自信を持って“大分スタイル”を出せばいい。コツコツと積み上げてきた今季の集大成へ
中断期間なく、激しい混戦状態の続いたハードな今季リーグ戦も、ついに最終節。J2残留、そして勝ち点56という目標を段階的にクリアし、堅実に勝ち点を積み重ねてきたチームは、いま、完成度を高めて最後の戦いに挑む。
完成度を高めたチームが最終戦に臨む
あとわずかというところでプレーオフ圏に届かなかったが、前節・徳島戦はハイクオリティーな内容だった。意図的なボール回しにより相手を動かし、そこで生まれたスペースを使って次々に3人目が絡みながら前へと運ぶ。戦術が浸透し、片野坂知宏監督の目指すスタイルがピッチで描き出された。
そのスタイル構築に多大に貢献してきた竹内彬と上福元直人に代え、控え組だったファン・ソンスと高木駿を先発させながら、異なるメンバーでも同様に戦えたことが、チームマネジメントの成功を垣間見せもした。
足りなかったのは、両ゴール前の精度だ。特にここ数試合、決定機を逃し続ける間に一瞬のほころびを突かれて勝ち点を取りこぼす展開が続いた。「ああいう試合を勝ちきれないところを修正したい」(三平和司)、「そこが決まっていれば勝てていた試合もあるので悔しい。落ち着いて枠を狙っていきたい」(後藤優介)、「ひとつのチャンスをしっかり決め切ることが大事」(伊佐耕平)と、FW陣はリベンジを期す。
残留争い背水の陣。手負いの熊本は怖い
相手の状況が状況だけに、展開によっては非常に難しい試合になることが予想される。前節、金沢に1-4で敗れて降格圏の21位に転落した熊本は、20位・山口とは勝ち点で並び得失点で1差。19位・讃岐とは勝ち点1差で、今節の結果次第で順位が入れ替わる。
J3のフィニッシュ次第では、J2ライセンスを持たないチームが2位以内に食い込む可能性があるので、21位、あるいは22位が確定している群馬も含め、J3降格を免れる可能性もある。だが、J3の結果を待たずに自力で残留を確定させておく最後のチャンスである今節は、残留争い中のどのチームも、背水の陣で力を振り絞ってくるはずだ。
第5節の前回対戦時は、新たな戦術にトライしはじめたばかりのこちらの戦術浸透度が低く、ビルドアップのミスや隙を突かれてピンチを招くシーンが散見されたが、相手のミスに助けられて1-0で勝利。熊本は6月14日、清川浩行監督と財前恵一ヘッドコーチの退任とともに、代表取締役社長を退任した池谷友良氏の3度目の監督就任を発表した。
その後はシステムを3バックに変更し、3-4-2-1と3-5-2を併用して使い分けている。守備時には5バックのブロックを敷くため重心が重くなりがちで、そこから前に出て行くのに時間がかかる印象もあるが、ボランチの三鬼海をはじめ技術の高い選手が中盤で存在感を発揮し、前線には安柄俊やグスタボといったタレントが並ぶほか、サイドにも勢いのあるアタッカーが揃う。途中出場して一仕事を遂げる巻誠一郎も怖い存在だ。
単なる九州ダービーにとどまらない
残留の懸かった熊本が、モチベーションを高めるのかプレッシャーに苛まれるのか。逆に大分はノープレッシャーでのびのびと戦えるのか、昇格の可能性を閉ざされて緩んでしまうのか。そういった精神面も勝敗に影響してきそうで、単なる九州ダービーというにとどまらない、重い意味を持つ一戦だ。
「前半に先制点を取りたい。ファーストチャンス、セカンドチャンスを仕留めて良い流れで運べれば圧倒できるはず」と伊佐耕平。熊本は前節の金沢戦でも、序盤からペースを握りながら決定機をものに出来ず、先制点を奪われた途端にバランスを崩して大量失点した。「そういう意味でも先制して相手にプレッシャーをかけたい」と、片野坂監督も言う。
9月2日の第31節・群馬戦以来、勝てていないホームで、最後に勝利という結果を求めることも、「それはわれわれの責任であり使命である」と指揮官は説いた。このチームで戦う最後の公式戦。17日には、激動の3シーズンをともに戦ってきた山口貴弘が現役引退を発表した。一丸となってこれまで積み上げてきたものの真価を発揮し、来季につながる手応えをつかみたい。