暫定首位で迎える町田戦。互いの戦術をぶつけ合う上位対決で勝点を奪え
上位対決が続く10月。14日に行われる明治安田J2第37節A町田戦は、大混戦ゆえの“天王山山脈”の最初の一戦となる。戦術浸透の証として内容が上向き結果がついてきたいま、5連勝して暫定首位で、野津田に乗り込む。
前回対戦の記憶を好ゲームで上書きしたい
昇格争いのライバルたちが揃って足踏みした前節、チームは京都戦に逆転勝利を収めて連勝記録を5に伸ばすと、順位は暫定首位へと浮上した。シーズン終盤の右肩上がりには確かな手応えを感じるが、残り6試合はいずれも上位との直接対決や難敵との対峙ばかり。上から7チームが勝点6の間にひしめき合う昇格レースの行方は、例年以上に最後までもつれ込みそうだ。
そんな状況で迎える今節の町田戦。第11節、ホームでの町田との前回対戦は、相手が1人、2人と数的不利に陥る中、前半だけで3点のリードを奪いながら1点差に詰め寄られ、最終的に4-3で辛勝したという展開だった。あの時期もチームは首位に立っていたが、片野坂知宏監督は試合後に「こんなの首位のチームじゃありません!」と歯痒さに唇を震わせたのだった。
あれから半年弱、チームは戦術を研究されて勝てなくなり順位を落とした時期を乗り越えて、今節、ふたたび暫定ながら首位で町田との戦いに臨む。シーズンは終盤に差し掛かり、同じ首位でもその位置の持つ重みも違えば、チームもあの頃より成熟度を増している。今節はまず、それを表現し、自ら確認したい一戦だ。
ブレない町田に対し成長を示す好機
町田は台風の影響で2試合未消化にして勝点62で暫定3位。来季のJ1ライセンスは交付されなかったが、サイバーエージェントの経営権獲得が発表され、急速に今後への展望がひらけてきた。今季の昇格はなくとも、いい戦績で来季へとつなげたい思いがあるだろう。ここ4戦は白星から遠ざかっているだけに、勝利に飢えて今節を迎えるはずだ。
町田の戦術は一貫してブレない。縦横にコンパクトな布陣でアグレッシブな守備から入る。極端にボールサイドに寄ることから、対戦相手は逆サイドに展開することで優位性を狙う。普通なら同サイドで奪いきれなかった場合は一気に不利になりそうな戦術だが、町田は逆サイドに展開されても素早いスライドで対応できてしまう。それを成し遂げるハードワークこそが町田の最大のストロングポイントだ。
個々の球際で戦う姿勢は徹底されており、前線にも中島裕希、鈴木孝司ら強力なFWが顔を並べる。前回対戦では2人の数的不利に陥ると、4-3-1のブロックでゴール前を固めながら前線に長いボールを送り、FWの力技で点差を詰めてきた。そういう戦い方もできる相手なので、戦術的な狙いだけでは勝利を掴みとるのは難しい。
スペースへとボールを運びながらゴールに迫る大分の戦術は、対町田では相性としていいはずだが、昨季以来、狙いは毎回ハマりつつも、勝てたのは昨年の天皇杯2回戦のみ。戦術の幅を広げた今回こそ、勝利したいところだ。
町田の主将を務める井上裕大は第29節の松本戦で全治約6週間の右足関節捻挫により離脱中。復帰は残念ながらまだ難しいと見られ、小手川宏基との同期対決はまたも持ち越しに。戸高弘貴も第24節の金沢戦で負傷して以来姿が見えず、大分アカデミーOB組との対戦は今回はなさそうだ。
だが、井上に代わりボランチで町田の戦術を支えているのは、背番号10を背負う土岐田洸平。大分在籍時代のサイドを駆け上がるイメージが強いが、苦しい状況で迎えた試合終盤に感動的な攻め上がりを見せていた心身の強さが、いまは町田の心臓として輝きを放っている。
ほかに右SBのレギュラーである大谷尚輝が出場停止。その穴を埋めるのが誰になるかも注目される。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
町田も上位だし、2試合未消化で、われわれに勝てばその2試合によっては上回ることができる。本当に決戦になると思う。
町田は自分たちのやり方を徹底してやってくるチーム。90分のマネジメントの中で勝点3を取るための戦い方を考えながらやらなくてはならない。お互いのストロングとウィークがあると思うので、そこでどちらがウィークを突けるか、ストロングに対抗できるか。そういう中で上回る試合をしたい。
■MF 7 松本怜
いまは昇格を目指している上でこれ以上ない順位にいるが、今季の成果を問うのはこれからの6試合。いままで積み上げを意識して自分たちのサッカーを成熟させる努力を続けてきたので、そのスタンスを変えずにいれば結果は自ずとついてくる。片さんの目指すサッカーをどれだけ体現できるかと練習から意識している。個人的にはまだまだ課題があり反省ばかりだが、少しでもチームに貢献したい。
片さん(片野坂監督)が大分の戦術を貫くのと同様に相馬監督は町田の戦術を貫いてくると思う。僕たちのサッカーもこれまでよりワンランク上がっていると思うので、それを信じて戦うのみ。いつも以上にサイドで受けたときの判断が重要になってくる。攻撃する際は、相手DFに簡単に読まれないよう、幅広い選択肢を事前に持っておくことを最も意識している。こちらサイドをケアされれば逆サイドで(星)雄次がフリーになれるという強みもある。
■FW 10 藤本憲明
いま個人的には得点が取れていて調子がいい。出場した試合では得点という結果を出し、チームとして勝点3が取れることを目指してやっている。途中出場は結果が求められるので、短く限られた時間の中でもボールが来たら仕留めることができるよう準備している。もちろんチームが勝っていればいちばんだが、自分が途中出場するときは同点やビハインドの状況でも自分が得点してヒーローになってやるというくらいの思いでいる。
町田は最後まであきらめない気持ちで戦うチーム。打点の高いヘディングも持っている。セットプレーが武器でプレッシャーも早い。そのプレスを剥がして自分たちのサッカーをしたい。アウェイでの上位対決で少し難しい試合になるかもしれないが、注目度も高い中でいい試合になるだろう。その中でいい結果を残したい。ホームでは大量得点の試合になったが、今節は硬い試合になると思うので、まずは失点しないよう粘り強く戦いたい。
■DF 5 鈴木義宜
いまはたまたま首位にいるが、そもそも勝点で特にずば抜けて上回っているわけでもないので個人的にプレッシャーはない。残り試合は少ないが硬くなることなく、42試合のうちの1試合という意識をいい面で出したい。全員の意識の持ち方で変わってくる。好調な中で攻撃のほうに目が行きがちだが、それよりも無失点で終えたい気持ちのほうが大きい。残り6試合は前線で起点となる強いFWがいるチームとの対戦が続くので、自分のところでどれだけ潰せるかがカギになる。
町田との前回対戦は3点リードして2失点するところに自分たちの甘さが出た。ただ逆に、相手が数的不利だったとはいえ3点、4点と取れる相手なので、あとはどれだけこちらがやられないかがカギ。相手はガツガツ来ると思うので、前の相手と負けずに戦い、それぞれが負けないことが大事になる。どんな状況でも気を緩めず、あたりまえのことをできれば勝てると思う。