新たな戦い方にチャレンジ中の両軍。手応えを勝利へとつなげたい
タフだった連戦が明け、1週間の準備期間を経て迎える明治安田J1第13節、チームはアウェイで浦和と対戦する。掴みつつある手応えを確かなものへと高め、今後、高みを目指す自信を強めていきたい。
チャレンジの副作用を乗り越えて
ルヴァンカップを合わせると7連戦となった8月。リーグ戦では7月18日に開催された明治安田J1第5節・G大阪戦を起点に、名古屋戦、清水戦、鹿島戦、川崎F戦と5連敗を喫した。その間の合計は15失点。片野坂知宏監督体制下では初めての経験だ。
合間に行われたルヴァンカップでも1分1敗と白星から遠ざかった。内容的にもこれまでに積み上げてきたものさえ影を潜め、もどかしい日々を過ごすことになる。過密日程の中、負傷やコンディション不良によりメンバーを固定できず連係が育ちにくかったことも要因のひとつだ。ただ、コンディションのいい戦力の中から狙いをもってメンバーを構成してはいた。その狙いがピッチで上手く体現できず、混迷の様相が描き出されてしまった。
それは新たなチャレンジの副作用でもあったようだ。昨季後半、特徴的なスタイルを相手に研究され封じられるようになったことを受けて、今季のチームは「こちらが何をするか相手がわかっていてもそれを上回れる境地」を目指した。その方策の一環を、指揮官はこう明かす。
「いまのサッカーの潮流ではスピードが上がっている中で、判断してプレーするとやはり遅くなってしまう。そのスピードを高めるにあたり、守備と攻撃の狙いをはっきりすることで、自分たちがやりたいことを判断せずに出来る部分もある。守備の狙いの中でどこを消してどこで奪うということを明確にすれば、そこに対してのプレスが早くなる。いま、そういう形にしているところなんです」
それを選手たちに落とし込むのが難しいところで、鈴木義宜は「スカウティングでこういう狙いをすると言われると、みんな真面目なのでそればかりになってしまう傾向があった」と不調な時期のチームを振り返る。「狙いと状況が違ったときには自分で判断しなくてはならない。監督にも、狙いもありつつその中でしっかり自分たちで判断してほしいと言われた。それでチームが臨機応変に動くようになってきた」と立て直しのきっかけを語った。
第10節の横浜FM戦で何かがハマったような感触を得ると、そこからの3連戦は1勝2分。自らアクションを起こす守備と柔軟性を取り戻した攻撃で内容も向上した。決定機の数もシュート数も増えている。あとはチャンスを逃さず仕留めるだけだ。この手応えを、より確かなものへと高めたいのが今節の浦和戦。敵地での戦いだが、主導権を握って運びたいと指揮官は話す。
まとまった組織へと変貌している浦和
昨季は大分が2勝したが、今季の浦和は昨季とは違う姿を見せている。個々の能力の高いタレントたちによるコレクティブなサッカーを志向しているようだ。
大分と同様、やはり新しい試みが浸透し結果へとつながるまでには相応の時間と労力が必要になっていた。共通認識不足がうかがわれるような場面もしばしば見られた中で、第6節では柏に0-4、第9節では名古屋に2-6と大敗しながら、直近3試合は2勝1敗。前節は決定機を逃すうちに神戸に白星を持っていかれたものの、第10節の広島戦では先制後に泥臭く守って1-0で逃げ切った。第11節のG大阪戦ではレオナルドと武藤雄樹の2トップが良好なコンビネーションを発揮して先に3点のリードを奪うと、守りを固めてG大阪の猛追を跳ね返し続け勝利している。
攻守いずれにもハイポテンシャルな戦力を擁しており、戦術が浸透すればチーム力はいやが上にも高まる。連戦明けの今節は浦和も中5日の準備期間を設けており、コンディションを回復した状態で臨んでくることだろう。
フォーメーションは4-4-2を貫いているが、タレントたちのうちの誰がメンバーに入り誰が先発して、ビルドアップする大分に対してどういう守備をしてくるか。
大分のサポーターや関係者にとってはやはり守護神・西川周作との対戦に心踊る一戦だ。四日市南SSCの大先輩に挑む岩田智輝も、特別な思いでそのときを待っているに違いない。そして岩田にとっては大分アカデミーのひとつ先輩にあたる岩武克弥も、前節は第9節以来、終盤に途中出場している。昨季大分でプレーした伊藤涼太郎とも再会できる可能性がある。とりわけ伊藤を可愛がっていた三平和司との絡みが見られるかどうか。
また、興梠慎三はJ1通算150ゴール目前。槙野智章はJ1通算350試合出場を、今節にも達成しそうだ。いろいろと楽しみな要素は多いが、どちらにとっても今後に向けて上昇気流に乗りたい状況での対戦。それぞれの新しいチャレンジも体現しての好ゲームに期待したい。
試合に向けての監督コメント
■片野坂知宏監督
今季の浦和さんは非常にオーガナイズされ、狙いの中で戦っている。そういう中でも勝点を積み、順位は上。もともといる選手の個の能力はJ1の中でもトップクラス。そういう相手がグループとして戦うとなると非常に厄介なチームになると警戒している。
隙を与えると決定力のあるタレントも前線にいるし、個の能力はわれわれよりも上。われわれも変わらず、グループとして攻撃・守備の狙いを合わせ、アウェイだが、どれだけチャレンジできるかというところで勝点を奪いたい。