九州ダービー第2ラウンド。灼熱にも鳥栖のハードワークにも負けるな
明治安田J1第21節は鳥栖との九州ダービー。前回対戦は突然の指揮官交代という“奇襲”にも遭いながら2-0で勝利したが、今節は相手のホーム。浮上のきっかけを掴みたい鳥栖は、残留争いのライバルとしても怖い存在だ。
戦い方の幅が広がり、より判断力が求められる
前節の川崎F戦では地力の差を見せつけられたように敗れたが、トレーニングで積み上げたボール運びにはいい手応えを得た。相手の変化に対応できなかった課題もあったが、決して悲観すべき内容でもない。
今週は、2日目からはサブグラウンドでの練習。陸上トラックに囲まれ陽射しを遮るものがないため、いつも以上に灼熱にさらされ、選手たちの肌も見る見る陽焼けしていった。
タフな夏場の戦いだからこそ、主導権を握る意味が大きくなる。前節は相手に主導権を握られたことでプレーでもメンタルでも負担が増え、早い時間帯から疲弊した。こちらがボールを動かせれば、逆に相手を疲れさせることができる。そのためにどういうふうに戦うかを考えなくてはならない。
日々の積み重ねによって戦い方の幅は広がっているのだが、それだけに状況の中での臨機応変な判断力がより必要となる。チームはメンバーを入れ替えながらゲームや戦術確認を繰り返し、戦術理解と意思疎通の度合を高めている。
浮上のきっかけを掴みたい鳥栖
鳥栖はいまだ最下位に沈んではいるが、金明輝監督が指揮をとるようになってからは徐々に守備も安定し、積み上がってきた印象もある。試合の内容も悪くない。もとよりバラエティー豊かな強力な攻撃陣が揃っており、得点力不足に陥るのが不思議なくらいだが、こういうシーズンは不運にも見舞われやすいのか、なかなか浮上できずにここまで来た。
そんなチームへのカンフル剤となりそうなのが、夏の補強だ。6月にパク・ジョンスを獲得したのに続き、チアゴ・アウベスと金森健志が加入。ビクトル・イバルボが長崎、島屋八徳が徳島へと移籍したが、特徴ある攻撃陣の多彩さは変わらず、誰がどの位置で出てくるかによって求められる対応も変わってくる。片野坂知宏監督はまず、その準備の難しさに言及した。
前節のアウェイ鹿島戦では、豊田陽平と金崎夢生の2トップ。イサック・クエンカが左、松岡大起が右のSHに入った。引退を表明したフェルナンド・トーレスもキャリア終盤を飾りたいはずだが、豊田なのかトーレスなのかで守備方法が変わってくる。強度の高い彼らがターゲットとなってからのセカンドボール対応は、スピードと勢いのある選手たちが周囲を固めているだけに、簡単ではなく大事なタスクとなるだろう。原川力ら、さらに後ろからの攻撃参加にも警戒しなくてはならない。
このタイミングでひとつ勝てば勢いに乗れそうでもあり、昇格組の大分に対してはなおさら、ダブルを食らうわけにはいかないというのが鳥栖の思いだろう。指揮官は「ダービーの雰囲気にのまれずサッカーに集中することが大事。先制点を取れば落ち着いてプレーできる」と、勝利へのポイントを挙げた。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
鳥栖戦に向けて攻守の狙いの確認はできたし、刺激も入れることができた。鳥栖は出場メンバーによって戦い方も変わるが、何人か戦力の出入りがあり、彼らがスタートから出るのかベンチスタートなのか、またどのポジションに入れてくるのかによっても違う。また4-4-2で来るのかミラー気味にするのか。向こうはわれわれに対して2週間の準備ができるし、そのへんは始まってみなくてはわからない部分もある。
相手がどういうふうに来ても、状況を見て自分たちがどこを狙っていくか、11人が合わせてやれるかどうかというところ。前線に豊田選手、トーレス選手と大きい選手がいるし、サイドからのクロスもいいボールを入れてくる選手がいるので、クロス対応が大事になる。一度クリアしたとしても、相手はこぼれ球を狙うのも非常に早い。そのへんもケアできるようにしたい。
■FW 10 藤本憲明
現在のチームとしての課題はブロックを敷かれたときの崩しで、慌てずにやること。プレッシャーに来なかったら持てるぶん持ちすぎて各駅停車になりがちなところもあるので、もっとこちらから仕掛けるようなパス回しをしたい。来させたりこちらから連動して仕掛けたりが必要。それが成功した場面もあれば失敗してカウンターを受けた場面もあった。ミスして失点するとプランも崩れるのでセカンドゾーンでのミスは減らしたいが、それでもチャレンジのパスは入れていかなくてはならない。紙一重のところでクオリティーを上げていきたい。
鳥栖とはホームではいい試合が出来たが、それはもう過去のこととして忘れる。自分たちは18位からのスタートなので、油断できる相手は1チームもない。自分たちの、特に最後の部分のクオリティーを上げることを求めたい。チームとしては戦術や呼吸も合ってきている。ダービーだが硬くなることなく、シーズン中の一試合として自分たちの戦いをしたい。
■MF 50 田中達也
熊本時代に福岡や大分と九州ダービーを戦ったが、やはり盛り上がる。楽しみに来てくれるサポーターの方々のためにしっかり勝ちたい。前節の川崎F戦にもたくさんの方が来てくれて、あたたかいチームだと思った。スピードに乗ったドリブルで背後を突くプレーを出してチャンスを作っていきたい。
前節は途中で相手が守備のやり方を変えたが、こちらはそのまま変わらず行ってしまった。試合中にゲームをコントロールできるようにしていきたい。相手の守備ブロックが少し引いた位置なら無理に突っ込まず、保持しながら90分で勝ち切るように試合を運んでもよかった。後半は縦を切られたが、サイドチェンジしながら相手をスライドさせ、動かし続けて相手を疲弊させるなども出来たのかなと思う。点は取れなくても90分終わったときに勝っている状態にしておければそれでいい。
■MF 7 松本怜
鳥栖は前回対戦とは違うチームと思ってかかったほうがいいと思う。新加入選手もいるし、あのとき以上にアグレッシブになっている印象。鳥栖伝統の力強さが戻ってきている。いつもどおり自分たちのサッカーをするだけだが、相手には強い前線の選手がいるので、その周囲の選手も含めいつも以上に警戒しなくてはならない。
カタさんの下でずっと積み上げてきて、今季も地道ながら積み上げができていると思うが、前節の川崎F戦で前半に主導権を握れたときに、決めるべき場面で決め切れなかったりと、まだまだ詰めの甘い部分がある。途中から相手が引いたが、そういう読みもしていたので、試合中にもっと気を利かせて立ち位置を調整できればよかった。全体の課題だと思う。
(田中達也が逆サイドに入って)達也らしさというものがわかりやすいタイプなので、周囲がいかに理解してそれを生かすか。自分も昔は仕掛けていたが、いまはどうすればチーム全体が円滑に行くか、相手の隙を見ていろいろプレーを変えていて、あんなグイグイ行く系ではない。(岩田)智輝が上がってくれるので、それをうまく使いながらそのあとの裏抜けなどを狙うほうが相手の虚を突きやすいこともある。ただ、前節の達也を見ていて「ああいう仕掛けも見ていて気持ちいいな、俺も仕掛けたいな」と思った。達也があれだけ持って仕掛けてくれると、僕もゴールに近づくプレーが増えるかと期待している。