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今節の見どころ

岐阜のスペクタクルな攻撃に対し、今季は昨季より成長した大分を示したい

 

明治安田J2第14節、ホームに迎えるのは岐阜。スピーディーにショートパスをつないで攻める難敵が、今季は守備の迫力も増して乗り込んでくる。どう対応し、どう自分たちのスタイルを表現するか。局面での賢さが求められる一戦だ。

 

オプションを増やしつつチーム力は向上中

 
ハードだったGW3連戦を終え、今節に向けては1週間の準備期間を過ごしたチーム。前節の新潟戦は大幅にメンバーを入れ替えて戦った中で、戦術浸透度の高さと選手層の厚さを示すことが出来た。
 
リーグ全体を見渡すと、シーズン序盤はなかなか調子が上がらなかったが地力のあるチームは、徐々に頭角を現わしつつある。逆に調子を落としているのが、序盤に好調だった水戸や熊本、東京V。監督交代に踏み切った甲府は連勝中で、山口は今節第1日目に東京Vと戦い、2点ビハインドで迎えた試合終盤から猛追して4-3で勝利している。
 
次第に暑さを増してくる時期、ここからしばらくは、走れるチーム、戦えるチーム、賢く試合を運べるチームが上向いてくるだろう。片野坂知宏監督も昨季からJ2で戦う中で、戦術以前の部分の重要性をあらためて感じたと話している。分厚い選手層を生かし、対相手戦術ごとに戦力を選択する大分が、それを戦績へと結びつけることが出来るか。
 
チームは日々のトレーニングで新たなオプションを増やしつつ、状況によってそれらを使い分ける力も身につけている。昨季の岐阜戦は4-4-2システムのゾーンディフェンスで相手の流動的なパスワークによる攻撃に対応したが、今節、指揮官がどういう戦い方を選択するかは気になるところ。片野坂監督も岐阜の大木武監督も、ベースとなる戦術はブレないままに、チーム状況によってそれをアレンジしたり対症療法的にブラッシュアップしたりしている。両軍の長所がぶつかり合う好ゲームが期待される。
 

昨季より守備に迫力を増している岐阜

 
昨季から大木監督が率いる岐阜は、その哲学を落とし込んだショートパスをつないでスピーディーに攻めるスタイルを確立。かつて大木監督が甲府や京都を率いたときのようなクローズな形ではなく、現在は大きく幅を取って前線に人数をかけながら相手を押し込んでいく形へと変化している。
 
今季もシステムは昨季と変わらず4-3-3だが、昨季、戦術の体現に貢献した庄司悦大とシシーニョが今季はそれぞれ仙台と徳島に移籍し、中盤の顔ぶれが変わった。その影響もあり、基本戦術は同じだが全体のニュアンスが昨季とはやや異なる印象だ。片野坂監督も「岐阜は攻撃がクローズアップされがちだが、今季は守備も迫力を持ってやってくる」と指摘する。
 
球際へと激しく寄せるアグレッシブな守備からサイドへ展開し、大きく張った右の田中パウロ淳一と左の古橋亨梧が仕掛けてくる。そのドリブルで押し下げられ、GKと最終ラインの間に差し込んでくる速いクロスに合わせられると、失点の危険性はかなり高まる。昨季も難波宏明に飛び込まれた。ずるずると下がらないよう、中盤からしっかりプレスをかけ、全体を押し上げていかなくてはならない。1トップがライアン・デ・フリースになるか風間宏矢になるかでも細かく変わってくるが、ビルドアップに参加していろいろな攻撃を繰り出してくるので、ボールウォッチャーにならず、ゾーンとマンツーマンの意識を使い分けながら賢く対応したい。
 
だが、片野坂監督が最も重視するのは、それ以前の中盤。特に小野悠斗の名を挙げながら、「まずは自由に良いボールを出させないように」と、選手たちに警戒を促した。
 
ポゼッション率の高い相手に対し、昨季は敢えて持たせることで対応したが、今季は今後へのステップアップも見据えて、相手のプレッシャーを剥がしながらこちらもボールを持つことにチャレンジしたい意向を匂わせた指揮官。それがどういう戦術としてピッチに描き出されるのかを楽しみに待ちたい。
 

練習後の監督・選手コメント

 
■片野坂知宏監督
 
岐阜のストロングポイントはボールを持つことなので、自分たちが相手のプレッシャーに負けずつないで展開できるかが試される。岐阜のような攻撃から守備への切り替えが早いチームでも剥がせるようにならなくては、今後戦っていくのは難しい。そこが課題になるかもしれないが、チャレンジして今後にもつなげていきたい。
 
岐阜もゲームの中で変化したり人ややり方を変えたり状況判断できるチームなので、つねに隙なく、駆け引きで上回られないように、攻守においてしっかりとチームとして戦うことが大事。状況を見ながら簡単にやらせないようにしたい。勢いづかせたら手強い相手なので、調子に乗せないようにしなくてはならない。とにかく我慢強く戦うこと。守備では相手がつないできたときにバラバラになって奪いに行ったりせず、攻撃では単独ではなくサポートしたり動かしたり自分たちが持つ時間もしっかり作っていく。そうしないと、相手の思い通りの展開になってしまう。チームとして合わせてやれるように準備したい。
 
■MF 35 宮阪政樹
 
松本では岐阜と近かったこともあり、練習試合もよくやっていた。ショートパスをつないでくる中で、ひとつの展開からサイドでアタックしてくるのが定番の攻撃法。相手がやりたいことはわかっているので、ストロングを消していく。ただ、対策も大事だが、自分たちのやりたいことをやることがいちばん。それを前提とした上で、相手対策を施していきたい。
 
前節FKを止められたので次は決めたい。自分の仕事は決まっているので、しっかりとボールを触って動かしてテンポを出していきたい。前節は90数本だったので、次は100本くらい。そのくらいボールに絡んでいくことでチームとしての攻撃のリズムを作っていけたらと思う。
 
これから、チームとしても大分県としてももっと盛り上げていかなくてはならない。新潟戦では2万人近い観客がスタジアムに集まっていて、良い雰囲気だった。大分県民の方々にもっと足を運んでいただいて、楽しいゲームが出来ればと思う。
 
■DF 6 福森直也
 
岐阜はサイドに特長のある良い選手がいる。まずはそこに1対1の対応で後手に回らないように両サイドでしっかり勝つこと。相手はパスに特化したチームだが、ボールだけを見てしまって簡単に背後を取られたりプレッシャーに行けなかったりすると相手の思うツボ。取りどころが定まらないままに自陣のペナルティー付近で相手にサッカーをさせてしまわないように、後ろの選手が中心となって周囲に声をかけ、しっかりボールに行き、サイド攻撃を潰せるようにしたい。昨季は難波選手にクロスから決められた。駆け引きの上手い選手なので、中の対応も大事。そこは日頃からトレーニングしている。
 
攻撃はいつもどおり。相手はハイプレッシャーだが、だからこそ動かせないとダメ。これまで自分たちがやってきたことを試される試合になる。自信を持って臨みたい。