連戦の1戦目で気になる選手起用。西川周作の鍵をこじ開けて得点したい
中断期間を経ての明治安田J1第29節A浦和戦。ACLの日程の関係で18日(金)夜開催となった。浦和はACL、こちらは天皇杯と、いずれも中4日の連戦。メンバーやゲームプランが気になる一戦だ。
オナイウと伊藤が出場できない中で
23日にACL準決勝第2戦・広州天河戦を控える浦和と、天皇杯準々決勝・神戸戦を控える大分が埼玉スタジアムで激突する明治安田J1第29節。ACLの日程の関係で、金曜夜の開催となった。大分にとって19時30分キックオフは第21節のA鳥栖戦以来だ。
連戦でもあり、負傷者のコンディションや契約上の制約など、双方ともメンバーが気になるところ。浦和から期限付き移籍中のオナイウ阿道と伊藤涼太郎が出場できない。チーム得点ランクトップのオナイウと、天皇杯2戦連続ゴールと調子を上げている伊藤の2人の攻撃陣を欠くことが、ゲームプランにどう影響するか。
一方で、3戦連続ゴール中の三平和司は中断期間も好調を維持している様子で、居残り練習中もいろいろと細やかに仕掛けてはチームメイトたちの気分を上げていた。また、第17節の浦和との前回対戦で途中出場後まもなくゴラッソを放った小林成豪も、ここ2試合は決めきれてこそないものの決定機に多く絡んでいる。他に負傷離脱していた岩田智輝、ティティパン、伊佐耕平は揃って全体練習に合流。ただ、戦力として起用できるかどうかはギリギリまで見極めたいと、片野坂知宏監督は慎重だった。
今節も問われるのはフィニッシュの精度
今季残り6試合にして、目標とするJ1残留の目安とした勝点45まであと5ポイント。前々節のH磐田戦と前節のA名古屋戦は、いずれも後半アディショナルタイムに失点し、磐田には敗れ、名古屋には追いつかれた。2試合とも勝てる内容だっただけに、取りこぼした感は否めない。
その最大の要因を片野坂監督は、粘りきれなかった守備ではなく、追加点の取れなかった攻撃とした。確かに好機は狙いどおり作れており、複数の決定機も迎えていた中で、フィニッシュの精度を欠いていたことが悔やまれる試合だった。チームはここ1ヶ月ほどはゴール前の崩しやクロスなど、決定力向上のためのメニューに多く時間を割いている。その成果のひとつが、前節・名古屋戦での田中達也のクロスに合わせた三平のゴールだった。
浦和との前回対戦では相手のアグレッシブなプレスをかわして背後を突き2得点を挙げたが、それを踏まえて浦和がどういう守備を選択するかというところ。いずれにしても細やかなポジショニングと連係を頼りにボールを前に運んでいくしかない。最後に立ちはだかる西川周作の砦を打ち崩すまでが勝負となる。
浦和については「ベストメンバーで来るだろう」というのが片野坂監督の予想。多彩なフィニッシュの形を誇る興梠慎三と周囲のコンビネーションを、隙なく抑えなくてはならない。
大分は駒場と埼スタを合わせると、アウェイで浦和と10回対戦している。戦績は1勝1分8敗と惨憺たるもので、前回の2013年J1第21節は前半に3点リードしながら終わってみれば4失点して逆転負けしていた。唯一の勝利は2005年J1第23節、「大分はまだ死んでいない」というマグノ・アウベスの試合後の一言が記憶に残る一戦だ。シャムスカ監督の初陣で、その後のV字回復の起点となった。
今節はどうなるか。まだ決まっていないJ1残留に向け、片野坂監督は「できるだけ0-0の時間を長くしたい」と、あくまでも“弱者”としての構えを崩さない。プランニングからはじまっている大槻毅監督との采配合戦、選手たちの判断の駆け引き。赤く染まるビッグスタジアムで、熱戦を見守りたい。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
浦和の守備はハードワークしてボールに対して激しく来るので、簡単に点を取れる相手ではない。個人の能力も高いし、こじ開けるのは難しいと思う。でもそれにビビっていてはダメ。思い切ってトライすることが大事。その思い切りが、あの埼スタの雰囲気の中で浦和に対しても出来ればと思う。
やはり拮抗したゲームにしたい。先制点を奪われると相手は勢いづくし、ボールを握ることに関してもクオリティーを持っているバランスのいいチーム。それを取りに行って疲弊し、自分たちがパワーを使いたいところで使えなくなるのが嫌なので、先に点を取れれば理想だが、そうでなくても0-0の状態を続けたい。90分トータルの中で戦える展開にしたい。
勝点3取れれば素晴らしい成果だが、勝点3を取りに行く中でも攻め急がず、かといって守り一辺倒になっても相手のやりたい放題になってしまうので、バランスを取りながら、最低でも勝点1につなげられるようなゲーム展開にしたい。
■MF 25 小林成豪
中断期間のトレーニングの手応えはいつもどおり。個人的にはまだまだ出来ると思うし、チームの勝利に貢献したい。チャンスはあるのであとは決めるだけ。ゴール前で冷静に打つことが大事。崩しの形も出来ているのだが、もっともっと回数を増やしたい。フィニッシュに向けてのイメージはいろいろしている。
埼玉スタジアムは神戸時代にプレーしたことがあるが、雰囲気がとてもいい。浦和はサポーターも多いが、雰囲気にのまれず自分たちのサッカーを体現したい。ミラーゲームで相手も強く寄せてくると思うので、攻守にしっかり頭を使ってやっていく。浦和の守備陣は対人に強く足元も上手いが、相手を見ながら賢く自分たちのサッカーを体現できれば、勝機はあると思う。
■MF 50 田中達也
ミラーゲームで全員がプレッシャーを受ける中でどう前進するか、どうボールを進めていくかというところで、つながることが大事。情報を頭に入れつつ試合状況を見ながら、スムーズに運べる立ち位置、いい距離感を見つけてみんなで合わせてやりたい。
チームとしてゲームをコントロールする部分は出来てきていると思う。ボールを握って攻めることも出来るようになってきているので、相手を引かせることが出来るようになっているのであれば、そこからは点を取る・取られないというクオリティーの差になってくる。前節の前の2試合で自分にも決定的チャンスがあった。最後の質にこだわりたい。
シーズン前半にG大阪に在籍していたときも、浦和とは対戦した経験がない。埼玉スタジアムも初めてなのでイメージが湧かない。でも、相手にかかわらず最近は得点力、特に追加点を取ることが大事になってくると思う。
■MF 6 小林裕紀
浦和はタイトルを獲ったこともある強いチーム。浦和戦に向けてしっかり準備したこと、やりたいことがあるので、相手がどう出てきても、自分たちに矢印を向けて戦いたい。
苦しい展開になっても最終的に勝てればそれでいい。でも、改善できた部分もある。課題が出たところは各々が反省して次に生かせると思う。先制点ももちろん欲しいし、追加点はもちろん欲しい。得点は何点でも欲しい。でも、だからと言ってやることを変えるわけでもない。