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今節の見どころ

6年ぶりのJ1は、アジア王者との対戦で火蓋を切る。まずは自分たちの戦いを

 

いよいよ2019J1が開幕する。昨季J2の2位で自動昇格を勝ち取った大分は、6年ぶりのJ1に、最下位18位からのスタートで挑む。その初陣は、伝統の中で積み上げた20冠に彩られるアジア王者・鹿島とのアウェイ戦だ。

 

最後まで読めない18人のメンバー

 
チームは1月9日の始動後、9日間にまたがる鹿児島キャンプや5つのトレーニングマッチを通じ、13名の新戦力との融合を図ってきた。当初はフィットまでに時間がかかるかもしれないと思われていた新戦力も、特にキャンプ終了後、プレシーズン最後の2週間でぐっとフィット度合いを増しており、18人の開幕戦メンバーを予想するのがさらに困難になった。戦術の土台が出来ている状態でフィットしやすいスタイルの新戦力を組み込む形になったので、スムーズに浸透が進んだものと思われる。
 
週末に開幕を控えての今週のトレーニングでも、毎日11対11のゲームを行ったが、メンバーは日々シャッフルの繰り返し。監督の中では「ある程度固まっている」とは言うが、選手たちは誰もが「誰が出るか読めない」と、此の期に及んでいまだポジション争いのアピール中だ。昨季も開幕ギリギリまで特にボランチの人選を悩んだが、今季はさらに選手層が厚くなったぶん、選択肢の多彩さが心強くもあり、悩ましくもある。
 
複数人のコンディション不良メンバーが出ているが、いずれも重症ではなく、様子を見て起用するか否かを決める模様。どこか一人が替われば組み合わせの問題でその周辺の戦力も変わってくるため、かなり多くの選手たちにメンバー入りの可能性がある状態だ。
 
非公開で行われた最後のトレーニングマッチでは、課題と手応えの両方を得た。特にJ1チームとの対戦を通じ、選手たちは個の能力の高さと攻撃の迫力を体感したという。ただ、こちらも昨季までの積み上げを表現でき、かなり惜しい決定機も作れていた。フィニッシュの精度不足でゴールを奪えない場面が多く、これが勝点を得るための最重要課題となる。キャプテン鈴木義宜は「メンタルが大事」と言い、「練習でやってきたことを出せればチャンスは作れる」と自負も口にした。
 
藤本憲明はこれまでに歩んできたJFL、J3、J2全カテゴリーで開幕ゴールを挙げている。個人昇格を繰り返し、最後はチームでの昇格で国内最高ステージへと上ってきたストライカーが、J1でもその実力を見せつけてくれることに期待したい。
 

鹿島はACLプレーオフでの快勝から中3日

 
鹿島は19日にACLプレーオフ・ニューカッスル戦に4-1で快勝し、中3日でのJ1開幕戦となる。昌子源、植田直通、西大伍らが移籍し、小笠原満男が引退して、チームを牽引してきたメンバーが今季はごっそりといなくなった。代わって19歳にして鹿島の背番号10を背負う安部裕葵が台頭してきたり、J2町田の好調を支えた平戸大貴が期限付き移籍から復帰したりと、世代交代も進みつつ、変わらぬ戦力の充実ぶりを誇っている。鈴木優磨の負傷離脱なども報じられているが、伊藤翔も加入しており、層は厚く、質の低下もない。
 
今季、鹿島から移籍加入した三竿雄斗も「メンバーがかわってもタイトルを獲り続けてきたのが鹿島。戦力が大きくダウンすることはないと思う。今季もきっとタイトル争いをする。大分にとっては難しい試合になると思うが、練習でやっていることをそのまま試合に出せれば、いい戦いはできるはず。練習と試合は別物なので、いかに平常心でブレずにやれるかが問われる」と話す。
 
フォーメーションは王道の4-4-2。メリハリの効いた守備で要所ではやらせず、隙を突いて得点を奪う、勝ち方を知り尽くした大人のチームだ。藤本は「向こうの守備がどう来るか。構えられたとしても焦らず、じっくりとボールを動かして自分たちの戦い方をしたい」と、相手の術中にハマらないよう呼びかける。
 
迫力満点のカシマスタジアムに開幕の華やかさも加わって、雰囲気は最高潮だろう。このチームで丸谷拓也と並んでJ1経験を最も多く積んでいる高山薫は「これまでの経験上、アウェイの迫力ある雰囲気は逆にモチベーションになると思うので、ポジティブにとらえている。『やってやろう』と思うのは空回りしそうなので平常心で」と説いた。
 
大分のフォーメーションはベースの3-4-2-1が濃厚だが、昨季も併用した3-5-2の可能性も否めない。いずれにしてもしっかりとボールを握り、特にレオ・シルバをどう食いつかせるか、その後どうコンビネーションで崩していくか。そして最後に確実に仕留めることが勝点を得るカギになる。
 

練習後の監督・選手コメント

 
■片野坂知宏監督
鹿島は切り替えが早いので対応が後手に回らないようにしたい。走らなくてはならないときにしっかり走り、戦わなくてはならないときにしっかり戦う、それを90分間切らさずにできるかがポイントになると思う。
 
紅白戦まで終えてある程度のメンバー構成は考えているが、このあとの状況や明日のトレーニングもあるし、今日のゲームを見てまたコーチ陣とも話をしたい。昨季より層の厚みもあると思うが、それがJ1でどれだけ通用するかはやってみなくてはわからない。ただ、決して戦えない戦力ではない。しっかりグループで戦うことができれば、鹿島相手でも勝機はあるし、チャレンジしてやれない相手はないと思う。
 
強い鹿島が相手なので、アウェイでどれだけ自分たちの狙いが表現できるか。堅守の鹿島から得点を挙げ、今季J1で自分たちが挑みたいところの、ある程度の手応えを感じられるゲームになればと思う。
 
■MF 7 松本怜
J1だからといってこれまでとは変えて守備に重きを置くということはない。J1チームとの練習試合でもむしろ自分たちの攻撃的なところをチャレンジする姿勢を見せることができた。失うものもないし不安はない。楽しみで、個人的にはやれる自信がある。みんながいいものを出せればと思う。自分たちのサッカーをどれだけ出せるかが重要なポイントになるので、臆せずチャレンジしたい。
 
新加入選手は理解度が高く、いいコミュニケーションも取れているので、戦術浸透度合は高いと思う。今季は新戦力のフィットが早く、すでに誰が出ても同じようにやれるようになっている。
 
■DF 5 鈴木義宜
新戦力の融合やチームとしての戦い方の浸透も徐々に進んでいる。この戦術には難しい部分もあると思うが、大分の戦術に合う新戦力を獲得していると思うので問題ない。トレーニングマッチでJ1クラブと対戦したが、やはり一つのミスを逃さずゴール前の質も高く決め切ってくる。少しでも寄せたりGKとコミュニケーションを取ってコースを切るなりを細かくやっていかなくてはならない。
 
僕自身にとってもJ1初挑戦。鹿島という強豪相手に自分がどれだけやれるか、このチームがどれだけ戦えるかが楽しみ。僕らは挑戦者なので、逆に相手のほうがプレッシャーを感じるかもしれない。開幕戦ではあるが34分の1試合と考えて臨みたい。アウェイの雰囲気も含めてサッカーで、スタジアムの雰囲気にのまれず自分たちのサッカーをすることが大事。少ないチャンスをどれだけ決めきれるか、ピンチをどれだけ防げるかがカギになる。