攻撃の新しい形が見えはじめたいま、今度こそ広島の堅守を打ち破る
明治安田J1第26節H湘南戦から中3日の18日、チームはエディオンスタジアム広島で、天皇杯ラウンド16・広島戦に臨む。
負傷者と今夏加入の3人以外、全員に出場の可能性
14日に大分市営陸上競技場で行われた明治安田J1第26節H湘南戦で7試合ぶりに勝点3を積み上げたチーム。リーグ戦は第7節以来の先発となった三平和司の先制弾と、それをアシストした伊佐耕平の追加点で、4試合ぶりに得点も挙げた。そのゴールシーンに、負傷離脱した岩田智輝に代わり入った岡野洵のダイレクトのクサビや、オナイウ阿道の相手DF2人を引きつけながらGKを強襲した迫力満点のシュート、絶えずポジションを取り直していた小林裕紀のゴール前への走り込みなど、複数の要素が絡んでいたこともポジティブだ。後藤優介と小林成豪の負傷からの復帰組も、出場こそしなかったがベンチ入りして戦列復帰を果たした。
それから中3日で臨む、天皇杯ラウンド16広島戦。準備期間が短く、敵地への移動もある一方で、次のリーグ戦であるJ1第27節H磐田戦までは10日間の猶予がある。16日のトレーニングは別メニュー調整者を除き全員が同じ負荷で、1時間弱と非常に軽めで終えたあと、各自がシュートやボールタッチなど居残り練習で調整した。
天皇杯の規約上、田中達也、島田慎太郎、小林裕の今夏加入組は、それぞれ全所属チームで今年すでに天皇杯に出場しているため、大分では出場できない。この3人以外の全員に、出場チャンスがあるという状況だ。リーグ湘南戦で大事をとって前半のみで交代した伊佐のコンディションが気になるが、他の選手たちにもアピールしてもらいたいところ。片野坂知宏監督も「他の選手が奮起して、このチャンスをものにしてリーグ戦につながるようなパフォーマンスを見せてくれれば」と、いまは控えに回っているメンバーに期待を寄せる。
ヴィエイラもペレイラもいないが渡が出てくる
堅守を誇る広島だが、ルヴァンカップ準々決勝・札幌戦はアウェイでの第1戦を2-3で落とし、ホームでの第2戦は1-1で引き分けて敗退。J1第26節A横浜FM戦では3失点・無得点で黒星を喫した。ただ、試合内容は決して悪くなく、失点は運にも多少影響されたかたち。戦術的にも攻守にメリハリのついた戦いで、失点するまではしたたかな戦いぶりを見せていた。
ドウグラス・ヴィエイラが8月30日のトレーニング中に右膝内側側副靭帯損傷して全治6週間、レアンドロ・ペレイラが9月7日のトレーニング中に右内転筋を肉離れして全治8週間と、頼みの外国籍選手2人が長期離脱したことは、広島にとって大きな痛手のはずだ。とは言っても、横浜FM戦で1トップを務めた渡大生には、2017年J2第41節A徳島戦で、最後の最後に痛い思いをさせられた記憶もある。2列目の森島司や川辺駿らの能力の高さも、これまでの対戦で十分にわかっている。
城福浩監督は連戦でもターンオーバーをあまりしないイメージ。中3日の天皇杯、失点の増えている最近の状況を踏まえて動いてくるかどうかが注目される。
こちらとしては対広島で、リーグ戦のホームで0-1、アウェイで0-0と、堅守の壁を打ち破れていない。ここからシーズン終盤に向けて、これまでは控えに甘んじていたメンバーが輝きを放つことにも期待しつつ、今季3度目の対戦でこそ、広島ゴールをこじ開けて次のステージへと勝ち上がりたい。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
前節の湘南戦はホームで勝ててよかったが、最後に押し込まれ、勝点1や0になっていた可能性もあった。そういうところ、勝ち切るところまで突き詰めていかなくてはリーグ戦残り8試合も厳しい試合になる。
天皇杯はリーグ戦と異なり、ノックアウト制で、延長やPK戦を含め必ず決着がつくゲーム。お互い中3日の準備期間をどういうふうに使うかによって、メンバーも考えなくてはならない。まずは湘南戦に出たメンバーがコンディションを万全にすること。出なかったメンバーは切らさずに準備して、自分が出来ること、やるべきことをしっかりと集中して出来るかどうか。広島戦に向けての90分プラス30分のゲームプランの中で、いろんなことを考えながらやれる準備をしたい。
