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今節の見どころ

シーズン終盤に迎える首位攻防戦も、目の前の相手に集中するのみ

 

明治安田J2第39節H松本戦は、いまなお大混戦のJ1昇格争いのさなかの首位攻防戦となる。この一戦での勝利は大きな積み上げとなることに間違いないが、チームはこれまでと同様、目の前の一戦のみに集中して臨む。

 

第15節以来の首位攻防戦

 
前節、アウェイで千葉に勝利したことはチームにとって大きな自信となったはずだ。共通理解の下で対千葉の狙いを遂行し、過去対戦では相性最悪だった“天敵”を相手に4得点を挙げてシーズンダブル白星を達成した。これにより前節、岐阜とスコアレスドローに終わった首位・松本との勝点差は1。勝利すればシンプルに順位が入れ替わる状態で、今節の直接対決を迎える。
 
前回の首位攻防戦は第15節H山口戦。こちらが首位で、結果は2-2だったが、当時はまだシーズン序盤、順位のことは気にも留めていなかった時期だ。大混戦の昇格争いが続くシーズン大詰めの今節は、あのときとはシチュエーションがあまりに異なる。精神的プレッシャーでいつもどおりのプレーができなければ、前々節の町田戦のように不甲斐ない内容になってしまう恐れもある。
 
松本には昇格や残留を争い、プレーオフ出場経験も持つメンバーが多く在籍している。大勝負の舞台に慣れているのは向こうのほうかもしれない。キャプテンの馬場賢治は言う。
 
「プレッシャーを感じて上に行けないのか、この状況を楽しんでやれるのかというところで僕らの力が試される。そこを乗り越えればこのチームは間違いなく自動昇格できると思っている。自分たちがここまで積み上げてきたものを心から信じて、自信をもって臨めばいい。何が起きてもいつもどおりやれば大丈夫」
 

“矛盾対決”と言えど松本の攻撃は迫力満点

 
そんな大一番に向けての今週は、いつもより1日早い段階から対相手戦術を落とし込んだ。ミラーゲームが予想される相手はひさしぶりということもあり、これまでの積み上げの中での戦術確認にプラスして松本の攻略法を共有した模様だ。
 
現在、大分はリーグ最多の71得点。一方の松本はリーグ最少の33失点で、単純に見れば“矛盾対決”の構図となる。特に8戦負けなし中の松本は、そのうち6試合が無失点。全域でのハードワークにより成し得る堅守が、この数字に表れている。全ポジションの選手が攻撃に関わって好機を生み出している大分と、その点でも対照的だ。
 
この激しいミラーゲームで予想される見どころは、大分はいかに松本の守備を攻略するか、松本はいかに大分の攻撃を潰し自分たちのチャンスへと切り替えるかが主眼となる。大分としてはいつも以上にポジショニングとタイミングが戦術遂行のカギを握りそうだ。
 
ただし、得点を勝利に結びつけるためには失点しないことも必要。松本の攻撃陣はバラエティに富んだタレント揃いで、いずれが出場しても迫力がある。1トップ2シャドーの組み合わせが誰になるのかによって攻撃のニュアンスも変わってくるが、ここは今季さまざまな試合で経験を積んできた守備陣の仕事に期待したい。また、松本の最大のストロングポイントといえばロングスローを含むセットプレー。できるだけそのチャンスを与えたくないが、集中して守りきることが求められる。
 

練習後の監督・選手コメント

 
■片野坂知宏監督
 
松本は一人一人がハードワークして粘り強く戦う堅いチームだが、なんとかこじ開けられるように準備したい。その守備をどう剥がしてどう点を取るか、どう崩すかの攻撃力が問われる。そこで得点できれば上に行く権利を得られるし、崩せなければまだまだ力が足りないということ。こういうゲームを乗り越えることが大事。
 
いまは全員で狙いを合わせて得点が取れているが、そんなに簡単な相手ではないと思うので、こだわらせてやりたい。先制点を取られると相手も勢いづく。先制点を取ったほうが有利に運べる展開になるのではないかと思うが、拮抗した中でも90分をマネジメントしてやりたい。うちもできるだけ失点を少なくしないと、最少スコアでの勝負になる可能性もある。自分たちが主導権を握り先に点が取れるといい面も働いてくるのではないかと思う。
 
■MF 33 丸谷拓也
 
今週は早い段階からだいぶ細かく戦術を落とし込んだ。特に意識することはないが気合が入っている。今節は相手のズレを見極めてそこを突く精度が求められる。
 
最多得点と最少失点の対決というのはこれまで積み上げてきた結果としての話なので、そこまで試合に影響するとは思わない。大事なのは目の前の試合で無失点で抑えて得点すること。ボランチはバランスが大事なので攻守両面でバランスを取り、攻撃では前線への経由や得点に絡む部分、守備では協力しあいながら抑えることを意識している。
 
相手の前線には高い選手も、スピードのある選手も、足元のうまい選手もいるが、いままでと変わらずチームとしてしっかり守るべきところを守るだけ。ここまで重ねた試合経験を糧に、いい守備ができるようになってきたと思う。ただ、前節の2失点目はもったいなかったので、ああいうところはもう一度引き締めなくてはならない。
 
■FW 10 藤本憲明
 
今節はサッカー選手として最高のシチュエーション。2位のチームが勝って1位に返り咲くのは完璧なストーリー。そのためにはまずは失点しないこと。ここ2、3試合は失点しているのでそこをいかにゼロにしていくか。そして後ろの選手が頑張っているときに前線がどれだけ攻守両面で貢献できるか。前線の選手としては得点して後ろを楽にさせてもやりたい。我慢の時間帯が続いて嫌な流れになる前に仕留めたい。
 
得点が取れているのは連動できているからと、少ないチャンスを決めきれるから。松本はリーグ最少失点のチームだということが余計にいい。前回対戦はラッキーな部分もあったが4得点していて嫌なイメージはない。ミラーゲームが予想されるので、相手をいかに剥がし、数的優位を作って攻め、最後に仕留めきれるかがカギになる。