攻守に強度を増している堅守速攻の金沢。柔軟な対応で流れを引き寄せたい
22日、チームは石川県西部緑地公園陸上競技場で行われる明治安田J2第10節A金沢戦に臨む。相手の堅守をどうこじ開けるか。威力あるカウンターへのリスクマネジメントも怠れない。
厚い選手層で細やかなプランが可能に
前節・横浜FC戦翌日の熊本とのトレーニングマッチは、相手のチーム事情による影響もあったとはいえ、7-2の大勝。三平和司2得点、伊佐耕平4得点、ファン・ソンス1得点と、ポジション争いの激しさを物語る結果となった。特に2015年の金沢戦で自身のプロ初ゴールを挙げ、昨季A金沢戦でも目の覚めるような個人技で同点弾を奪った伊佐がこのタイミングで好調なのは、なんとも心強い。
競争の激しさがチームとしてのレベルアップにつながっていると複数の選手が口を揃える。吉村光示ヘッドコーチが主導するポジション別のミーティングも、競争に拍車をかけつつ戦術浸透と良好な雰囲気の維持に一役買っているのだろう。
片野坂知宏監督も、選手層の厚さを心強く感じているようだ。今節も金沢の出方を読みながらメンバーを選考することになる。いくつかのオプションを使い分けてもチーム力はほぼ落ちることがないため、より細やかで柔軟なゲームプランを練ることが出来る。週の立ち上げのゲームやオールアウトも使ってさらにオプションを増やしつつあるチームは、日を重ねるにつれてじわじわとそのポテンシャルを向上中だ。
役者・清原翔平が戻ってきた
柳下正明監督体制2年目を迎えた今季の金沢は、昨季よりもぐっと深く“ヤンツーイズム”を浸透させ、攻守にオーガナイズされて強度を増したように見える。
試合ごとにフィット感を強め、ここまで3得点の新外国籍選手マラニョンも警戒しなくてはならないが、そのマラニョンとチーム得点王タイで並ぶ、鹿島から期限付き移籍中の年代別代表FW・垣田裕暉も好調だ。昨季32試合出場3得点の20歳は、今季すでに5試合で先発し3得点を挙げている。
そして彼らの力を増幅させているのが、今季金沢に戻ってきた清原翔平。JFLからJ3、さらにJ2へとチームの昇格を支えたアタッカーで、その実力を認められて2016年にC大阪に引き抜かれたが目覚ましい結果を出すことは出来ず、出場機会を求めて移籍した徳島でも輝けなかった。清原をはじめとする前年までの主力数名を失ったチームは低迷。2016年はJ2・J3入れ替え戦でかろうじて残留を果たし、昨季は得失点差-18で17位に終わる。卓抜した攻撃センスで前線を掻き回す清原抜きに、金沢の好調は語れない。
ここまでの全試合を4-4-2システムでスタート。ボランチの梅鉢貴秀が負傷離脱したが、前節の水戸戦は大橋尚志と藤村慶太のダブルボランチで遜色なく戦っていた。前線から激しく奪いにかかるアグレッシブな守備が特徴的だが、引いて守るのも得意な堅守のチームだ。狙いがハマりやすい相手には滅法強く、横浜FCに4-0、千葉に3-1と大勝している。
昨季対戦の経験は今節に影響するか
金沢が大分に対してハイプレスをかけるのかブロックを構えるのかは、蓋を開けてみるまでわからない。昨季第34節のアウェイ戦では5-3-2のブロックで完全にマッチアップさせ、こちらのストロングポイントであるWBとシャドーを封じてきた。ボールを持たされる形となり、背後を狙っても、作田裕次の率いる最終ラインで潰される。
そこでこちらが4-4-2にシステム変更すると、金沢も4-4-2へ。だが、その修正によって流れは大分に傾き、1-0の状態で逃げ切ろうと再び5バックに変更した金沢の一瞬の隙を突いて伊佐が個人技で同点ゴールを奪った。
今節も、そんな采配合戦が繰り広げられるに違いない。相手の出方を想定して組まれるメンバーがどうなるか。WBが封じられた際にシャドーがどう動くか。百戦錬磨の柳下監督を、分厚い選手層で挑む片野坂監督が上回ることが出来るか。昨季の経験を両者がどう生かすかも楽しみだ。選手たちも的確な判断による柔軟な対応で、このハードな一戦を乗り切らなくてはならない。
練習後の監督・選手コメント
■片野坂知宏監督
いまは怪我人がなく競争が激しい中で、30人全員が戦術を理解し、一体感を持って戦えている。目の前の試合に対してチームとしてやるべきことは整理させながら、選手に判断させてトライさせているが、選手もよくチャレンジしてくれている。いまは結果の上でいい成績、いい成果を上げているが、シーズンはまだ4分の1を終えたばかり。これからいろんなことがある中で、誰が出てもクオリティーやチーム力が落ちないように、しっかりと全員で準備することが求められる。
金沢は非常にアグレッシブでチームとしてまとまりがある。試合展開やチーム状況にもよると思うが、4-4-2で来るか5枚で合わせてくるか。また構えてくるか前から来るか、どう出てくるかわからない。相手の出方によって、どうボールを動かせば相手がどう変化してどういうところが空いてくるかということを準備させたい。相手もビハインドになれば前から奪いに来ると思うので、そうなればボールを動かしてひっくり返しチャンスを狙う。
ヤンツーさんは戦うチームを作ってくる。チームに戦術が浸透していてプレッシャーも早いが、それにビビらずに自分たちがしっかりと狙いを合わせて戦えるかどうかが大事。
■FW 9 後藤優介
いまは守備が安定している。その守備から攻撃に移るとき、全体で攻撃が出来ていることで得点も増えていると思う。相手にボールを持たれる時間帯が多いが、それでもあきらめずにプレーし続け、そこからカウンターを仕掛けるところを見てもらいたい。自分たちの時間帯を増やし、その中で判断などをもっと高めていきたい。
前節は相手が3ボランチでその脇が空いていなかったので、WBを起点にすることが多かった。自分がもっとボールを受けられればとも思ったが、周囲の選手がボールを動かしながら良いところも突けていた。シャドーの選手が相手の嫌がることをもっと出来れば、さらに崩せる場面も増えたと思う。もっと引いて受けても良かったかもしれない。研究されてもボールを受けられるようにしたい。前線3枚のコンビネーションが大事。金沢も非常にタイトなチームなので、そこをどれだけ自分たちが崩せるかチャレンジしたい。
■FW 27 三平和司
チームの雰囲気はすごくいい。いまは怪我人もいなくてポジション争いが激しいのもすごくいいことだと思う。ポジション争いの中で、プレースタイルがほぼ同じという選手が一人もいない。ただ、上手く行っているときはいいが、上手く行かなくなったときに選手同士で話し合って修正する能力をつけていかなくてはならない。コミュニケーションは取れているが、苦しいときにもっとみんな喋らなくてはならないし、他人任せでなく一人一人が引っ張っていくという意識を持たなくてはダメ。
前節は相手が引いていたので難しく、ボールを下げる場面が増えたが、もっと動かし方を工夫したかった。相手を押し込んでからならクロスでもチャンスがあると思う。これから攻撃のバリエーションをさらに増やしていきたい。