合途中で激しい雨に見舞われたが、3-0というスコアで圧勝。現在リーグ最少失点を誇る堅守の名古屋から3得点を挙げる攻撃力は脅威と呼ぶほかない。
ディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロ、アダイウトンといった外国籍選手、そしてスピードに長けた永井謙佑。内田宅哉や原大智らも両WGで計算できる戦力となっており、前線のタレントたちはピッチに並べきれない層の厚さだ。インサイドハーフにもルヴァンカップ名古屋戦で2得点と絶好調の安部柊斗や、前線のタレントを操るアルトゥール・シルバ、三田啓貴らが並び、誰がどのポジションで出るかによってこちらの対応も変化するが、誰が出てもそのパワーで相手を圧し、交代で入ってくる面々も強烈であることには変わりがない。
4-3-3システムで縦への速さに加えつなぐ局面も増やしている中で、橋本拳人の移籍により一時はアンカーシステムに暗雲が立ち込めそうになったが、高萩洋次郎がその穴を見事に埋めて現在は不可欠な存在となっている。森重真人と渡辺剛の2CBの堅さはJ1屈指。生え抜きの東慶悟は残念ながら負傷離脱中だが、大分U-15から東福岡高に進みFC東京でデビューした中村拓海は、移籍した室屋成に代わって出場機会を確保しつつある。
間違いなく攻守両面で個々のパワーはJ1トップクラス。そんな相手に対し、どう勝機を見出すか。片野坂監督は「相手の土俵はコンタクトプレーを多くして球際で戦い、奪ったボールを速い攻撃につなげること。その土俵に乗らないためにも、しっかりと自分たちがボールを握った中で攻撃の狙いを合わせ、失い方を間違わなければ、ある程度ゲームプランどおりの展開になるのではないか。自分たちが表現できるようなゲーム展開にしたい」と話した。
試合に向けての監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
FC東京は、守備はハードワークして堅く、攻撃はスピーディーでパワフル。外国籍選手を含めた攻撃陣のタレントがいる手強い相手。連戦で若干メンバーを変えたりしながら来ているが、われわれに対してどのようにメンバー選考してこられるか。われわれとのミスマッチのところでどういう陣形を組んで守備をされるか。その状況を入りからしっかり見て、準備したことが出来るかどうかを判断したい。
昨季はホームでもアウェイでも厳しいゲームになった。今季は少しでも自分たちが主導権を握ったり狙いを表現できたりするゲームになればいいなと思う。ただ、お互い状況も変わっているし、東京さんも新しいシステムにチャレンジしたり、選手の移籍があってメンバー選びに苦労されている部分もある中で、今季はさらに隙を作らず自分たちの戦いを全うされている印象がある。賢くゲームをコントロールできる選手もいるし、パワーを出すときには出せる選手もいる。こちらが主導権を握っている時間帯も隙を作れない。とにかく90分切らさずどれだけ集中して戦えるか。個対個の戦いになると分が悪いだろうが、グループとして合わせてチャレンジすることが大事。
■FW 18 伊佐耕平
連敗していた頃はみんなが思い切りプレーできていない感じだった。それで「最悪、僕のところに蹴ればいいから後ろは自信を持ってつないでくれ」と伝えた。後ろで自信を持ってつなげば相手も前から奪いに来るので、僕のところが1対1の状況になったりしている。中途半端につなぐと僕のところに入っても潰されてしまうことが多いので、やるならとことんやるのがいいと思う。
FC東京は前線に強力な選手がいて速い攻撃を仕掛けてくるので、僕たちがボールを持っているときは奪われ方に気をつけなくてはならない。ボールを持てる時間は毎試合増えてきているので、押し込んでじっくりとサイドから崩していきたい。
■DF 2 香川勇気
いままでの試合の中でクロスへの入りは改善されているし、人数も増えている。ある程度合ってきていると思うが、ゴールとしての結果がまだ出ていないので、中と外でもう少し精度を合わせていく必要がある。人によって入り方やほしいボールが違うので、練習や試合の中でも細かく話をするようにしている。中の選手が要求するボールをしっかり出さなくてはならない。いつでもどんなボールでも出せる技術をもっと高めていきたい。
4-3-3でワイドに張ってくる相手に対して、後ろは5枚になると思うが、スライドやスペースを空けないこと、最後のところで戦うことはしっかりと練習でやっている。個で勝負してくる相手にはオーガナイズした守備で対応する。そして、中を固めて外に行かせる守備の中で、組織の中でも個でも負けないというのは絶対に大事。