勝敗を分けるのは攻守の要所。積み上げてきたものを発揮すれば勝機は生み出せる
プレーオフ進出の可能性も残されつつ、これまでどおり目の前の一戦に集中して勝ち点を積み上げるスタンスにブレはない。明治安田J2第40節H山形戦は、完成度を高めてきたチームの実力をフルに発揮して、前回対戦の雪辱を果たしたい一戦だ。
最後まで集中して戦う力が問われる
第7節の前回対戦といえば、まずはひたすら寒かった記憶が蘇る。高速道路沿いにはまだかき分けられた雪が積まれていた4月9日の17時キックオフ。冷たい強風がボールコントロールにも影響を与える中、風下だった前半に2点を先行されたチームは、風上に回った後半、ブロックでゴール前を固める相手を後藤優介のミドルシュートでこじ開けると、62分にも山岸智と三平和司のコンビネーションで同点に追いつく。システムを4-4-2に変更してミスマッチを生み、互いに決定機を作ったが、85分に阪野豊史が胸トラップからの反転シュートを決めた山形に突き放され、敗れた。
あの試合もそうだったし、前節の千葉戦もそうだ。苦しい時間帯をしのぎ、システム変更や交代策などで修正を施して狙いどおりの展開に持ち込んでも、結局、決定機をものに出来ず守るべきところを守りきれなければ結果はついてこない。
大分は前節の千葉戦で、2点のビハインドから猛追して1点を返すにとどまった。山形は前節、愛媛に対し2点先行しながらそれを守りきれずアディショナルタイムに追いつかれてドロー。
この時期、どのチームも組織としての完成度を高めつつある中で、中断期間なく戦ってきた1年間の疲労も出やすい時期だ。最後まで集中して戦う力が問われる。
派手さはなくとも実力派揃いの山形の攻撃陣
山形は開幕当初から、木山隆之監督や、愛媛時代に木山監督の下で戦った選手たちも慣れ親しんだ3-4-2-1システムを貫いていたが、6月、7月の天皇杯で3-5-2、4-4-2をそれぞれ試すと、その後はリーグ戦でもボックス型4-4-2、4-2-3-1、ダイヤモンド型4-4-2と、選手も入れ替えながら多彩なシステムを試してきた。直近の3試合は4-3-3で戦っているが、やはりメンバーは試合ごとに使い分けている印象だ。
長期離脱の負傷者が多いなどチーム事情もあるとは思うが、緻密なスカウティングやチームマネジメントに実績のある木山監督のことなので、それぞれに狙いをもって臨んでいると思われる。今節の大分に対しても、特に守備のハメ方については、よく研究した上で対策してくるに違いない。どういうシステム、どういうメンバーでスタートするかは読みづらいが、片野坂知宏監督は慎重な面持ちながら「こちらも積み上げてきたものがある。相手がどういう形で来ても対応できるよう準備しておきたい」と語った。
何よりも抑えなくてはならないのは、強度と決定力を誇り前回対戦でもやられた阪野を中心とする、個性豊かな攻撃陣だ。逆サイドからクロスに飛び込んでくる瀬沼優司、ドリブルに長けアイデアあふれる攻撃を繰り出す汰木康也、ボランチから前線に絡んでくる佐藤優平ら、派手ではないが実力のあるタレントが揃っている。得点場面では左右から揺さぶりをかけることも多い。
アンカーを務めるのが本田拓也なのか茂木力也なのか、中盤の組み合わせでも布陣の性格が変わってきそうだ。
最後に結果を引き寄せるのは結束力と集中力
そんな山形に対し、片野坂監督は「いずれにしても中を固めてくる」と読む。また、アグレッシブなハイプレスでビルドアップを阻まれることも予想している。「相手がプレッシャーに来れば来るほど、判断と質を上げなくては、食われてカウンターで失点する可能性も出てくる」と警戒するが、逃げずにトライするつもりだと話した。
そのビルドアップに関して松本怜は「続けることで失敗と成功の両方の体験を重ねながら、自信がついてきた。視野が広がり、無理せずGKに戻すところは戻してという割り切りも、続けてきたからこそ感触をつかんでこれた」と語る。自身もマッチアップする相手や試合状況に応じて、より精緻な選択が出来るようになってきた。「地道に積み上げていけばこんなにサッカーは成熟していくのだなと感じている」という言葉に、辛抱強く取り組んできたことへの自負と手応えが透けて見える。
いま、今季の集大成へ向けて、堅実に過ごしてきた1年間を最良の結果に結びつけることが出来るかどうかは、チームの結束力と個々の集中力に懸かっている。