対照的なスタイルのせめぎ合いは好ゲーム必至。落ち着いて相手のプレッシャーをかわせ
ひとつひとつの試合に集中して7戦無敗で勝ち点を積み重ねているチームは、GWの3連戦に突入する。初戦は28日、明治安田J2第11節H町田戦。われらが生え抜きがキャプテンとして率いる町田を迎え撃つ。
縦横にコンパクトな町田の逆を突く
いつも使用しているDコートが芝の養生期間に入ったため、今週は練習場所を移動し、25日はサブグラウンド、26日はBコートでのトレーニングとなった。今節までの準備期間は1日短く、前節・金沢戦の翌日に行われたトレーニングマッチに出場したメンバーは、26日時点では「やや疲労を残している」(片野坂知宏監督)。
今節の相手・町田は開幕から8戦負けなしとスタートダッシュで上位へと躍り出た。ここ2戦は連敗して3戦勝ちなしだが、決して内容が悪いわけではない。チームとして標榜するのは、相馬直樹監督が確立した、縦横にコンパクトな布陣でのコレクティブな守備から入るサッカー。幅と奥行きを使ってのびやかに攻める片野坂監督のサッカーとは対照的だ。昨季はリーグ2戦と天皇杯で計3回対戦しているが、毎回、お互いのスタイルをぶつけ合い、どちらが上回るかのせめぎ合いとなる。
昨季J2第15節、野津田での対戦では、サイドチェンジや裏へのフィードを駆使する大分が、ボールサイドに寄る町田の逆を突いて主導権を握った。決定機を逃しセットプレーから失点して2-2のドローとなったが、内容では完全に圧倒していた。そのちょうど1ヶ月後の天皇杯2回戦にはメンバーを入れ替え、やはり同じ狙いで臨んで4-2で3回戦へと勝ち上がった。
だが、ホームでのJ2第27節は無念にも完敗。それまでの2戦を踏まえ修正を図った町田は、スライドやプレッシャーの強度を高め、激しい守備により大分のスタイル表現を阻みつつ、3点を先行。思うようにボールが動かせない大分は、システムを変えて割り切った戦法へとシフトしたが、1点を返すのがやっとだった。
今季は互いに新戦力がスタイルを強化
今節もこれまでと同様、互いに特徴的なスタイル全開で激突することになるだろう。大分は町田のプレスをかいくぐってボールを動かし幅を使えるかどうか。町田はハイプレスで大分の攻撃を阻み、自分たちの攻撃へとつなげられるか。
今季は両軍とも新戦力を迎え選手を入れ替えて、それぞれのスタイルを強化している。町田はボランチに入るロメロ・フランクが、積極的に攻撃参加。大分は、そのロメロ・フランクと山形でチームメイトだった宮阪政樹が中盤の底からボールを散らす。宮阪は町田のFW中島裕希とも山形時代にともにプレーしており、「僕の知るかぎりの彼らの長所を潰し、ウィークなところを突いていきたい」と意気込んでいる。
そして何よりも特筆すべき存在は、ボランチでロメロ・フランクの相方を務める井上裕大だ。大分生まれの大分育ち、小手川宏基・清武弘嗣との同級生トリオで子供の頃から注目を集めたわれらが生え抜きは、今季からキャプテンに就任し、チームで唯一、ここまでフル出場を続けている。大分にいた頃から苦しい時間帯になると輝きを増していた中盤のダイナモが、ハードワークを信条とするチームを率いるのは、うってつけのように思える。
6年前、長崎に移籍して以来、怪我で離脱していたり主力にいまいち届かなかったりと、なかなか大銀ドームのピッチに立つ機会がなかったが、昨季J2第27節でようやくそれを果たすと、43分には得意のミドルシュートを豪快に古巣のネットへと突き刺した。「大分戦というだけで気持ちが高ぶる」という井上を、今節も警戒しなくてはならない。
大分としては、慌てずシンプルにボールを動かして町田のハイプレスをかわしていくことがカギとなる。局面ではいつも以上に判断とプレーのスピードが求められるが、全体としては決して攻め急ぐことなく、じっくりとボールを保持することが主導権掌握につながる。今週は狭いグリッドでのポゼッション練習で、逆サイドへの展開も含めてそれを確認した。
セットプレーの守備でも気をつけなくてはならない。町田の現在のトップスコアラーはDF深津康太。ここまでの16得点の半数がセットプレーから生まれている。逆に大分はそろそろセットプレーから得点が欲しいところだ。
町田は昨季の対戦でも逆サイドをケアするため、途中からポジショニングを修正している。大分も相手のプレスを剥がすために、こまめに立ち位置を取り続けることが必要になる。好ゲーム必至の正攻法でのぶつかり合いに期待が高まる。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
ボールサイドに寄ってくる町田に対してはしっかりと幅を取り、逆サイドも見ることが大事になる。手数をかけると激しいプレッシャーを受け、ヘッドダウンして近いところで食われてカウンターを受けることになってしまうので、ワンタッチ、ツータッチでテンポよく回し、大きい展開を織り交ぜることが必要になる。
町田は井上が布陣のバランスを取り、キャプテンとして周りをよく見て判断し使っている。アカデミー時代に強化部スタッフとして見ていたが、当時からハードワークできるし真面目で堅実にチームプレーに徹していた。ミスも少ない。ゲームの流れも読めるしキャプテンにふさわしい選手だと思う。
■DF 6 福森直也
相手は激しくハイプレスをかけてくるが、こちらはそのプレスよりも早くボールを動かし、相手の変化を見つけながら攻めたい。全員が意識を持って動けば相手を剥がせると思う。それが出来なければ片さん(片野坂監督)の求めるサッカーも体現できない。ホームなので勇気を持ってチャレンジしていく。
今季はセットプレーからの得点がまだなく、キッカーのバズくん(宮阪)と話しながら練習しているのだが、中の選手として責任を感じている。次第に相手より先にボールに触ることも増えているし、惜しい場面にはなっている。身長の高い選手が3人いるので、気持ちの面でも相手に負けず、なるべく早く得点したい。相手はセットプレーが得点源で、いろいろ工夫してくると思うが、声をかけあって臨機応変に全員で対応したい。
■MF 35 宮阪政樹
町田は密集すると思うので、サイドチェンジが上手く出来ればサイドがフリーでチャンスを作れる。山形時代にヘッドコーチだった相馬監督のサッカーはわかっている。また、山形でチームメイトだったロメロ・フランクはボールを持ててドリブルも出来、2列目から前のスペースへと飛び込んでくるが、逆にフランクが上がってきたときにボールを奪えれば、スペースが空いているはず。
フランクだけでなく中島裕希さんや酒井隆介さんなど元チームメートが多いので、僕が知る限りの彼らの長所を潰し、ウィークなところを突いていきたい。