消化試合ではない。異例の今季の今後に向け、戦力個々の台頭が待たれる
こちらはすでにグループステージ敗退が、相手はプライムステージ進出が決まっており、レギュレーション上はいわゆる“消化試合”。だが、特殊な状況を強いられる今季は格別に、この一戦が大事な意味を持つことになる可能性に期待したい。
すでにグループステージ敗退は決まっているが
2月16日にリーグ戦に先駆けて開幕したYBCルヴァンカップだが、新型コロナウイルス蔓延の影響で大幅なレギュレーション変更を余儀なくされ、グループステージは従来のホーム&アウェイ方式から1回戦総当たり戦へと変更に。8月5日に行われた第2節では、G大阪と開幕戦に敗れた同士で対戦し、引き分けに終わっていずれもグループステージ敗退が決まった。
今節はグループステージの最終節となる。大分が所属するDグループでは2位の湘南がプライムステージ進出を懸けて各グループ2位と戦績を競うことになるが、すでにプライムステージ進出を決めている柏と敗退が決定している大分との一戦は、いわゆる消化試合だ。
だが、今季Jリーグの置かれた状況を考えると、とても消化試合とは呼べない。イレギュラーな中断により異例の過密日程となった中、中2日や中3日で次々に試合が開催されるため、どのチームもトレーニングマッチを組む余裕がなく、ぶっつけ本番の戦力起用で試合に臨むケースが多くなっていると思われる。
大分のように緻密な組織的スタイルを丁寧に培ってきたチームにとっては大打撃で、トレーニングのルーティンが組めないため選手のコンディション維持や戦術の積み上げも難しい。負傷者が続出して選手層が薄くなり、動けるメンバーへの負荷も増している。
今後に向けての底上げの絶好機
その中で、今節は戦力を底上げする絶好の機会。現に第2節のG大阪戦では、今季公式戦初出場のムン・キョンゴンが成長した姿を見せ、中2日で迎えた川崎F戦でのリーグ戦初出場へとつなげた。小塚和季、三平和司、伊佐耕平、小手川宏基と怪我やコンディション不足から復帰したメンバーも、刀根亮輔や星雄次、高畑奎汰らとともに旧知の仲だからこそと言わんばかりのコンビネーションを披露した。小出悠太や佐藤和弘ら新加入メンバーも、この一戦を経験したことでフィット感を増したのではないか。
今後の連戦に向けてさらなるチームの底上げを図りたい今節は、前節以上に思い切った戦力起用もありそうだ。ほとんどの選手のコンディションが不明なので誰がプレーできる状態なのかがわからないが、公式戦ではまだ見ぬ吉田舜や高橋祐翔が姿を見せるとなれば楽しみは増える。特別指定選手や2種登録選手に経験を積ませるのも選択肢のひとつだろう。
リーグ戦で5戦負けなしの柏も、この試合を底上げのチャンスとしたい模様だ。呉屋大翔はほぼ出場すると思われるが、あとのメンバーはどうなるか。若手を中心にリーグ戦で出場機会の乏しい戦力が出場するとなれば、高いモチベーションでアピールしに来ることは間違いない。
その相手に、どういう戦力で臨みどれだけ戦えるか。若手や新戦力への戦術浸透のためにも、そしてこれまで積み上げてきたものをさらに発展させるためにも、臆せずにチャレンジする姿勢が問われることになる。
試合に向けての監督コメント
■片野坂知宏監督
予選敗退して消化試合なのだが、いまはチーム状態がよくないので、その中でチャレンジさせたいし、そのチャレンジさせた選手が今後リーグ戦でも力を発揮できるようなゲームにしたい。そしてまた中2日での横浜FM戦に向けて勢いがつくようなゲームになれば。
とにかくいま必要なのは勝利だと思うので、勝ちたい部分もあるが、横浜FM戦を見据えてやらなくてはならないところもある。どういうメンバーでトライさせるか、そしてそのメンバーがどれだけ柏戦でやれるか。柏もすでに予選突破が決まっているが、その柏に対してどれだけやれるかを見て、今後の戦力としてパワーを出してもらいたい。