TORITENトリテン

今節の見どころ

これまでを信じて戦え。自らの成長を確かめるホーム最終戦

 

明治安田J2第41節、チームはホーム最終戦に臨む。大分銀行ドームに迎えるのは、前回対戦で苦戦を強いられた金沢。昇格の懸かる今節も目の前の一戦に集中して戦うチームが確かめたいのは、今季積み上げてきたことによる自らの成長だ。

 

立ちはだかるダークホース

 
気候もよくなり、トレーニングにはうってつけ。週の立ち上げの日、ポゼッション練習では片野坂知宏監督の「難しいことをしようとしなくていいから」というサイドコーチングが何度となく響いた。J1昇格の懸かる大一番に向け、選手たちの気合いや緊張の度合いを緻密にコントロールしていく仕事も重要だ。
 
前節、横浜FCに敗れたことで順位は2位となり、3位の町田との勝点差はなくなった。ただ、得失点差が8あるため、残り2戦を勝利すれば自動昇格はほぼ確実な状態となる。J1参入プレーオフ圏内は確定しているので自動昇格を逃してもチャンスは残るが、少しでもいい条件で昇格レースを駆け抜けるためにも、今節はなんとしても勝利が欲しい状況だ。
 
そんなチームの前に立ちはだかる金沢は、柳下正明監督の下、90分間にわたりハードワークを貫くアグレッシブなチームだ。その姿勢を大前提に、毎節、指揮官の施す相手の長所を消す戦術を組織的に遂行している。順位こそ14位に甘んじているものの、第36節に徳島を3-0で下したのをはじめ、前々節は福岡、前節は大宮と引き分けて、上位陣から地味に勝点を削っている。大宮戦に至っては勝点1にとどまらせたことで、その自動昇格の可能性を潰している。今節まで3戦連続、昇格争い中のチームと対峙するダークホースぶりだ。
 

チームの成長を示す一戦

 
そんな金沢との前回対戦は4月22日に行われた第10節。守備時にSHが最終ラインに落ちて5バックを形成しミラーゲーム状態とする“可変システム返し”で、オールコートプレスによりビルドアップを阻まれ苦労した。微妙な判定によるラッキーな要素もありつつアディショナルタイムの丸谷拓也弾で辛勝したが、非常に厄介な印象を植えつけられている。
 
ただ、あれから約7ヶ月、チームは30試合を戦う中で、一試合ごとの経験をフィードバックすることで戦術の幅を広げ、個々の技術を磨き、組織での連係を深めてきた。チームでの共通理解や一体感も高まっている。ビルドアップの際のボールの動かし方や無理せず逃げるときの意思疎通なども浸透し、ハイプレスやリトリートといった相手のさまざまな出方にも臨機応変に対応できる力が育ってきた。
 
その力は果たして、金沢を上回れるほどに成長しているだろうか。もちろん相手チームも成熟しているが、シーズン大詰めはその練度の競い合いとなる。特にホーム最終戦となれば、1年間の集大成を、チームを支えてくださる周囲の人たちへの感謝として示せる絶好のチャンスだ。
 
そのためにも、1年間コツコツとブレずに積み上げてきたものを最大限に発揮するのみ。「いまこの順位にいるのはこれまでの積み重ね」という丸谷の言葉どおり、自分たちを信じてプレーすれば、恐れるものはない。
 

練習後の監督・選手コメント

 
■片野坂知宏監督
 
選手たちは対金沢の狙いを意識してトレーニングに取り組んでくれた。金沢がどう出てくるか蓋を開けてみなくてはわからないが、どういうふうになったとしても対応できるようにしたい。(前回対戦時は相手の守備の前にビルドアップで苦労したが?)今節はそこからの成長が問われる試合になるのではないかと思う。
 
金沢の選手は非常にアグレッシブで90分間ハードワークして戦ってくる。福岡も大宮もそれに苦労してなかなか勝てなかった。われわれに対しても思い切ってくると思うので、こちらも負けない姿勢を出して、アグレッシブさで上回れる戦いをしなくてはならない。攻撃はいろんな状況がある中で、いままで積み上げてきたことをしっかり判断してやることが求められる。
 
■MF 38 馬場賢治
 
昇格の懸かった残り2試合になったが、ここから大きな成長を望めるわけではないので、この状況を覚悟をもって臨める選手、楽しめる選手、それは各々で、積み上げてきたもの、チームとしてやるべきことを出せるかが大事。僕たちはもともと強いチームではないので、この2試合に挑むという気持ちが大事だと思う。
 
ここまで40試合を戦ってきた中で、簡単にはいかないとあらためてサッカーの難しさを知ったが、やるべきことに対して最大限の力を出せば、どこにも負けない強さはあるという実感も僕の中で、過信ではなく自信としてある。
 
金沢は厄介な相手。いままでのイメージではマンツーマンで人に強く来て自由にやらせてくれないチーム。前回対戦もそれでうまくリズムが作れなかった。その相手のリズムに持っていかれるとうちは自分たちのリズムが出せない。でも自分たちも成長してきたし、そこをかいくぐって攻撃をもっていけるイメージは僕自身もあるので、どうにかかいくぐって攻めたい。
 
■MF 33 丸谷拓也
 
いまこの順位にいるのはいままでの積み重ねの結果。いままでやってきたことが報われているのだと思う。ずっと応援してきてくれたファン、サポーターの方々に感謝したいし、その気持ちを忘れずに一戦一戦戦いたい。広島では優勝も経験させてもらったが、そのときはずっと試合に出ていたわけではなかった。いまこの状況で出場させてもらっていることに感謝するとともに、当時とは違うプレッシャーも味わえている。これはなかなか経験できることではない。その思いを噛み締めながら戦いたい。
 
金沢戦ははたから見れば大一番の特別な試合かもしれないが、42分の1試合としていままでと変わらず、目の前の試合に集中していま自分たちのできることのすべてをかけて戦いたい。片野坂監督のもと、みんなで同じ方向を向いて頑張っている。