攻略は簡単ではないが、つねにいい判断といいポジショニングからスタートし、駆け引きと予測の中で上回れ、先手を取れるか。そして後手に回らずに、チームとしても広島の隙を突けるかというところになってくるだろう。湘南戦でも相手のミスを自分たちがしっかりと得点につなげることが出来た。サッカーはつねにミスの起きるスポーツで、そのミスが少ないほうが勝ちきれるし、ミスが起きると残念な結果になるということが往々にしてある。そういう拮抗したゲームになるだろうし、そういうところで自分たちが上回ることが出来れば、勝ち上がれるチャンスはあると思う。
天皇杯もベスト16まで来たし、次にもし勝ち上がれればベスト8。さらに高みを目指せる。自分たちのチャレンジというところでも、J2からJ1に上がり、J1チームとして天皇杯を戦える中で、われわれの山は決勝まで対戦相手もJ1のチームばかり。そういう意味でもリーグ戦同様、天皇杯も上位のほうまで行ければ、本当に素晴らしい成果につながる可能性を、自分たちがつかみ取れる位置にいる。天皇杯とリーグ戦を併用して素晴らしい成果を上げられるようにすれば、次のシーズンに向けても自信になるし、選手個人のところでも、リーグ戦残り8試合に向けて成長の糧に出来る。そういうゲームを積み上げていくことが、J1で戦うには大事になる。
——いまリーグ戦に出ている選手と絡めていない選手との力量差は。
これも個人差がある。ポジションによっても、個人によっても。もともと持っているポテンシャルのある選手もいるし、そこをもっと引き出したいが、その選手個人のメンタルや準備の部分でパフォーマンスはまったく変わってくるので、そういうところを見極めなくてはならない。しっかりやっていない選手にチャンスを与えても、結局はトレーニングでやれているかどうかがゲームで出てくるし、切羽詰まった、拮抗した緊張感のあるゲームの中で、そういう緩みでやられてしまうのが、このJ1のリーグでの高い強度。そういうところをしっかりと切らさずに、強度を保ち、出来るだけ戦える集団でいなければ、残り8試合、そして天皇杯を勝ち上がることは本当に難しくなると感じる。
■MF 25 小林成豪
(トレーニングマッチの宮崎産業経営大戦で負傷離脱から実戦復帰し、3得点したが)内容というよりも点を取ることに焦点を当てていた試合だったので、得点できてよかった。チームとしてもうちょっとゴールに向かうプレーを増やせればいいなと思っていた。
いまは負傷離脱前と変わらずにやれている。違和感なく戻れたのであとはゲーム体力の部分。準備して臨みたい。ここまでチームに貢献できなかったので、これから取り返していきたい。離脱中に新戦力も加入したが、ここからもっと合わせていけばさらに連係もよくなると思う。
広島は守備が堅く球際が強い、抜け目のないチーム。チャンスがあればゴールにつながるプレーをしたい。
■FW 9 後藤優介
前節の湘南戦ではベンチ入りで復帰したが、やはり公式戦の雰囲気はいい。今季は怪我前もベンチ入りしながら出場しない試合が多かったので、試合勘よりは自分がどれだけ取り組めるかだと思う。チャンスがあれば何とかするという気持ちがある。
引いた相手に対して、うちはワンタッチシュートやミドルシュートが少ないので、そういうのも増やしていかなくては相手も出てこない。相手が出てくればクロスのところが空いてきたりもする。ゴールを意識したプレーが増えれば相手も崩れてくると思う。
個人的にはリーグ戦も1点しか取れていないし、ルヴァンカップも点は取ったが、チームが楽になるようなプレーがまだ出来ていない。ステージがJ1になってくると、やっぱり足りないところが多いので、ひとつひとつ克服していければと思っている。J1という高いレベルの中で、相手のテンションもシーズンが進むにつれ上がっていくので自分も成長しなくてはいけない中で、まだ余裕がないところもある。練習からハイプレッシャーの中で出来るようにしていきたい。自分の中ではなぜ自分が試合に絡めていないかもわかっているので、あとは練習の中でどれだけ取り組み、落ち着いて出来るようになるか。いまは自分を高める作業が楽しい。試合にはあまり出られていないが、ポジティブにトレーニングできている。あとは結果がついてくればと思う。