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今節の見どころ

今季の収穫のすべてを結実させたい最終節。悔いなき42分の1試合を

 

2018年J2もとうとう最終節。昇格争いも残留争いもいまだに結末が見えないという稀に見るレベルの混戦も、ここでひとまず決着する。自動昇格をつかみ取れるか、プレーオフへと回るか。ライバルチームの結果にも左右される今節、自分たちにできることと言えば、自分たちの戦いを全うするだけだ。

 

自動昇格はほぼ自力でつかみ取れる

 
勝点75の2位で迎える最終節。首位の松本との勝点差は1で、3位の町田とは勝点で並び、4位・横浜FCは勝点2差で追ってくる。この4チームが優勝の可能性を残しながらふたつの自動昇格枠を争うことになった最終節。大分がアウェイ山形戦に臨むこの日、松本はホームで11位・徳島と対戦し、町田は5位・東京Vとのダービー、横浜FCはアウェイで甲府と戦う。
 
町田との得失点差で7のアドバンテージがあるため、今節勝利すれば自動昇格はほぼ手中。引き分け以下なら町田の結果次第、敗れれば横浜FCに抜かれて4位となる可能性もあり、なかなかにプレッシャーのかかる状況だ。
 
それでも片野坂知宏監督は、開幕前から言い続けてきたとおり、「開幕戦も最終節も42分の1試合として同じ意識で臨む」ことを選手たちに求める。もちろん自分自身もそのスタンスに変わりはなく、目の前の対戦相手である山形に対し、準備して勝ちにいくのみだという。
 
とはいえ、J1自動昇格枠へと滑り込むために、展開によっては他会場の経過次第で采配が変わってくる可能性もあるだろう。できれば他会場に関係なく戦える状況になるのが理想だが、駆け引きが必要になるケースのことも想定しておかなくてはならない。どのパターンになったとき、どのようにどのレベルまで情報を入れるかも、コーチ陣と相談して緻密にプランニングするようだ。
 

積み上げてきたものを攻守両面で発揮できれば

 
12位の山形は昇格も残留も無関係な位置にいるが、天皇杯で勝ち残っており、1ヶ月後に仙台との準決勝が控えている。そのため選手たちのモチベーションが低下することはなく、むしろ天皇杯メンバー入りを狙ってアピールしたいはずだ。
 
山形との前回対戦は第2節。当時は山形のシステムは4-4-2で、こちらもそれに合わせる形でスタートしたが、まだ戦術の練度が低く、まもなく3-4-2-1に変えてペースを取り戻した。結果は2-2のドロー。昨季以来、3度の木山モンテディオとの対戦だが、いまだ勝ちきれていない。
 
山形は第6節以降は3-4-2-1システムを採用。今節はDFリーダーの栗山直樹が累積警告により出場停止で、最終ラインの顔ぶれが変わる。これまでの出場数が多いのは熊本友太だが、昨季大分でプレーした坂井達弥も控えており、さらには単純に1枚を入れ替えるだけにはとどまらない可能性も考えると、どうにも出方が読みづらい。
 
さらに攻撃陣も多士済々で、阪野豊史を頂点に小林成豪、汰木康也、アルヴァロ・ロドリゲス、南秀仁らの誰がどの位置で出てくるかも特定できない。ボランチは中村駿と本田拓也のコンビが濃厚で、左右WBは右が三鬼海、左が山田拓巳や内田健太の可能性が高そうだ。特に小林と汰木の2シャドーは組織の中で高いポテンシャルを発揮する厄介な存在。ダイナミックなサイドチェンジやアーリークロスも多様する山形に対しては、集中して緩みのないスライドとチャレンジアンドカバーを繰り返すことが求められるだろう。
 
ただ、ここまでの41試合を戦った経験を、このチームは確実に地力へとつなげてきた。戦術オプションも増え、柔軟性も身についている。戦況を見ての判断力と組織としての一体感を発揮すれば、それが現在のこのチームの最大値となるだろう。最終節で2位に立っているという状況に自信を持ち、最後まで悔いなく戦いたい。
 

練習後の監督・選手コメント

 
■片野坂知宏監督
 
最終戦前に今季目標としていた勝点70を超えたことはよかったし、そのことによってさらにシーズン最後に素晴らしい成績を自分たちの力でつかみ取れる状況になった。一戦一戦を積み上げてきた成果かと思う。私自身、昨季初めてJ2を戦った中で、細かいところで勝敗や順位が決まるということを体感したが、今季J2は特に簡単な試合が一つもなく、難しいリーグだと感じている。
 
コンディションを万全にして、山形戦に向けての戦術の狙いを合わせる必要がある。われわれは開幕戦も最終戦も同じ42分の1の試合としていい準備をし、目の前の試合で最大値を出して戦ってきた。また同じように全員で準備し、ピッチに立つ11人、18人が持っているものを出し切ってくれれば、いいゲームができると思う。
 
山形さんもホーム最終戦でアグレッシブに来ると思うが、こちらも負けられない。90分の戦いの中で戦術を合わせて戦うことが大事。支援・応援してくださる方々みなさんもJ1昇格を望んでいると思うので、最終戦で勝点を積み上げて達成できれば素晴らしいことだと思う。勝点3が取れるのならば僕の声が嗄れようがどうしようが構わない。選手たちには思い切ってやってほしい。
 
■MF 38 馬場賢治
 
ここまで40試合戦って積み上げてきて、昇格を狙える位置にいるのは選手として喜ばしいこと。前節を戦ってみて、自分たちのサッカーに集中することがいかに大事かということをあらためて考えた。この一週間もしっかりと目の前の試合に集中できるように準備したい。
 
キャプテンとして特別なことや、この状況だからといって僕自身できることがあるわけでもなく、できることと言えば今シーズンずっとやってきたようにみんなの様子を見ながら声をかけることくらい。この状況になったからといって特別なことをするのではなく、いままでどおりのことをするのが大事だと思う。
 
■MF 7 松本怜
 
簡単な戦いにはならないとわかっている。最後はあきらめない気持ちといったメンタル面が大事になってくる。前節のような試合を勝ちきれたのは大きいし、ひさしぶりに出場した(川西)翔太が結果を出せたのも本当に大事なこと。いい方向に向かうのではないかと思う。
 
金沢戦で研究されて難しい展開となり、すっきり攻撃できない時間帯があったように、山形戦でも間違いなくうまくいかない時間帯はあると思う。それでもやり方は変えずに、自分たちのサッカーをやっていくことが大事。山田選手とはマッチアップしたことがあり、身体能力が高く頑張る選手なので嫌な相手。山形はどの選手がどこで出てくるかが読みづらいが、そこはこちらも今季身につけた柔軟性で対応したい。