堅守の広島とのミラーゲーム。中断期間の収穫が問われる一戦
2週間の中断期間を経て、チームは30日、明治安田J1第5節H広島戦に臨む。今季初のナイトゲームで、堅守のチームとのミラーゲームが予想される。カギとなるサイドの攻防で上回り、堅守の広島から得点を奪えるか。
より深い戦術浸透を図ったが、緊張の走る一幕も
リーグ戦4試合を終えて3勝1敗は、昇格組としては上々の戦績だ。昨季までに一貫した戦術の上に積み上げ土台が確立しており、シーズンスタート時から安定した戦いを実現できたことが大きい。課題となっていた守備も、前節は好調の横浜FM相手に今季初のクリーンシートを達成。片野坂知宏監督以下コーチングスタッフによる綿密な準備と、その狙いを遂行できる選手たちの戦術理解度と技量が噛み合って成し遂げた勝利だった。
第4節終了後は代表ウィークのため2週間の中断期間。チームはこの時間を、ルヴァンカップとの連戦での疲労からの回復などコンディション調整を図るとともに、新たな戦力の組み合わせと3-5-2システムでのより深い戦術浸透に充てた。トレーニングマッチでは長期離脱していた刀根亮輔と三竿雄斗が実戦復帰。コンディション不良だった他のメンバーのうち何人かも調子が上向いてきた様子を見せた。
3-4-2-1での新しい戦力の組み合わせも試されたが、公開されている範囲で見るかぎり、公式戦で採用されるかどうかはまだわからないレベルに思われる。これまでのように実戦を通じて高めていくのか、まだ様子を見るのか。27日のトレーニングでは、普段は絶対に声を荒げない片野坂監督が厳しい口調でゲキを飛ばし、選手たちがあらためて気を引き締める一幕もあった。
強烈な両WBを擁する広島は攻撃も脅威
昨季から城福浩監督が率い、昨季終盤には失速したもののリーグ戦2位フィニッシュでACLも戦っている広島。今季は昨季とは異なる3-4-2-1システムでのポゼッションスタイルに切り替えている。
第4節の松本戦までを見ると、まだチームの完成度は高くない。松本の激しいハイプレスを上手くいなせず、バタバタすることも多かった。このシステムを知り尽くしている青山敏弘と、やはりボランチ本職の稲垣祥が負傷離脱し、川辺駿と松本泰志の若いダブルボランチが頑張っていたが、片野坂監督も「このシステムではボランチが大事」と話すとおり、戦術浸透には少し厳しい状況だった。ただ、この2週間の中断期間中にはこのシステムでのボールの動かし方を整理した様子で、中断明けの今節には前節より練度を高めているはずだ。ちなみに青山と稲垣はそろそろトレーニングマッチで復帰するのではないかという見込み。
昨季も失点の少なかった広島だが、今季も4試合で3失点と堅守は健在。特に3バックの右と中央を司る野上結貴と吉野恭平は隙を見せない。若き守護神・大迫敬介も守備の堅さに貢献している。こじ開けるのは容易ではないだろう。
未整理な印象だった広島の攻撃においても、両WBのポテンシャルを生かしたサイド攻撃は強力だった。右WBの元スウェーデン代表エミル・サロモンソンの勢いと独特の推進は脅威で、シュート技術の高さも際立っている。左WBはお馴染みの柏好文。ドリブルでのカットインでゴールに近づけると危険だ。カギを握る両ワイドの攻防で、広島のサイドをどう上回るかは大きな見どころになるだろう。
広島は松本泰志と大迫の代表戦招集からの影響が気になるところ。大分もティティパンがチャイナカップから帰国して間もなく、出場は微妙だ。今季初のナイトゲームでもあり、難しい試合になることは必至。大分は今節を皮切りに次節の札幌、その次の仙台とミラーゲームが続く。苦手としてきた堅守のチームを崩して勝利し、またひとつ今日の自分たちを乗り越えたい。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
広島はボランチを川辺くんや松本くんがやっているが、一瞬でも緩んでスペースと時間を与えてしまうと、決定的な仕事ができる選手もいる。両ワイドの柏くんとサロモンソンは非常にアグレッシブで上下動できるし戦えて、あそこから点を取っているので、しっかりとチームとして管理しなくてはならない。
手堅く隙のない広島を崩して点を取るのは難しいと思う。われわれも手堅いサッカーをしながら攻撃的にやりたいのだが、ようやく前節クリーンシートで終えることができた現状。でもボールを保持することで相手に攻撃権を与えなければ、それが手堅いサッカーにつながるとも思う。そういう意味でも狙いをもってしっかりと戦いたい。
■MF 7 松本怜
広島は逆サイドのWBが強烈で、そこを起点にしてこちらサイドの柏が準備していたりするので逆サイドも警戒しなくてはならない。柏とは同い年で大学時代によく対戦していたのでよく知っている。国士舘大でも上手くてキレキレだった。自分のゾーンを持っている。カットインしてくると怖いのでケアしておかなくてはならない。
毎試合のことだが、自分たちのやるべきことをブレずに貫き積み上げていく姿勢を続けていかないと、レベルアップはできない。J1はちょっとしたプレッシャーが早く、個の強さもあるので少しでも間合いを空けると打開されてしまったりする。間違いなくレベルが高い。
広島は手堅く、やりにくい相手。こちらの出方を見てやってきそうな感じもある。勝機があるとすれば、サイドがカギ。ミラーゲームになるが、隙を突けるのはサイドだと思うので、そこを起点にして前節のようなアシストができればと思う。
■DF 29 岩田智輝
ここまでJ1で戦ってみて、やれないことはないし、自分の良さもところどころで出せているのでまったく通用しないことはないと感じた。でもJ1のチームは一瞬の隙を突いてくるので、集中して隙を見せないことが大事になる。攻撃では最初の2試合ではオーバーラップもなかなかさせてもらえなかった。相手に守備で数的優位を作られていて崩せなかった。
広島は守備が堅いしミドルシュートを打ってくる。左サイドの柏さんもカットインが多い。どれだけ球際に寄せられるかというところだが、連係した守備でなるべく外に追いやりたい。
今後の課題は引かれたときにどれだけ自分が関われるかということと、ゴール前の質、クオリティーを上げること。ビッグチャンスになるようなクロスを入れ、アシストをもっと増やしたい。守備では細かく崩す相手に対してもっと対応できるようになりたい。