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今節の見どころ

策士が率いる相手は前節大敗。タフなミラーゲームを大分らしく戦え

 

明治安田J2第38節、チームはアウェイで松本戦に臨む。5位の相手との勝ち点差は4。このあとに続く強豪たちとの対戦に希望をつなげるためにも、この直接対決はものにしておきたい。

 

上を目指す気持ちが良いパフォーマンスにつながる

 
長かった芝の養生が終わり、今節に向けてのトレーニングは美しい冬芝に張り替えられたいつものグラウンドに戻って行われた。あいにくの雨続きで急激に気温が下がり、いつもはどんなに寒くてもハーフパンツ姿の山岸智がロングジャージを着用して冷えに対策するなど、選手たちはそれぞれに、いつも以上にコンディション調整に配慮していた。
 
前節の福岡戦を、内容では相手を上回りながらドローに終えたことで、8位・横浜FCとは勝ち点が並んだが、6位・徳島、7位・東京Vとは勝ち点差が3に開いた。このあと、千葉、山形、徳島、熊本と、強豪や鬼門との対戦が続くことを考えると、やはり今節はアウェイでも貪欲に勝ち点を積み上げたいところだ。
 
ただ、「なりふり構わず勝ちに行く」というチームではない。今後の成長のためにも「きちんと自分たちのサッカーを貫く」というスタンスを、ミーティングでも全員が共有した。片野坂知宏監督は言う。「プレーオフを狙う気持ちはしっかりと持ちながらも、自分のプレーに集中して自分たちの戦いが出来るかどうか。それが良いパフォーマンスにつながり、結果的に良い成績となってプレーオフ圏内の順位へとつながる」。勝ち急ぐあまりチームがバラバラになり、失点につながるような悪循環は避けたいというのが、指揮官の思いだ。
 

前節の大敗を受け、策士・反町監督はどう修正してくるか

 
松本にとってはまだ自動昇格の目も残っており、下位との対戦で取りこぼしは許されない。こういった大一番になると勝利への執着心をあらわにする勝負師・反町康治監督は、ある意味、片野坂監督とは対照的かもしれない。
 
しかも前節、千葉にアウェイで5失点と大敗しており、今節はそれをどう修正してくるかが予想しづらい状況でもある。前節は累積警告で出場停止だったパウリーニョが戻ってくるのはほぼ確実と思われるが、これまでも頻繁にメンバーを入れ替えた左WBやシャドーの人選がどうなるか。また、1トップはここまで35試合で高崎寛之が務めてきたが、「ウチが外国籍選手を苦手としているのを見てダヴィを先発させてくるかもしれない」と、片野坂監督は策士の奇襲を警戒する。
 
基本的には強力な1トップに長いボールを当て、読み良く小回りのきくシャドーがセカンドボールを拾って攻める形が特長的。リスタートでも多彩なデザインプレーを駆使して貪欲にゴールを狙ってくる。守備では球際に強く、アグレッシブなプレスでボールを奪い、切り替え早くシンプルなカウンターを繰り出す。
 

一言で“真っ向勝負”と言っても選択肢は多彩

 
そんな松本に対して、片野坂監督は、これまで積み上げてきたもので真っ向勝負を挑むつもりのようだ。ミラーゲームでマッチアップする相手を上回り、目指してきたスタイルを貫いて結果を求めに行く。
 
相手のボランチ・パウリーニョと同じく、やはり今節、出場停止明けの鈴木惇は「カウンターを怖がって長いボールに頼りすぎたり受けたがらなかったりすると、余計に良くない」と読むと同時に、球際強い相手に対して「球際だけで戦うスタイルになると相手ペースに持ち込まれてしまう。連動して動き、相手の変化を見ながら怖がらずにボールを動かしていきたい。自分たちの目指すサッカーをつねに意識しながら戦う」と、あらためてスタンスを確認した。
 
前節を受け、鈴木惇、川西翔太、小手川宏基、ファン・ソンス、姫野宥弥とボランチの選択肢が増えたことで、メンバー選考においても相手との駆け引きに奥行きが生まれた。さらに最近はWBでも、山岸と松本怜に加えて岸田翔平が調子を上げ、いずれも左右ともに入れ替えがきく。シキーニョは左のみだが、シャドーでもプレーできる。前線要員の競争も激しくなってきた。
 
「この終盤に来てこれだけ選択肢が増えるのはありがたい」と指揮官。自分たちのスタイルを貫く“真っ向勝負”の中でも、いずれの戦力をどう組み合わせるかによって、フォーメーションを変えることも出来るし、相手の特長を抑えたり相手の裏をかいたりと、多彩な手を繰り出しも出来る。
 
今節、指揮官が選ぶのはどのメンバーでどういう戦い方か。シーズン終盤、それぞれに置かれたスタンスとチームの哲学とのせめぎ合いが、いよいよ面白くなってきた。