6年ぶりのJ1ホーム開幕は昇格組直接対決。残留争いはもうはじまっている
いよいよ2019J1がホームでも開幕する。第1節はアウェイでアジア王者・鹿島を下し、鮮烈なJ1復帰をアピールしたが、今節は一転、同じ昇格組・松本とのマッチアップだ。
1試合ごとの体感を経験値に変える
開幕の鹿島戦では、これまで下のカテゴリーで積み上げてきたものを表現しようとトライし、立ち上がりからそれを続けることで勝利という結果を手繰り寄せた。
終わってみれば第1節の走行距離は123.675kmで、リーグ最長。「よく走った」と言えば聞こえはいいが、このデータをどう捉えるかは難しいところだ。個の力量差を埋めようと守備でも数的優位を作るために走行距離が伸び、逆にそれに付き合わされた鹿島が走行距離2位になったとも言える。運動量でカバーしなくてもいいだけの地力を身につけたうえで、効率的に走れれば理想的だ。
自身3シーズンぶりにJ1の舞台に立った小塚和季は「強度の部分で鹿島さんはすごく高かった。そういう部分では自分も含めチームとしてもう少しだと感じた。まだ足りない。もっと行かないといけないと思う」と、その体感を口にした。福森直也は「攻撃は、J2にもJ1でプレーしていたFWがいたりしたのでそれほど差は感じなかったが、特に中盤の守備に圧を感じた」と証言する。この体感を経験値に変えながら、残り33試合で“J1仕様”のチームへと育っていかなくてはならない。
松本の1トップは誰が務めるか
前節とは一転、今節は同じ昇格組の松本との対戦だ。松本は前節、磐田と1-1のドロー。試合の入りから激しいプレスで相手をビビらせ、早々に岩上祐三の意表を突くグラウンダーFKで先制点を奪ったが、磐田が選手交代で追撃の勢いを増すと、それに押し切られ、リードを守りきれなかった。
互いに降格候補筆頭に挙げられてのスタートで、第2節での対戦は、残留争いの序章とも言える。シーズンが進むにつれ、徐々に地力の差が順位に反映されてくるだろう。その意味でもやはり、昇格組対決は6ポイントゲーム。自分たちが勝点を積むと同時に、相手に積ませてはならない。
警戒すべきはやはり前田大然だ。J2でもさんざん猛威を振るった迫力のスプリントは、攻守において相手の脅威となる。彼が水戸でプレーしていた2017年、猛プレスにミスを誘われ、それまでは相手の精度不足にも助けられつつ免れていた“勉強代”を初めて払うことになった苦い経験もある。昨季ホームでの対戦時には、主力である前田大然とセルジーニョが揃って欠場していたので、対峙するのはアウェイでの対戦以来となる。こちらの成長を感じられるよう、落ち着いてボールを動かしたい。
また、1トップには前節は永井龍が入っていた。これまでの対戦では高崎寛之に苦しめられてきたが、今節はどうなるか。その人選によっても、松本の攻守のテイストはかなり変わってくる。
システムは3-4-2-1同士のミラーゲームになる可能性が高いが、大分は前節も途中で3-5-2に変更したように、また形を変えずとも選手や戦い方を変えることもできるように、引き出しは決して少なくはない。選手たちの戦いをベンチワークでも後押しして、6年ぶりのJ1でのホーム開幕を勝利で彩りたい。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
前節はアウェイでいい形で勝つことができた。次はホーム開幕戦で、たくさんの方が大分のJ1での戦いに期待して見にきてくれると思うので、選手たちが最大値を出して勝点3を取れるように、いい準備をして臨みたい。選手も前節の喜びから気持ちを切り替えて、いい状態で取り組んでいるようだ。
松本は昨季2勝した相手だが、今季はお互いJ1に上がり、状況やメンバーも変わって、これまでの戦いとはまた違う展開になるのではないか。J1に舞台を移すことで、いままでの戦いとは違ったところがあるのかなと考えている。松本もハードワークできるし、堅守で昨季J2でも最少失点だったので、こじ開けるのは容易ではないと思うが、チャレンジしなくてはならない。
ミラーゲームになる可能性があるが、ミラーになればなるほど個の能力で上回られると厳しい展開になる。逆にこちらが上回れればいいゲームができると思う。個人でなくグループとしても相手を上回りたい。狙いを合わせて対松本戦術を機能させたい。
■MF 14 小塚和季
前節は勝ってよかった。次が大事だとますます思った。強度の部分では鹿島さんはすごく高かった。そういう部分では自分も含めチームとしてもう少しだと感じた。まだ足りない。もっと行かないといけないと思う。
今節も焦れずにやり続けることが大事。松本はロングボールが多いかと思うが、こちらもそれにつきあって蹴るのではなく、しっかりと自分たちのペースで試合を運びたい。松本の守備は堅い。前線にはボールを持てる選手も足の速い選手もいるので、変な奪われ方をすると一瞬でやられてしまうイメージがある。無理に仕掛けずチャンスをものにしていきたい。
■DF 6 福森直也
J3時代から片さん(片野坂知宏監督)のサッカーを貫いてきて、いよいよJ1で最初の対戦が鹿島という最高の相手だった。雰囲気も最高だったし、これまでやってきたことが通用した手応えもあった。ただ、次の相手は松本。昨季は2勝したが、向こうもメンバーが替わっているしやり方も変えてくると思う。向こうが負けじと来るところで、こちらも鹿島戦で見せたようなサッカーをもっと高めて臨みたい。
前田大然選手はスピードがあり脅威だが、それにビビって腰が引けると相手の思うツボ。前向きにボールを奪いにいきたい。前田選手とは彼が水戸にいたときにマッチアップして「速いなー」と感じたし、実際に点も取られた。加速や馬力があって腕の力もあるので、並ぶと腕で持っていかれるし、逆にさわれないところにいるとスピードで前に入られてしまう。前田選手が走り出す前に自分も走り出すなど、予測して対応したい。